このプロジェクトについて、もう少し詳しく聞きたいという声がありました。広く知っていただきたい内容ですので質問と回答をこちらに記載させていただきます。
Q 「世の中にある誤解や偏見を写真という表現で超えたい」とはどういうことですか?
A ホームレス問題は他の社会課題に比べて支援金が集まりにくいという傾向があります。それは『ホームレスになるのは自分の責任だ』と思われてしまうからです。ですが、ホームレス状態に陥るきっかけは、突然の病や失業による困窮、家庭や職場の人間関係の悪化など、誰にでも起こりうる出来事がほとんどです。そして、一度住居を失うと、そこから抜け出すのが困難であることも事実です。
この写真集では、そういった現状をライトな表現で知ってもらえるツールとして出版したいと考えています。
Q 撮影行為によっておっちゃんたちの主体性や自己肯定感が高まるのでしょうか?
A 金銭的な支援も必要ですが、日常の目的や役割をつくるという支援の重要性を強く感じています。カメラを渡した人全員がやりがいを感じて…というわけではありませんが、野宿生活から次のステップに移った人もいます。
2017年から行っている取り組み「Snapshot taken by Homeless」で撮影してくれたおっちゃんの一人に話を聞くと、こんな言葉が返ってきました。
「素人だし、最初は何を撮っていいか分からんかった。だからどうしようと思ったけど、色んなものを撮ってたらいつの間にか夢中になってたんよね。楽しくて、心が無になれるというか...」
「路上での生活って、心が死んでいくんです。1日がね、違った意味で『時間との戦い』なんです。早く日が暮れてくれへんかなーって。路上で生活してることを恥ずかしいと思っていたし、人目も気にしていた。でもカメラを託されて、心が死んでいた生活の中に、生きる目的が生まれたんです」
「上手くもないし、通りかかったところで面白いと思ったものを撮る。ただそれだけなんですけど、2週間の期限の終盤あたりは、カメラワークなんかも考えたりしちゃってね...」
Q 撮影した写真がプロのカメラマンの作品とどう違う意味や価値を生むのでしょうか?
A このプロジェクトの大事なポイントは、当事者たちの視点で写真が撮られていることです。写真を撮ることは、日常の一部を切り取ること。この写真を見ることで、彼らの日常をより知ってもらえるきっかけになります。
また、写真には撮影した人がホームレス状態になった経緯や、写真についてのインタビューを添える予定です。例えば川沿いに住んでいる人は「水の神様に毎朝お参りしてるねん。だからこの神社を撮ったんや」、花をよく撮影している人は「おじいちゃんが花を育てるのが好きな人やったからその影響かな」など、当たり前ですが一人ひとりが違った人間であることがわかります。同様にホームレス状態に陥った理由や経緯も様々です。「ホームレス」という言葉があくまで一時的な状態を指す言葉であることを、ページをめくるごとに実感していただけるような内容にしていきたいと考えています。
これらを写真集という形にまとめることで、ホームレス状態の人たちのことを知ってもらい、偏見を解いていくことを目指しています。
Q おっちゃんがカメラを常時所有できるのでしょうか(路上で盗難されないのか)?=持続的な支援の形になるのでしょうか?
A お渡しするのは使い捨てカメラです。高価なカメラとは違い、盗難の危険性はかなり下がると考えています。希望される方にカメラをお渡しし、撮り切っていただいた方に撮影料をお渡しいたします。今回は写真集に収録する分のみの撮影となります。
ご質問にはエピソードの1例を掲載してほしいという声もありました。そちらは今後活動報告で追記予定です。