パスポートや卒業証明書が返還されました!
POSSEが支援している、会社にパスポートなどを奪われていたフィリピン人女性は、それらの書類の返還を求めて今年の1月に「アドバンスコンサル行政書士事務所」(代表者:小峰隆広)を提訴しています。
そして、今週の火曜日(8月25日)の第3回口頭弁論で、会社が「預かっていた」パスポート・卒業証明書・成績証明書・優良証明書が本人に返却されました!
女性は2017年4月に来日し日本語学校を卒業したのち、2019年5月から「アドバンスコンサル行政書士事務所」で通訳・翻訳として就職しました。その際に会社がパスポートや卒業証明書などの書類を預かる旨の日本語の契約書に理解できないままサインしました。
女性は同行政書士事務所を去年7月に退職しましたが、パスポートが返還されなかったので、「NPO法人POSSE外国人労働サポートセンター」に相談しました。私たちは外国人労働者の移動する自由や転職する自由を侵害し強制労働につながる手法として捉え、このケースに取り組んできました。会社に何度も返還を求めましたが、会社が返還をする姿勢を見せなかったので、今年の1月に以下を求めて会社を提訴しました。
1. パスポート、卒業証明書、成績証明書、優良証明書の返還
2. 未払い賃金の支払い(2019年6月から7月分=約17万円)
3. 精神的苦痛に伴う慰謝料
4. 離職後の働けない期間の補償
5. パスポート再発行手数料(26,000円)
パスポート返還へ(昨日、第3回口頭弁論・横浜地裁)
今週火曜日(8月25日)横浜地方裁判所(第605法廷)でおこなわれた第3回口頭弁論の最中にフィリピン人女性に行政書士からパスポートを含む書類一式が返却されました。これによって、1.は解決しましたが、残りの未払い賃金の支払いや慰謝料の支払いに関して裁判を続けていくことになります。
一方で行政書士は、パスポートを預かったのはあくまで「契約」に則ったものであり、会社が管理しても返さないことは問題ないとしました。
初回と前回に引き続き行政書士は、外国人は管理・監視しないとすぐ犯罪を犯すという旨の発言をしていました。彼の発言は外国人を管理・監視の対象としてしか見ていない社会の姿を体現していると思い、この社会全体の問題と対峙する必要性を感じました。
もちろん本人の書類が返還されたのは良いことで、ボランティアも外国人組合員たちもそう思っています。しかし、それだけで終わりではありません。この問題が社会全体に広がっているなか今日も身分証明書を奪われて働く多くの外国人労働者がいます。「良かったね」では済まされない話で、私たちはこのような問題を多く引き起こしている社会の仕組みに根本から取り組まないといけません。
私たちは今回のケースを「外国人の抱えている問題」だとか「孤立した一つのケース」として考えるのではなく、「この社会の問題」として捉えなくてはなりません。私たちはこのような強制労働につながる仕組みをなくすために、雇用者による外国人労働者のパスポート預かりの禁止を求めていきます。パスポートの取り上げに限らず、外国人労働者の人権侵害を引き起こし、それを簡単に見逃す社会と闘っていく必要があります。
私がPOSSEでボランティアを始めるきっかけになったのが、POSSE外国人労働サポートセンターのこの裁判についての発表でした。闘うと決めた本人と一緒に多くのボランティアがこのケースに取り組んできました。私と他のボランティアの多くがパスポートを奪い取る雇用者がいると知って、これ程の問題が起こる日本社会に憤りを覚え、このような社会を変えなくてはいけないと思って活動してきました。
このような社会運動によって社会を変えていくことができるのだと思います。私たちの世代にできることはたくさんあります。なので、関心のある私たちの世代の人たちは闘う外国人と一緒に問題に取り組んでいきましょう。
パスポートなどの書類は返却されましたが、未払い賃金や慰謝料の問題はまだ解決していないので私たちは裁判を続けていきます。ぜひご支援ください。
(NPO法人POSSE外国人労働サポートセンターボランティア)
2020/8/25 弁護士ドットコム
フィリピン人女性、元勤務先に預けた「パスポート」ようやく返還される