2019/12/07 15:00

 では「はてしない物語」(ミヒャエル・エンデ、1979)も検証してみよう。

 この物語には「はてしない物語」という本を読んでいる少年・バスチアン、本の中で冒険している少年・アトレイユという二人の主人公が存在する。本の中の世界の女王“幼ごころの君”によるとこの世界は滅亡の危機に瀕しているのだという。世界を救う方法を探すため奔走するアトレイユ。手に汗握りその物語を読み続けるバスチアン。だが、真の救世主はこの本を読んでいる“あなた”なのだ!…さてどうするバスチアン!?

 実は先に挙げた「うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー」はこの「はてしない物語」の翻案とみることができる。“幼ごころの君”によって本の中に引きずり込まれたバスチアンはその後好き勝手な冒険を繰り広げるのだが(*1)、その冒険活劇を鑑賞している“幼ごころの君”こそ「うる星2」でいう“ビューティフル・ドリーマー”なのだ。作中、“幼ごころの君”は現実世界でバスチアンが以前よく創作おとぎ話をしてやった近所の年下の少女であることが暗示されている(近頃はご無沙汰だったらしい)。その少女が現実世界で今どんな境遇にあるかはわからないが、バスチアンの“おとぎ話”を欲して彼を本の中に引き入れたのではないかと推測できる。「うる星」では普段つれない態度のあたるを眠れるラムがその夢の中に(愉快な仲間たちとともに)引き込んだのであり、「アンリミテッド」「オルタ」では「タケルちゃんに逢いたい!」という“眠り姫”純夏の悲痛な願いがタケルを「エクストラ」世界から引っ張ってきたのだ(*2)。「B・D」の上流にある「はてしない物語」も当然、多くの現代作品に影響を与えているといえよう。

 前に挙げた作品の他にも「神秘の世界エルハザード」、(かなり変則的だが)「少女革命ウテナ」や「カードキャプターさくら」もまた「はてしない物語」の流れを受け継ぐ作品である。最近、ようやく新刊が出たという作り物めいた異世界を舞台にした「十二国記」シリーズもこの範疇ではないかと睨んでいるのだが、どうだろう(*3)。


(*1)“幼ごころの君”はバスチアンを本の中に引きずり込んだ後、「汝の 欲することを なせ」という一文を残しどこかに消えてしまう。

(*2)「B・D」における“幼ごころの君”はちょくちょく登場していた大きな帽子の幼女だろう。映画終盤にラム自身であることが明かされている。もし「エヴァ」で夢を見ているのがユイだとすれば“幼ごころの君”はレイ、『マブラヴ』で夢を見ている純夏に対する“幼ごころの君”は社霞(やしろ かすみ)…なのかもしれない。

(*3)作中、「はてしない物語」を匂わせる会話文がある(延王・尚隆)。