今日も収録曲について述べてみたいと思います。
本アルバムのラストを飾る「蛍の光」です。
誰もが一度は歌ったことがあろうこの曲は、スコットランドの民謡「Auld Lang Syne (オールド・ラング・ザイン」)」に明治の頃、小学校の唱歌として日本独自の歌詞を付けたものです。
元ネタは、旧友と再会して思い出話をしながら酒を酌み交わすといった内容で、結婚式などおめでたい席で歌われるのに対して、共に学んだクラスメイトに「今日で離れ離れになってしまうけど、お国の将来のためにも、お互いがんばってこーぜ!達者でな!」といった別れの内容となっています。
別れの曲ということで、よく閉店間際のお店で粘っていると、追い出されるようにこれがかかりますが、正確には蛍の光ではなく戦後に日本で公開された「哀愁」という映画のワンシーンで流れる三拍子のオールド・ラング・ザインを音源が手に入らなかったため日本で再録した「別れのワルツ」という曲らしいですね。たしかに三拍子で聴かされると、どうしても我々日本人は、「わー、帰んなきゃだ」という強迫観念と寂しさが押し寄せて聴こえてしまいますねw
そんなネガティブな気にさせられてしまう(歌詞の内容的にはめっちゃポジティブなんですが)蛍の光ですが、海外特にアメリカなんかでは、大晦日にみんなで大合唱して来る新年を祝ったりしてるんですよね。オールド・ラング・ザインをスカコアアレンジしてギャーギャー言いながら、カウントダウンライブで騒いでる動画なんかも見れたりします。
そこで我々はこの点に着目し、本来は前向きな曲であるハズの蛍の光をパーティーチューンしてイメージの向上を図ると共にレパートリーとして加えることにしました。
とはいえ、出だしからあのメロディは、やはりマズい…
なので、聴いた人が少し頭のメロディから離れてもらうようイントロに工夫してみました。
さらに探求していく内にとある曲を見つけたのです。
それは、スコットランドのフォークソングとして派生したもうひとつのメロディを持つオールド・ラング・ザインでした。
スコットランドのミュージシャン、メイリー・キャンベルの歌うオールド・ラング・ザインのメロディは、どことなく懐かしく、かつ新鮮な感覚で我々の耳に入ってきます。
アメリカのドラマ「セックス・アンド・ザ・シティ」の友人や恋人同士の仲を確かめ合うシーンで流れクローズアップされた曲のようですが、本場スコットランドでは割とメジャーのようですね。
そして、我々のこの曲に賭ける情熱はこれだけに留まらず、このアレンジで歌っていただくのにゲストボーカルをお願いしたのでした。
それが、小島麻由美さんです。
私が以前やっていた「Cave Gaze Wagon」というバンドで、小島さんの「二十歳の恋」というセカンドアルバムにバックの演奏で参加したことがあったのですが、去年20年ぶりにそのアルバムをライブで再現するというイベントを観に行って、超久しぶりにお会いした時に冗談交じりで何気なく言ったのを快諾していただいて、ホントに実現するとは夢にも思ってませんでしたが、言ってみるもんですね…
小島さんと打ち合わせしてて、かしこまっている私です。
小島さんは、ジャズやフレンチ・ポップスを昭和歌謡やブルースと融合させて、独自の音楽スタイルを築いて、和洋折衷な感覚はもちろん、2ビートとダウンビートの複合というかもともとラグタイムな曲調をルーツに持っている方なので、我々のアレンジにもスッと馴染んでいただけたようです。というか、めっちゃ小島麻由美してて、どっちかいうと我々が小島さんのプロジェクトに参加したような感じでした。
そして、プレイヤーの女性陣たちもセックス・アンド・ザ・シティよろしくレコーディングにおいて活躍してらっしゃいましたね。
ちえみさんのアイリッシュリールとえりこさんの映画音楽のようなバリトンのフレーズとゆと嬢のお囃子が蛍の光上で見事に融合し、男性陣がそれを支えるような演奏をしてて、外国ってなんか男が女に優しいとされてけど、実は日本ほど男性が女性に寛容な国はないんだよな~とか、専業主婦がよくないみたいな風潮に今あるけど、専業主婦ほど立派な仕事はないよな~とか、なぜか色々考えてしまいました。
女性陣お三方のレコーディングの様子
小島さんの歌や、みなさんの演奏をぜひ実際に聴いてたしかめてください。