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薩摩川内船団丸です。
鹿児島県の北西部に位置するここ薩摩川内(さつませんだい)市には古くから漁港があります。
黒潮の恵みを受けた近海では、鯛やちりめんから伊勢海老など地元特有の魚まで様々な海の幸がとれます。
「せっかくの美味しい魚を、なんとかいち早く消費者の方々に届ける方法はないものか」
「船から降ろして漁協に運んで終わり、そこから先はわからない、ではなく、お客さんのもとに届くまで見届ける方法はないものか」
「食べてくれる方々と、つながる方法はないものか」
そんな思いから、漁師たちが力を合わせて立ち上げたのが薩摩川内船団丸です。
薩摩川内船団丸は、漁師たちがとった魚をすぐに梱包して料亭やレストラン、個人のお客様などに届ける、いわゆる漁業の6次産業化に取り組みます。
漁師たちのジレンマ
われわれ漁師たちは皆、地元の魚に自信を持っています。
しかし、船から降ろした魚が自分たちの手を離れていって、スーパーや魚屋さんに並んだときには、どこの誰がとった魚かわからない、薩摩川内でとれた魚だということすらわからないかもしれないことに、さみしさや物足りなさは感じていました。
「とれたての魚を、すぐに食べてもらえたらもっと美味しいのに」
「日本中の人に薩摩川内の魚を知ってもらいたい」
それぞれがこんな思いを抱えていましたが、思いの丈を誰かと語り合うことはありませんでした。
みんな、川内市漁業協同組合の青壮年部に属しているという以外の共通点も付き合いもあまりなく、人によっては漁や作業を手伝い合う仲間がいる、という程度だったのです。
絆の力と強力な助っ人の登場
自分一人ではどうにもならなくても、誰かと協力すれば、何か方法を思いつくかもしれない・・・
そう思い立った何人かの漁師が勇気を出してお互い声を掛け合い、まずは青壮年部のメンバーで頻繁に集まって、お互いをよく知るところから始まりました。
今では34歳の若手から、60歳のベテランまで和気あいあい。技術や知識を共有しあったり、一緒に海岸清掃に精を出したり、ときには地元で獲った魚を分け合ったりと、強い絆ができました。
薩摩川内の漁業のこれからについて、みんなで話し合いを進めると同時に、外からも強力な助っ人が加わりました。山口県発で、漁業の6次化のパイオニアとなった萩大島船団丸を、漁師たちと共にゼロから作り上げてきた坪内知佳さんです。技術やオペレーション等の指導をするという立場で関わってくれることになったのです。
役所とのやりとりや漁協との交渉から、ひとつひとつ足で回っての顧客開拓、資金調達、梱包の工夫や物流の選定など、すべてを自ら体験して会得してきた坪内さんの話はあまりにもリアルで、最初は仲間内でも、「本当に自分たちにできるのか」と不安の声が上がることもありました。
しかし昨年の11月、坪内さんを交えての10回目の会議で、このプロジェクトが大きく動き出しました。
まだ少し不安げな表情を浮かべるメンバーもいる中で、坪内さんが発した力強い一言。
「わたしたちが萩大島船団丸を立ち上げたときには、前例もお手本も無かった。みなさんにはわたしたちがいる。手本があれば、同じ期間で萩大島以上のことができるはず。」
これに、みんなが大きくうなずいたのです。とにかく走り出してみよう、と全員が結束した瞬間でした。
「萩大島船団丸モデルをここ薩摩川内でも」ということで薩摩川内船団丸がスタートしました。
漁業の6次化への準備開始
そうと決まれば即行動。すぐにでもできることは何か、坪内さんと相談したところ、お客様へのテスト出荷をしてみよう、ということになりました。
すでに萩大島船団丸と付き合いのあるレストランや料亭に協力してもらい、薩摩川内から実際に魚を送ってみるのです。釣り上げた魚を処理を梱包、発送し、お客様が受け取るまでにかかる時間を検証したり、開封した時の状態や処理の出来、調理後の味などについてフィードバックしてもらえば、どこをどう改善していけば良いかがわかるからです。
それにはまず、基本的な処理や梱包の仕方を学ばなければなりません。
もちろん、これまでも神経締めや血抜きなどをする場合もありましたが、人によって、独自の方法だったり、誰かに教わったやり方だったり。誰がやっても同じクオリティに仕上がる、というわけにはなかなかいきません。
また、これまでは獲った魚は漁協に運ぶだけだったので、例えば東京に向けて発送するためにはどんな梱包が必要なのかもわかりません。
そういったことをわれわれに教えるために、萩大島船団丸の長岡船団長が翌朝には始発の電車に乗って、山口県から鹿児島の薩摩川内まで駆けつけてくれました。
肩には実際に萩大島からの出荷の際に使っている梱包資材を担いでいました。
梱包する前の手入れの方法も教わりました。
それぞれが自己流で処理した結果、お客様に届いた際のクオリティに差が出ないように。
毎日漁師たちが食べている魚がおいしいのはある意味当たり前です。
いつだってとれたてが食べられるのですから。
だからこれまで、自分たちの魚がスーパーに並んでお客様が調理するときにはどういう状態になっているか、よくわかっていませんでした。
どこのどなたが買ってくださったかもわからないわけなので、もちろんお客様から感想を聞くこともありません。
これからはそういうわけにはいきません。手入れの仕方ひとつ、梱包次第で、お客様の手元に着いたときの見た目と味にどれだけの差が出るかについても、坪内さんと長岡船団長に教えてもらいつつ、研究を重ねました。
様々なことを学ぶ間にも、テスト出荷に協力してくれるお店がいくつか見つかりました。
いくら漁協を通さずに直送なので早いとは言っても、お客様はその場で食べることはできません。
例えば鹿児島から東京に送る場合に適切な処理方法は?氷の量は?試しながら最適な方法を探るにはテスト出荷して感想を聞くのが早道です。
こうして、まずは一つ目のテスト出荷が実現しました。
その後、12月から1月にかけて、何度かテスト出荷を実施して、改善を重ねてきました。
自分たちが獲った魚が、美しくおいしそうな料理に仕上がってテーブルに並んでいる写真がお客様から送られてきて感無量のメンバーも。
あるテスト出荷先の料理長からは、「内臓は通常破棄するけれど、新鮮だったので胃袋やレバーも調理してみたところ、臭みがなくおいしかったのでお店に出しました」といううれしい報告もありました。
漁師を子どもたちに憧れられる職業に
漁師というのは年がら年中、漁に出ているわけではありません。
禁漁の期間があるのも、状況次第で漁の回数や漁獲量を漁師自らが調整するのも、限られた海の資源を守るためです。
とはいえ、消費者の魚離れは進むなか、環境や気候の変化などにより、1回の漁獲量も減りつつあり、漁師の収入は安定しづらいのが現状です。
こういった問題をすべて一度に解決できるのが6次化だと考えています。
すばやく、直接届けることで、消費者のみなさんには、「新鮮な魚って、こんなにおいしいんだ」「薩摩川内というところではこんな魚が獲れるんだ」と関心を持ってもらえるのでは。
同時に、漁師たちは、自分で魚に値をつけて直売することで利益率を上げ、収入を安定させることができるのです。
漁師仲間の中には子供や孫がいる人もたくさんいます。
みんな、若い世代に誇れる職業でありたいと思っています。自分の仕事ぶりを見て、子や孫や地域の若者、さらには都会の若者が、将来は漁師になりたいと思ってくれれば、と願っています。
日本の食文化を守り、地域を活性化していくためにも、環境面からも経営面からも持続可能な漁業を推進していくことが、わたしたちのチャレンジです。
リターンについて
真鯛やしらすなどの薩摩川内で獲れる魚をご用意しました。
テスト出荷を通して研究を重ねた結果、薩摩川内の魚に合った手入れや梱包の方法が確立しつつあります。
これにより実現した、他ではなかなか味わえない新鮮で濃厚な魚の味をぜひ体験してみてください。
また、薩摩川内船団丸のグッズなども揃えています。
実際に薩摩川内に来ていただいて、観光したり、漁師たちの現場や6次化の進行状況を見学したり、新鮮な魚を味わっていただけるツアーもご用意しました。詳しくはリターン欄をご覧ください。
資金の使い道
集まった資金は、梱包資材の購入、パンフレットやウェブサイトなどの販売促進アイテムの制作などに利用させていただきます。
みなさまが応援してくださった薩摩川内の魚が、新鮮なままで各地に届けられ、「薩摩川内といえばおいしい魚!」と日本じゅうの方々に認知してもらえる日まで、見届けていただければ幸いです。
そして、みなさまからのご支援を力に、今後の事業を加速させ、薩摩川内はじめ日本の漁業の未来を明るくしたいという坪内さんの夢を一緒に追いかけていきたいと思っています。
終わりに
最後までお読みいただきありがとうございました。
この試みは、薩摩川内の漁業を持続可能なものにするだけでなく、魚を獲り、魚を食べることで季節を楽しむという日本の文化を子どもたちに引き継いでいくためのものです。
このプロジェクトを日本中のみなさんに知っていただくことで、同じく6次化に取り組んでみたいと動き出す漁師や、漁師から直接魚を買って食べてみたいと思ってくれるお客様が増えればと、また、そういう方々とつながっていければと思っています。
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