キャスティングについてよく尋ねられるので、まずここに記していこうと思います。
シナリオを書く段階から、サンカの中年男性像は渋川清彦さんでした。顔の深さ、佇まい、体型。賞を頂く前から、(勝手に)サンカの男・省三は渋川さんだったのです。
よく、山男はもっとガッシリしているのでは?と言われますが、サンカはマタギとは食べているものが違います。それでいて貧しいです。なので渋川さんの体型で説得的なのでした。
そして肝心なのは匂いです。山の男の匂いを画面から感じるかどうかです。これを出せる人はなかなか居ません。絵に描いた餅ですが、渋川さんが理想像でした。
しかし、新人監督の私・笹谷が人気俳優・渋川清彦さんを起用できるとは毛頭思っていませんでした。かなり重要な役なので撮影日数も長いです。
今思ってもこのキャスティングは奇跡としか言えません。
やはり、映画を何度見返しても、渋川さんの演じるサンカの男・省三は見事なまでに「体の軽さ、心の重さ」を体現しています。役者としての懐の深さを見せられました。
新人の私はその懐で甘えたようにも思います。