前回に続き、今回もリターンに設定されているプラキットの魅力をご紹介していこうと思います。第二回目は王君メカシリーズ(Royal Inner Self)第1弾「クレオパトラ」についてです。今回は前回とは趣向を変えて、デザイナー兼作者であるひいらぎはじめ氏から寄せられた紹介文を掲載させていただきます。
作者が語る「クレオパトラ」の魅力
こんにちは!ひいらぎはじめといいます。「本気のクリエイター発掘大作戦」の応募、凄いことになってますね。プロもアマも渾然一体となってそれぞれ尖ったアプローチがあるなぁ と、しげしげ拝見しています。
この機会に「クレオパトラって何ぞや?」「どういうキャラなの?メカなの?」というのをご紹介したいと思います。プラキット化をきっかけに興味もってくださったら嬉しいです。どうぞよろしく!
もともとメカやキャラを空想してはスケッチしてたんですが、立体にするにはとても労力が要りますし…最初はプラモデルの改造で満足していました。
そのうち版権モノのガレージキットをいくつか造形しているうちに、「これだけやるんならオリジナルを立体で作ってもいいのでは」と漠然と思い、クレオパトラに着手しました。
↑王君シリーズ「Royal Inner Self」今のところ第5弾までリリース中。
作っていくうちに「オリジナルだからその時の自分が最も満足できるものを作っていいんだな」と…。一体ごとに「やりたいこと」を決めて作っています。クレオパトラも、その過程で生まれたキャラ(メカ)の一体です。
王君メカシリーズ「Royal Inner Self」
クレオパトラは王君メカシリーズ「Royal Inner Self」の最初の一体としてデザインしました。
クレオパトラは劇中における西暦1万年、エジプト圏で建造された「アストラルボディ」です。クレオパトラという名は古代プトレマイオス朝の女王にあやかって名付けられました。(軍艦大和が大和国に由来して名付けられたのと同じです)
↑各所にエジプトの要素を溶け込ませてデザインしています。丸い頭部は太陽。首回りや肩の三角形のシルエットはピラミッド。胴体はカノポス壺。腕には隼。足のフィンはミイラの包帯。この角度からは見えませんが、背中の翼はスカラベ、死者の翼など。
アストラルボディとは「王の魂の器」。一国にたった一台きりの執政ユニットです。 王位継承者が憑依することで駆動します。アストラルボディはあらゆる用途において無敵です。執政にも、戦いにも…
その機体サイズは人間とほとんど同じです。王は民に寄り添うべきで、当然、他の人間たちと同じ生活空間に居る必要があるためです。
アストラルボディには一体ごとに運命的に定められた設計思想とも言える「精神性」があります。例えばクレオパトラの精神性は「好奇心」、ライバル機のカエサルは「思慮」などです。性能の良いアストラルボディほど、憑依者に高い精神的資質が求められます。王にふさわしく「徳が高い者」しか、アストラルボディを扱えないのです。
よその国、別の時代には他のアストラルボディたちがおり、大きな流れの中で、それぞれがそれぞれの物語を紡いでいきます。そうして時代は過ぎて行き、人類はアストラルボディとともに新たなステージに進化していく…というのが大きなストーリーの流れです。
↑クレオの王杖「オベリスクタワー」にはホルスの瞳、アンク(♀)の記号、オベリスクの塔などの要素が見えます。ホルスの瞳は「修復、再生」の象徴。アンクは「生命」の象徴。オベリスクは「保守、保全の記念碑」であり、これらから、オベリスクタワーが「守りのために使われるデバイス」であることがわかります。
クレオパトラのストーリー
クレオパトラは好奇心旺盛です。王位継承してからいつもテキトーに過ごしているので、配下を困らせてばかりです。その一方で機体側が求める精神性との同調率が高く、凄まじい演算能力をフルに発揮できる優秀な王でもあります。その演算能力で未来予知に近いことをやってのけたり、運命を逆演算して古代のファラオを召喚したり…。過去世界と未来世界に精通しているのが彼女の持ち味です。
↑ちょっと文字ちっちゃいですが、雰囲気を感じてください雰囲気を…
クレオは政治そっちのけで紅茶飲みながらゲームするのに夢中なんですが、演算能力が高すぎて相手がほとんどいません。カンペキな王がテキトーに国を統治することで適度な遊びが生まれ、いい感じに国が豊かにまわっています。
自分の好奇心を満たすためにクレオパトラは自国の外にお忍びで出かけるようになります。そして隣国のアストラルボディ「カエサル」と出会います。
カエサルは現存アストラルボディ中最強の戦闘能力を持った一器です。彼にだけはクレオもかなわず、二人はライバルとして意気投合します。
↑互角って言ってるから互角なんでしょう。二人の間には誰も入れません。いろんな意味で…。
「オベリスクタワー」は通常時は膨大なデータバンクシステムです。
多機能なハードディスクみたいなものですが、戦闘時は手持ちハンドルが展開し、兵器としての運用形態に移行します。
先端のアンク(♀の部分)から放たれる時空乱流のビームで「敵の時間をかき混ぜて破壊する」他、クレオの瞬間移動の演算補助も行ないます。
一方のカエサルは血で血を洗いながら何万年も帝政ローマの執政を続けてきたのですが、「アストレルボディとしての寿命」を迎えることになります。
その人生の締めくくりにクレオと出会ったことで、彼の人生は報われます。
そして時を同じくして、宇宙崩壊の危機をもたらす国籍不明の暴走アストラルボディ「外来知性体」が次元を超えて襲来。
↑国籍不明とありますが、実はアメリカの王の名を冠したアストラルボディです。マヤ文明の碑文が22世紀に発見され、そこに書かれていた偉大な王の名前を冠したアストラルボディでした。
これと相打ちになってカエサルは崩御します。これは暗に「史上最大級の帝政国家vs史上最大級の民主制国家」の図式を意味しますが、クレオには関係のないことですね。クレオパトラはライバルの死を看取ります。自分が最期の対戦相手になれなかったことを悔やみながら…
そして戦後、カエサルの後継機「アウグストゥス」が誕生。クレオパトラはアウグストゥスの師となって彼を見守っていきます。
…というのがざっくりしたクレオパトラの物語です。
これまでの活動(プラキット化への道のり)
設定資料風のリーフレットをガレージキットに入れたりしていましたが、もちろん最初からこんなに構想があったわけじゃありません。初めは「実在した王様モチーフで、かっこよくてかわいくて、何かエレガントなキャラ作ろっと!」くらいの軽い気持ちで始めたんですが、せっかくだから自分で満足いくものにするためアレもコレもやってみました。
「国ごとにデザインラインを変えてキャラデザしてみたら面白そう」とか「王がいるなら臣下も用意しなきゃ」とか
↑この二機はクレオパトラの臣下です。
「設定画とかコンセプトアートも描いちゃお」とか「もちろん立体造形して、欲しい人に販売しよう」とか。
「いっそ全部まとめて本を作っちゃうか」とか「じゃあシリーズ用のロゴデザインとかも必要だ」とか。
「キャラを掘り下げたら、だんだん物語が見えてきた」とか「気づいたら劇中年表も出来上がってた」とか「漫画にしたら物語が伝えやすいから漫画も描いちゃお」とか…
よくばって全部やってるうちに、頭の中で世界観もどんどん広がっていきました。たぶんひとりでやるのは非効率ですし遠回りだと思うんですけど、自分が満足するためにやってるんだからいいか…みたいな。
↑文字が小さくてすみません、ほんと…興味湧いてくださった方はこちらから設定資料集を販売中です。(ダイマhttps://hi-raging-2629.booth.pm/)
どうでしょう、クレオパトラにちょっと興味湧いてきましたか?湧いてきましたよね?ね?これでも設定資料からハショりまくって文章にしたんですが、長くなってしまった気もします。お付き合いくださりありがとうございます。
プラキット化について
今回、moiさんの「なっちん」、タカノリさん&僧侶さんの「アモデウス」、そして自分の「クレオパトラ」がプラキット化されることになりました。完全に寝耳に水でびっくりでしたが、ガレージキットの造形ばかりやってきた自分にとっては、手間ひまかけて世界観をアウトプットして来たのは間違ってなかったのかも、と思えたのが何よりも嬉しかったです。
キャビコさんのお話を伺ったり、打ち合わせしていると「この人たち本気だ!」と伝わってきます。自分のキャラクターをプラキット化して模型店で販売なんて、自分一人じゃ絶対できっこないですから、まだ現実感が無いんですがソワソワしています。
「人のいろんな精神、誇り高さ、気高さ」みたいなものを、これからも王君として一体一体作っていけたらと思います。プラキットもガレキもチェックしてやってくださいね。
今後ともどうぞよろしくおねがいします。