2017/05/30 15:03

「日本の織宝」と謳われる、

宮内庁御用達の西陣織元「龍村美術織物」の烏丸工場をご紹介します。 


龍村さんは明治時代に創業、初代平蔵氏は、芥川龍之介に「天才」と称された人物です。

 

正倉院や法隆寺などの古代裂を徹底的に研究し、その復元に生涯を費やしました。

その功績から、国会議事堂な迎賓館などの内装のご用命や、

皇室の納采の儀などに用いられる絹織物のご用命、

儀仗馬車(ケネディー駐日大使の赴任の際、乗車した馬車)の内装など、

国の大きな節目の催しの際には、必ず名前が登場し、

数年前のブータン国王夫妻来日の際にも見学されるなど、国賓のご見学も多数行われてきました。 


さらには、日本の古代裂などの復元だけにとどまらず、

外国の文様を積極的に織の文様に取り入れて、

「世界の美」を織り上げる、まさに日本一の織元です。

 

特別の許可を頂いて、見学させていただきました。


さて、一口に帯といっても、様々な工程があります。

まずは、糸作りです。


絹糸は、糸に撚りをかけることで、性質が変わります。

「回転」をかける、「撚糸」という作業です。

 

この糸の好みは、織元によって様々ですが、

龍村さんには、龍村の「好み」があり、

作ろうとする帯によっても、撚糸を変えます。


西陣織は、緯糸(よこいと)に工夫することで、それまでになかった「紋織」を織り上げ

普段私たちが目にする豪華な帯は、

様々な色の糸や、金糸・銀糸・箔などを使って織り上げます。


この際に、帯の柄をどうやって織るのか。

その答えが、次の写真の「紋紙」です。

 

何だか、不思議なものですよね。

昔のコンピューターの設計図?

もしくは、オルゴールの曲譜のような。

 

まさに、それらと原理は同じです。

この穴が「開いている」「開いていない」とうことが

即ち「オン」と「オフ」、「0」と「1」です。

言い換えれば、「目に見えるデジタルデータ」です。

 

作りたい織物のデザインを、このデジタルデータに置き換えた状態。

それが、「紋紙」ということになります。

 

では、この紋紙で何がおこなわれるのでしょうか?

その答えが次の写真です。

 


なんだか、不思議で、面倒くさそうな写真ですよね。

これが、綜絖(そうこう)というもので、

 

上から吊られている黄色いものは、

機の経糸に一本一本つながってます。

 

紋紙の「ゼロ(穴なし)」だと引っ張られず、

「イチ(穴あり)」だと引っ張られて経糸があがる

そういう仕組みです。 


この経糸を「上げる」「上げない」を紋紙が、

機の上で指示を出し、一織り毎に、紋紙が一枚一枚おくられる度に、

経糸が上がったり下がったりするわけです。

 

さて、ここから、織り上げるところを見てみましょう。

 

先ほどの「紋紙」の指示で上った「経糸(たていと)」の間に、

織上がりの具体的な色のついた「下絵(紋図)」を見ながら、

様々な種類の色糸を「織り手」さんが「杼(糸が巻き付いた道具)」を、

横に滑らせたりしながら、実際に織り上げていきます。

 

でもよく見てください。


織り手さんが見ているのは、帯の「裏側」です。

要するに、どんな風に織れているのかは、

下に引いた「鏡」越しに見ているというわけです。

帯の長さは、5~6メートル。


「カチャン」という一回の打ち込みも、

力加減を相当正確にしなければ、

帯の長さが大きく変わってしまいます。

 

強すぎても、弱すぎてもいけないわけです。

 

それからもう一つ!

ここが大事です。

次の写真を見て下さい。

 


これが、機に掛かっている「経糸」です。

経糸の「張力」は「おもり」をつかって調節していますが

 

織り進むにしたがって、残りの経糸の長さは短くなります。

ですから、「張力」を変化させないと、経糸の強さが変わってしまうんです。


織り手さんは、柄の織り具合が確かなのか?

ちゃんと織れているか?

打ち込みは平均的になっているか?

経糸の張力は大丈夫か?


などなど、いろんなことを考えながら

しかも黙々と織り上げているわけです。

 

まさに、アンビリーバブル!!!!

 

さて、今回の龍村訪問でうれしかったことがあります。

それは、若い職人さんが数多くいらっしゃったこと。

そして、自分の仕事に誇りをもって、

熱心に説明をしてくれていたことです。

 

本当に工場に活気がみなぎっていましたし、

話には惹きこまれました。

 

帯は、織り上げるまでに「試織」といって

試しに織ることを繰り返し


打ち込み、織上がりの風合い、配色、などをチェックします。

十分に納得してから、本格的な織に掛かります。

 

これだけ、手間暇かけて作られるもの。

ごく限られた本物が、ある程度お値段がするのも、

納得できます。


そして、最後に感動が待っています。

それが、「大返し」です。

 

龍村の帯は「本袋」という特殊な技法でありあげられているので、

表地と裏地を同時に織っています。 


なので、内側に織りあがった、文様は、最後の最後に、

「くるくる、するするる~~」と裏返しにしないと、

全く見えない状態です。


その瞬間、感動がこみ上げます。


それにしても、最後まで「ドキドキ」でしょうね。


さらには、ルーペを使った「検品」「整理」。

こういった工程を経て、帯が出来上がります。

本当に頭が下がります。

 

この龍村さんには、最初に、

「ブラジル」「リトアニア」

の帯を織り上げていただきました!

見事な仕上がりに、心から感動しました。

 

「リトアニア共和国」

 

リトアニア共和国の帯は、シンメトリーの美しさを大切にしながら、

国花であるヘンルーダの花を「ブローチ」のように表現しています。

キリスト教の十字架を意識しながら、宝飾のような文様に仕上がりました。

 

「ブラジル連邦共和国」

ブラジルの天才建築家オスカー・ニーマイヤーによって設計されたブラジリア大聖堂を表現しています。
色彩の重なるボカシの部分など、何度もの試し織りの末に満足のいく文 様に織りあがりました。更に、銀の箔と金糸を交互に織り上げながら、金糸の織り入れる間隔を徐々に変化させることで、金色から銀色へのグラデーションを創意し、光の当たる角度や見る角度によって輝きが変化する工夫も施されています。

  

現在、挑戦中のクラウドファンディングでは、

なんと、この龍村美術織物さんの、

イマジンオリジナルの織物で作られたアイテムもご用意しています!

この機会に、皆さんのご支援で、世界の着物の制作を通して、

こうした技術、日本の宝を残していければ幸せです。

 

日本の超一流が集うKIMONOプロジェクト。

「イマジン・ワンワールド」


現在制作中の着物と帯、もお楽しみに!

そして今後の投稿にも、ご期待ください。