昨日見ていただいた絵には
前のバージョンがあります。
それをまず見ていただきましょう。
とても同じ材料から描かれたとは思えません。
何が起こったのでしょう。
実は私とイラストレーターの藤井さんには
宮沢賢治のファンという共通点があります。
書き直す前の絵で
私たちが共に不満であったのは
何度も話題にしています抽象度なのです。
表紙では「愛」をいかに描くのかでしたが
ここでテーマは「死」に変わっています。
しかし直面している困難は同じです。
前のバージョンの絵(今日の絵)では
病院とおぼしき建物 悲しげな太陽
雲に乗った女性 それらを見つめるコート姿の男性
いずれも死の暗示と受け取れなくはありません。
それが新しいバージョン(昨日の絵)では見事に払拭され
死が空飛ぶ列車にまで抽象化されています。
この絵を見たとたん
私は「あっ『銀河鉄道の夜』だ」と思いました。
鉄道を持ち出したのは私でしたが
具体性のないただの思いつきです。
それを星空に飛ばし
乗務員にも乗客にも本を読ませ
ヒョウにも鳥にさえ読書を楽しませ
多くのいのちと結びつきながら
空を渡ることに死があると
絵柄に纏め上げたのは
藤井さんのアイディアと絵の力でした。
もちろんこの絵までたどり着けたのは
私たちふたりが
賢治ファンであったことと無縁ではありません
次も賢治の影響について考えましょう。