2017/07/07 14:46

■美しい南コーカサス地方

西アジアの北端、南コーカサス地方に位置するジョージア(旧グルジア)は、 北側にロシア、南側にトルコ、アルメニア、アゼルバイジャンと隣接しています。 古来より多くの民族が行きかう交通の要衝として、 多民族による支配にもさらされてきたましたが、 キリスト教の信仰を含む伝統文化を大切に守り通してきました。

「風の谷のナウシカ」の衣装デザインの元ともいわれる民族衣装も有名で、 古代語の一つとされる「グルジア語」では「サカルトヴェロ」が国名です。

 


■天空の教会とワイン発祥の地

ジョージアには有数の世界遺産があり、 天空の教会などその風景の美しさと、ジョージアの人々の優しい人柄は多くの観光客を惹きつけている。

またワイン発祥の地としての歴史は古く、楊貴妃やクレオパトラやナポレオン、 英国首相チャーチルがこよなく愛したとされている。

そんなワインは、ジョージアの人々にとっては欠かせないものであり、 同時にワインに必要なブドウの生産はこの国を代表するものです。

 


■葡萄そして聖人ニノそしてピロスマニ

作者の中来田氏と山下氏は、それぞれに独自の型絵ローケチ染作家として活動をしていますが、 絵画的な表現が得意な中来田氏と小紋調のデザインが得意な山下氏が力を合わせて、 今回は工房真朱としてKIMONOと帯の両方を製作することになりました。

ジョージアのモチーフは、この国の産業に欠かせないワインの「葡萄」、 そしてキリスト教をジョージアに伝えたとされる「聖人ニノ」、 さらにピカソに「彼にはかなわない」と言わしめた 天才画家「ピロスマニ」の有名な恋物語から連想し、 「百万本の薔薇」という歌から「薔薇の花」を取り入れました。

さらに、美しいコーカサス山脈と空に浮かぶ月を描くことに行きつきました。

帯には、ワインの甕のデザインを取り入れて、 その特徴的な形を巧みに小紋文様を構成しました。

 


■丸いものは四角に彫る

ローケチ型絵染は、彫刻刀を用いて型紙を彫るところが特徴ですが、 ロウを用いた防染の行うところから「丸いものは四角に彫れ」という格言が存在します。

このことは、一見不思議に感じますが、実際に型紙を用い、ロウ伏せを行って染色すると、 ロウと染料のせめぎあいによって角張った輪郭のほうがより丸く染めあがるといいます、 型絵ローケチ染ならではの経験値から生まれた技術です。

今回の作品には大きく分けて三つの型紙が用意され、 一つは背景に用いたコーカサス山脈と聖人ニノ、そして一つが葡萄、 最後が薔薇です。 これらを絵画を描くようなタッチで彫刻調で掘り出す中来田氏の才能は特筆すべきもので、その結果筆致では得られない柔らかいラインが生まれています。

また、小紋調を得意とする山下氏が掘り出したワインの甕の文様は、 愛らしくキャッチーな存在として帯にアクセントをつけています。

 


■二人で、一人

中来田氏と山下氏はとても明るい性格の持ち主で、常に二人そろって工房で仕事をしています。

一言でいうならお喋りな二人は、お互いの才能を讃えつつ、 またお互いの作品を批評しあう双子の様な存在です。

そんな、お互いを認め合う二人だからこそ、中来田氏を中心としたKIMONOにも、 山下氏の細かい型紙が聖人ニノのフードの中を飾り、 山下氏を中心とした帯の中にも、中来田氏の葡萄の文様を取り入れ、 まさに工房としてのトータルな作品に仕上がっています。

型絵ローケチ染ならではの染め上がりの美しさに、 またその独創的な構図にKIMONOの新しい表現を感じるとれる作品です。