私たちが山谷に出会うきっかけとなった方、山友会の油井さんに、バラエティロードの可能性や期待することについて伺いました!(最終回)
◆これからの「バラエティロード」の可能性
多様なつながりが生まれたり、地域に寛容な時間が流れたり、文化が生まれたりするバラエティロードの取り組みが、地域の人々にとって必要とされ、愛されるものになっていったらいいな、という気持ちがあります。そこに至るまでには、本当に長い道のりなのかもしれないけれども、地道に続けていけたらいいですよね。
5年間続けてきて、私たちもいろいろな出会いや気付きがありました。これからも、新しい出会いや気付きが訪れることを楽しみにしています。
何にせよ、じんじんさんがいないとできない、谷中のおかってさんがいないとできない、山友会がいないとできない、ということじゃなくて、そのどこかが欠けていたとしても、この取り組みの意義を共有してくれた、この地域の人たちが「そろそろ今年もやろうよ」なんて言って自然と集まって、「今年はどんなことをしようか」って言って、そこで普段はあまり関わりがなかった人同士が、関係を深めることできたり、お互いの理解を深めたりできてくるといいなと思っています。「継続は力なり」ですね。
◆ここまで続けてみて見えたことはありますか?
そうですね…。何かが劇的に変わったということはないんですけどね(笑)。
でも、山友会のおじさんたちが、「今年もじんじんさん来んだろ」「おかっての人たち来んだろ」って言って、楽しみにしてるんだなっていうのはよくわかりますね。年に一度の楽しみがある、また会いたいと思える人がいるって、いいですよね。私は、バラエディロードの企画段階から関わってくれている山友会のおじさんたちの人生を、確実に豊かなものにしてくれていると思っています。
文化出見世を通して、初めて出会った人や、普段は話すこともない人とつながりができたり、自分の企画に対して良いも悪いも評価されて、自信を感じたり、そうでなかったり、というのは、山友会だけの空間ではできないことですしね。
それと、バラエディロードでの空間をとおして山友会のおじさんたちに生まれた地域の人同士つながりが、お互いを支え合う、身近にいる孤立して辛い想いをしている人に手を差し伸べられるような力に発展していったらいいなとも思っています。
山友会の活動は、もはや、手伝ってくれるおじさん達の存在なくしては成り立ちません。山友会を訪れたホームレス状態にある方たちなど社会から孤立し辛い想いをした人たちをスタッフ、ボランティアさんと一緒になって受け入れ、手を差し伸べようと、それぞれに得手不得手なことがあるにせよ、自分なりにできることをしてくれています。それが、山友会に懐の深い雰囲気をつくり出してくれているんです。
そうしたことが、山友会というコミュニティにだけで完結してしまうんじゃなく、ご近所さんの間とか、同じアパートやドヤの人同士とか、日常の暮らしに密接した場や関係性の中にも広まっていけたらいいなと思っているんですが、そのためには日常には起きえない出会いのきっかけが必要だと思うんですよね。
そのきっかけを感じさせるバラエディロードでの景色は、そんなことも考えさせてくれます。
◆今年のバラエティロードは?
毎年のこの話題が出るんですけど、一緒にやってくれるおじさん達って「今年はこうしてやるぞ!」っていうのが、あんまりないじゃないですか(笑)。毎年毎年、何か変化があったり、想定外のことが起きたりしても、それはそれとして受け入れてくれていると感じてます。
私もおじさん達に対して「今年はこうなってくれ!」みたいな気持ちはあんまりなくて。おじさん達に、どのような出会いがあって、どのように交流が生まれるのか。そして、それがそれぞれのおじさん達にとってどのようなことを感じさせるのだろうか、先々どのような意味を持ってくるのだろうか、ということを楽しみにしている。そんな感じです。
というのも、スタッフが「今年はこうしようよ」って言ってしまうとね…。普段から、手伝ってくれるおじさん達とはなるべく対等な関係として一緒にやっていきたいなという気持ちはあるんですけど、彼らからすれば「助けてくれる存在」であったり、「助けてくれた存在」であったりする感覚は、どうしてもぬぐい切れないと思うので、「スタッフの人がそういうなら、そうしようかな。そうするのがいいのかな」って考えちゃうと思うんですよね。
それを、このバラエティロードの場面まで持ち込みたくないなという気持ちがあって。
だから、「今年もじんじんさんが来るって!」「おかっての人たちが来るって!」という程度におじさん達には声をかけて、集まってもらうようにしています。じんじんさんやおかっての皆さんと「今年はどうしよっか」と妄想を繰り広げ、期待を膨らませて準備しているのをときには温かく見守り、ときには影ながら応援しつつ、どんなことが起きるんだろうと楽しみにする立場でいたいなって思っています。
◆支援してくださる方々に一言!
私はパフォーマーやアーティストとか、アートのことを専門にしている人間ではないから、この取り組みにどれほどのアート的な価値があるのかはわからないんですけど、バラエティロードっていろいろな表現が展示されたり、発表されたりしているけれど、美術館なんかの展示みたいに展示そのものが鑑賞されることを期待された規則正しい空間ではないじゃないですか。
有象無象な表現をきっかけに、いろいろな人が路上に集まるから、いろいろなことが起きる。でも、不思議と包容力のあるやさしい雰囲気というか、ちょっとした摩擦や不協和音みたいのがありはするんだけども、そんなこともかき消してしまうような寛容な空気が流れている。その雰囲気や時間を共有した人は何となくわかるのかもしれないけれども、まず、こんなにもわかりづらいようなことに共感してくれたことに本当に感謝しています。
共感してくださった方々とも一緒に、このバラエティロードがつくりあげているんだなって思っています。
それと、こういうわかりづらいけども大切にしたいなっていうことに共感してくれる人がいるって、本当に素晴らしいことだと思うんですよね。世の中捨てたもんじゃないなっていうか、孤立した人々とつながりや居場所をつくっていくという目に見えづらいものを追求している私たちからすると、この取り組みに共感してご支援してくださった皆さんの存在が励みになります。まして、閉塞感の漂う世の中ですからね…、ご支援くださった皆さんの存在は、現代社会にとっての希望だと思います。
本当に、本当に、ご支援ありがとうございます!