2019/12/21 10:00
スタートダッシュ!序盤に支援してくださった皆様に感謝

失語症とは、大脳の言語に関する領域が損傷されることで、それまで自由に使っていた、「話す」「聞く」「読む」「書く」ということばの機能が低下し、障害された状態です。

問題です。失語症の人はどんなことに困っていると思いますか?

おはようございます。松嶋です。このプロジェクトチームのひとりで、NPO法人Reジョブ大阪の理事をしています。

毎日、NPO法人日本失語症協議会の園田先生、三鷹高次脳機能障害研究所の関先生と連絡を取り合い話し合いを重ねています。そのことを、どんどん記事にしていきます。

まずはお礼です。このクラウドファンディングを開始したのが12月19日の朝でしたが、初日だけで52,000円の支援がありました。

皆さま、本当に本当にありがとうございました。最初に手を挙げてくださった人がいたこと、本当に心強いです。

そして、現在は、あれよあれよという間に数字が増え、141,000円の支援が集まっています。もう少しで「失語症の日」記念日協会に支払う認定料に達します。

このクラウドファンディング中に、認定料を払えて、認定が正式に決まるドラマを思い描いて、頑張っています。

私は今、東京都の失語症者向け意思疎通支援者養成講習を受けています。長い名前ですが、要するに、聴覚障害者に対する手話通訳者のような存在の人を養成する事業です。

聴覚障害者には手話があります。では、失語症者には何ができるでしょう。手話や筆談?補聴器?五十音表?いえいえ、もっと複雑なのです。

このようなことを考えるとき、まず「知る」ということが、本当に大事です。今日はざっくり失語症についてお話します。

また、このような知識よりも、当事者や家族の話が勝ります。今後は生の声もお届けしますので、ゆっくり「知って」いってください。

失語症とは

失語症とは、大脳の言語に関する領域が損傷されることで、それまで自由に使っていた、「話す」「聞く」「読む」「書く」ということばの機能が低下し、障害された状態です。

「話す」ができなくなっちゃった

言いたい言葉が出ない、別の言葉が出てしまう、推測できないほどの言い誤りがある、遠回しな言い方をする

人によってさまざまで、「あれ……あれだよ……あれ……」と言い続けて、諦めてしまう人もいます。私も年のせいか「あれ」が多くなってきましたが、それとは違うんです。別の言葉が出てしまう人にも会いました。本人は「明日」と言っているつもりだったのに、口から出た言葉は「今日」。これが何かの手続きだったら大変です。また「明日」と「今日」くらいだったらカレンダーを持ってきて確認できますが、内容が違うという場合もあるそうです。

自分だったらと考えると、本当につらい気持ちになります。

私たちはそういう人を見かけると、手話や筆談をしたらいいんじゃないか?と思ってしまいますよね。でも聞こえないから話せないわけじゃないんです。手話や筆談がコミュニケーションの手段として取れないことも、失語症の方の特徴だとのこと。

「聞く」ができなくなっちゃった

聞いた言葉の意味が分からない、複雑な内容、長い話が分からない、早口、まわりくどい言い方が分からない。この「複雑な内容、長い話が分からない、早口、まわりくどい言い方が分からない」に関しては、疲れている時は私たちでも感じます。頭がくたくたな時に、複雑な仕事の話なんてできません。そんな感じなのかもしれないと推測しますが、「聞いた言葉の意味が分からない」については、もう、同情しかできません。同情すらできているのかどうか。「ある日突然外国に行ったよう」と表現することもあるようですが、もっともっと心細い感じなんだと思います。

誤解されやすい点としては、聴力の問題ではないということ。耳が遠いわけでもない。聞こえてはいるのだそうです。なので、補聴器で補うのは違うんです。

「読む」ができなくなっちゃった

NPO法人Reジョブ大阪の賛助会員『知っといてぇや これが高次脳機能障害やで』の著者、下川さんも同じようなことを言っていました。入院時に新聞を読もうと思って広げたのだけど、何が書いてあるのかさっぱり分からなかったそうです。

これも視力の問題ではなく、見える文字が理解できないのだそう。単語もそうですが、文章になるとなおさら分からなくなるのだそうです。

他に、別の言葉に読み誤ったり、文字の読み方を誤ったりします。

講習の中で、バスの料金表が読めなくて、運賃が払えず、運転士に聞いたら「書いてあるだろう!」と怒鳴られた人がいたという例が挙げられました。そして運転士に「読めないんです」と言ったら「ふざけるな!」とさらに怒鳴られたのだそう。もうほんと、しんどかっただろうと涙が出ます。もし、この運転士さんが失語症のことを知っていたら「あ、もしかしてこの人は失語症なのかもしれない」と気づいて、「〇〇円ですよ」と言えば済んだ話なのです。

「書く」ができなくなっちゃった

文字が思い出せない、誤った文字を書くなど。そして、失語症の場合、右手に麻痺があることが多いので、物理的に文字が書けなくなることも多いそうです。

これも、「書けないなら口で言って!」となりそうですが、それが出来る人と出来ない人がいるのです。

私の知り合いで、めちゃくちゃしゃべる失語症の人がいるんですが、言葉の読み書きができません。役所の書類なんていうのは、かなり難しいことが想像できます。



以上「話す」「聞く」「読む」「書く」について、私たちが誤解しやすい部分を挙げました。でもどうでしょう? 他の障害でもそうですが、そういう人たちがまずいるのだということを分かり、知っておくことで、こちらもずいぶん気持ちが楽になります。そして、この失語症は先天性の障害ではありませんから、いつ自分や家族や友人がなってもおかしくないということなんですね。原因は、脳卒中のようなものだけでなく、例えば、自転車で転んで障害を負った子ども、網棚から落ちてきた水筒で障害を負った若い女性という例も知っています。

その時はひどい外傷もなかったので、病院に行くこともなかった~なんて例もあるそうです。またここからが問題なのですが、病院の先生が全員失語症に詳しいわけでもないということを心がけておかなければいけません。これは本当に驚きです!

医者は大丈夫だと言って退院。でも、ずっとずっと変。何年も経ってから自分が失語症だと分かったという人を、何人も知っています。

「倒れる時は、失語症に詳しい医者のいる病院名を叫んでから倒れた方がいい」なんて、冗談まがいの話も笑えないほどです。

今日はお礼とともに、失語症のことをざっくりとお伝えしました。どんなにつらいか、そして社会がこの障害を受け入れるにあたり、どれだけ整備がされていないか、想像してすぐに分かることです。それはこの失語症が「見えない障害」「知られていない障害」であるからです。いろいろな方法があると思いますが、私たちは「記念日」をカギにして、少しずつこの障害のことを広めていきます。


※ 障害を「障がい」や「障碍」と表現する方が良いという意見もありますが、私は、まずはこの障害について知ってもらうことが大切だと考え、ネット上の拡散力を重視し、検索でヒットしやすい「障害」を使用しています。ご了承ください。