一昨日見ていただいた絵が
絵作りの転回点になった
と私は言いました。
それよりだいぶ以前に描かれた絵と比べれば
私の言いたいことが
きっとわかっていただけるでしょう。
これは表紙の第3案です。
色使いや象徴的な動物
本を読むさまざまな生き物たち。
藤井さんが創造した絵本の要素が
ほぼ出揃っています。
見た目に美しく調和があり
落ち着いた感じがします。
この絵を前にして
私と藤井さんの間ではまず
アジア風テイストが問題になりました。
何々風ということになれば
それは当然意味をもってしまうからです。
その意味の是非を考えているうちに
敷物や衣服などに使われる
伝統的な模様あるいはパターン(図柄)は
確かに安定感があり親しみを感じさせるけれど
それはすべての動的なものを
模様に封じ込めることによって
生まれたことに私たちは気づいたのです。
絵本作りにあたって
私たちは動いているものが止まった瞬間か
今にも動き出しそうな気配のある絵。
一言で表せば「動的平衡」の感じられるものを
無意識に求めていました。
それを実現したのが
前回見ていただいた絵です。
もう一度見ていただき
表紙の絵と見比べていただきましょう。
静的なものから動的平衡へ
ミツバチは旋回し
月は読書する少年に語りかけ
鹿が今にも木のうしろから飛びでてきそうです。
これを私は転回点と呼びました。