2019/12/05 20:30

こんにちは、フリーのライター・イラストレーターをしているヤマグチナナコと申します。本プロジェクトでメンバーの一人として、おもにテキストや連載企画のインタビュー、メンバーの緩衝材を担っています。


最近、清水煩悩とむこうぎしサウンドが手がけたMVが、坂本龍一さんの『RADIO SAKAMOTO』にピックアップされました。それを聴いたり、もしくは知ったりして、このページにアクセスした人もいるかもしれません。(ちなみに、『RADIO SAKAMOTO』での一件は、私たちも本当に驚いて、なんだか一気に元気になりました。届かせたいと思って動き続けることで、本当に届くことが証明された気がしました。)

そういう方からすると、そもそも清水煩悩すらあまり知らないのに、突然また誰だろうと思われる人もいるかと思うのですが、少しだけ、私が今回のプロジェクトに関わった経緯を聞いてください。



「これから作戦会議をするので、よかったら来ませんか」


きっかけはそんなLINEでした。煩悩君がこのところ、MVを撮ったり、ゴソゴソと動いてることは耳にしていたのですが、蚊帳の外で聞いていたようなことだったので「何をするんだろう…」と思いつつ、「深夜であれば参加できます」そんなふうに伝えました。


ただその反面、「きっと何かを期待されている」と勘付きました。煩悩君は、意識してかどうかは分かりませんが、そういうところがあるのです。もしそうであれば、それに応え、あわよくば褒められたかったからこそ、終電までお酒を飲んだあとでも、その”作戦会議”へ向かったのだと思います。


その”作戦会議”には、煩悩君の楽曲『大天国』のMVを監督したむこうぎしサウンド・内藤学君も同席しており(というか彼の自宅で行われており)二人とも居酒屋では全然見せない、神妙な表情で空気を停滞させていました。「この前、奥多摩で新しく映像を撮ったんだけど、とりあえず観てみてよ」そう促されるがままに、映し出された編集用画面を見つめること30分。「期待に応えたい」「酒を飲みすぎた」という気持ちと状況下で、あれは人生でも5本の指に入るぐらいに脳みそをフル集中させた30分となりました。


そのあと、二人に率直な感想と意見を伝えるための言葉選びも、これまでの人生で5本の指に入るぐらいの慎重さを有しました。映像を観終わった瞬間、求められていることがわかった気がしたからです。それは、「二人のモヤモヤを第三者が解体して言語化しつつ、私の忌憚なき意見を新たに加えること」でした。(勝手にそう思っただけかもしれませんが。)


結局、その日は朝までその映像の編集について意見を交わしたり、全然違う話をしたり、内藤君のおいしいごはんを食べたりして、朝を迎えました。窓の外が薄白くなり、頭を使いつつお腹いっぱい食べたことで意識がぼんやりする中、「なんか、面白いことが始まるっぽいな」そんなヒリヒリする幸福感だけが鮮明に感じられました。



それから間もなくして、むこうぎしサウンドによる奥多摩での『まほう』のMVがyoutube公開され、私もそれからあれよあれよとプロジェクトに関わっています。(自分からその巻込みに飛び込んだだけなのですが)そんな中で、私がこのプロジェクトの中でやること、そして期待されていることは、最初の”作戦会議”に呼ばれた際と同じ「解体して言語化しつつ、忌憚ない意見を言うこと」だということはブレていません。それを意識しつつ、みんなと楽しく議論しつつ、笑いつつ、ごはんとお酒を飲みながら、このプロジェクトを楽しんで(※)います。


※この「プロジェクトを楽しんでいる」というのは自覚としてあるのですが、客観的に見てもどうやらそのようです。というのも、先ほどの三人でプロジェクトの公開前に集まったとき、「レコーディングは焚き火を囲んでやりたい」という煩悩君の話を、私はまるでカブトムシを見つけた子どもくらいキラキラした目で聞いていたそうです。たしかに、その話を聞いた瞬間、目の前に焚き火とそれを囲むみんなが見えて、パチパチと火が弾ける音と、煩悩君の音楽が聴こえました。これはきっと、お酒の進み過ぎで見えた幻影ではないと思います。



…まあ、正直、連載中の対談企画はいつも暴れながら編集しているし、進捗への不安はしょっちゅう生まれるけれど、それらもひっくるめて、楽しさを感じています。それが出来るのは、期待されていることに対して「応えて、あわよくば褒められたい」という気持ちがまだ全然あるからです。それを知ってか知らずか、プロジェクトのメンバーはいつも褒めてくれて、最近では髪を切るだけでも褒めてもらえるほどの甘やかされっぷりです。



つらつらと文字を重ねてしまいましたが、つまり私が言いたいのは、このクラウドファンディングは、きっとまた、煩悩君からみなさんに送られた”作戦会議”へのお誘いなのだろう、というです。正直、いきなりで戸惑うことでしょう。「雪山でMVを撮りたい、天国のような村で収録をしたい」そんな突拍子のない話をされて、困らない人間はそういません。私も戸惑いました。けれど、そんな突拍子のない話に、ワクワクしない人間もそういません。私も興奮しました。煩悩君は、またそれを知ってか知らずか、きっとこのお誘いを大々的に行っています。



そしてこの”作戦会議”に参加する動機は、純粋だろうか不純だろうが関係ありません。ピュアにこの音楽家を応援したいと思う人もいるだろうし、ビッグになるであろうから関わっておきたいという人も、お金の使い道がここにしかない人もいるかもしれません。(…そんな人はいないですよね、あくまで比喩の話とです。)何せ、私は「褒められたい」が動機ですし。


そしてその動機の数だけ、つまりみなさんの数だけ、きっと煩悩君は期待を持っている気がするのです。その期待は、赤ちゃんの幸せを切に願うことと似ているような気がします。義務や押し付けではなく、限りなくピュアで明るい期待。こんな期待のされ方は、みなさんの幼児期以来なかった事かもしれないのです。論理の飛躍ともとれそうですが、ようは彼のしていることはそういうことのような気がしています。(そう言われると、多かれ少なかれちょっと応えたくなってしまうようであれば、きっとこの”作戦会議”に参加したほうがいい気がします。)


クラウドファンディングの期間が終わり、プロジェクトが制作段階に移行していけば、きっとみなさんにとっても楽しいだけじゃなくなるかもしれません。何かが遅延したり、どうなるか分からないことばかりだから。けれどそれも引っくるめ、このプロジェクトが人生の5本の指に入る大きな出来事になることは、多分事実です。それはワクワクかもしれないし、ヒヤヒヤかもしれないし、感動かもしれないし、可愛げかもしれないし、おいしさかもしれないし、もっと別の何かかもしれません。それは、私たちに期待してもらいたいことでもあります。私たちは、それに応えたいと思っています。


長くなってしまいました、ここまで読んでくれた皆様ありがとうございます。この下にも、またもやボリューミーすぎるプロジェクト概要が続いています。これだけで胃もたれしてしまうかもしれないので、一度コーヒーブレイクを挟んでもいいくらいかと思います。けど、もし私のこの文章で少しでも心に留まる部分があれば、ぜひ、ゆっくりでいいので続きを読んでいただきたいです。再三になりますが、きっと楽しいことが起こります。きっと、人生の何かしらの5本の指に入ることになります。そんな期待を持っていただければ、幸いです。


2019.11.14 追記(野菜ジュースをこぼしながら)