映画「山歌(サンカ)」では山の放浪民・サンカの女の子(17歳)が登場します。名前はハナといい、1948年に山で生まれ山で育ちました。
と書いただけでもその設定、役作りの難しさが伺えて、自分でもゾッとします。
現代っ子に山で育った女の子が演じられるのか、コスプレになってしまわないか、そんな女優さんが居るのか!? オーディションまで私は不安だらけでした。正直、則夫役の選定よりも困難だと感じていました。。。。女優さん自身がサンカ、そしてハナを心で理解するのはもちろんですが、映画は身体です。身体能力がそのまま画面に映るのです。山の人間の体の使い方、身のこなしを体現してもらわなければならないのでした。普通に考えて、よっぽどのアスリートでない限り、現代人では無理だと思っていました。
しかし、もしハナの身体能力が実現できれば、この映画の大きな説得力になると私は当初から確信していました。
ハナ役もまたオーディションでした。ここで登場したのが小向なるさんです。小向さんは浮いていました。「自分のことを話してください」と言ったらいきなり歌い始めたり、かなり特異な存在だったのですが、一番印象に残ったのは闘志だったかもしれません。メラメラと燃える熱さを彼女の目は持っていました。リングに向かうプロレスラーのようです。それは則夫役の杉田くんとはいい意味で対照的でした。そしてこのシナリオを本当に気に入ってくれていること、心底ハナを演じたいと思っていることがヒシヒシと伝わってきました。私たちは迷わずハナ役を彼女に決めました。
そして後日、小向なるさんはハナに近づくために、山をひたすら走り続ける競技・トレイルランを始めることになります。命がけで役作りをしてくれました。また記したいと思います。