2020/04/24 23:49

今は亡き父との思い出「手作りボーカル・ブース」(無駄に長いです)

スタジオの東側の壁のちょうど中央部、ドリンクコーナーの向こう側にでんっと鎮座している木でできたほったて小屋みたいなものがあるんですけど、実はこれレコーディング用のボーカル・ブースです。

僕はもともと水道屋をやってたし、父はタイル施工の職人でしたので昔からなんでもかんでも手作りするのが好きでした。

スタジオをオープンしてから壁紙や床も自分たちでやったし、簡単なステージなんかも作ったりしてたので、いろいろ木材などが余って場所を占領していました。邪魔だから捨てようかなと思ってましたが、その頃にネットで手作りの防音室をDIYで作ってるお兄ちゃんのブログを見つけて楽しんで購読していたので、この廃材使って自分でもやってみようかなって気になりました。

ちょうどその時に実家の母親から電話があり、なんかめっちゃ興奮してるので「どうしたん?」って聞くと、「もうあかん!我慢の限界や!お父さんと別れる!!」とのこと。

うちの父は前述通り、タイル職人でした。中学を卒業して集団就職で四国から16歳で大阪に出てきてタイル職人になりました。70年代の日本は造船が花形産業でしたので、父も造船専門のタイル技工士として大活躍したそうです。(ちなみに九州と大阪を結ぶ「さんふらわー」というフェリーのタイルはすべて親父の仕事です。)

とにかく仕事が大好きで休むのが嫌いな父でしたから、70を超えても現役として造船所で働いていました。船のタイルは特殊な技術がいるのでもう後継者がいないんだそうです。(ちなみに僕は無理でした。狭いところに身体を突っ込んでタイルを貼る場面が多く、僕はでかすぎてまったくダメでした。)

でも平成に入るとほとんどの船はお風呂もトイレもユニット式のものが多くなり、手間がかかるうえに重量も増えてしまうタイル施工式のものは流行らなくなってきました。なので父も家にいることの方が多くなるのですが、なんせ仕事が好きなので家にいる父はやたら機嫌が悪く家族にわけのわからんイチャモンを付けることが多かったようです。(父の名誉のために言うと決して悪い人ではなく、家族のために朝早くから夜遅くまで一生懸命働く姿はいまでも尊敬しています。)

そんな感じで毎日母のやることに小言が続いたようで、ついにオカンはブチ切れました。

70歳越えてから別れられたら、住むところとかいろいろ探したりせなあかんし「これは超めんどくさい事になる!」と思ったので、このブースの製作に親父を呼ぶことにしました。

本当は3日くらいでやる予定だったけど、オカンが落ち着くまでという別の事情が加わったので結局2週間くらいほぼ毎日朝から晩までかけてこのほったて小屋を作ったわけです。

この2週間で母は好きなところに毎日好きな時間に買い物に出かけたりして、ストレスはほぼ解消され、離婚危機はなんとか無事に収まったようです。笑

アメリカの伝説のラグタイム・ギタリスト「ダコタさん」のライブに来た父との写真

そんな父との思い出がつまったブースですが、父はおととし他界しましたのでいまは形見です。

今回のご支援がなければ豊中スタジオは閉鎖していました。そうなればこのブースも当然バラバラに解体して捨てることになっていたと思います。これが残せたことは本当に僕にとって大きなことです。あらためてありがとうございます。


レコーディング付個人レッスン

ただ単にボイトレとか個人レッスンをしても、受講生の方が一生懸命歌って講師の僕がそれを聴いてアドバイスをするというのは、歌い終わった歌を思い出しながら「あそこはこうしたらいいんちゃう?」とか、歌い終った途端とはいえその歌はもう空気中に消えてしまった過去の声なわけです。

ボイトレや個人レッスンのスペシャリストの先生ならその辺はバッチリできるスキルをお持ちなんでしょうが、僕はあまり細かいことを覚えるのが得意ではありません。それに受講される方の2/3は女性ですが、僕の声はお手本を見せてあげるには程遠すぎて参考にならないと思います。

そこで思いついたのがリアルタイムにレコーディングをして、課題が見つかる度に何度も録り直したり、部分ごとに録音したものをつなぎ合わせることによって「自分の声で作った今の自分の一番いいお手本」ができあがるということ。あくまでも他人である「先生」に歌ってもらうより、自分のベストテイクを毎日聴く方が絶対にひらめきもあるし、修正点も自分で気づけると思います。

サティマイ京都のありさちゃんの録音レッスン風景

趣味的レコーディング

レッスンとレッスンの合間などに、大好きなアーティストの曲をオリジナル・アレンジしたオケを作って最後に歌を録音します。ピアノなんかは難しくて弾けないやつなんかはゆっくり片手ずつ弾いてたりします。

本職のバンドマンの方に頼めばいいんですけど、あくまで趣味なんで気楽に自分でやってます。

BEE 芦原 ・・・ FURTHER ON UP THE ROAD / JOHNNY CASH

これは一昨年に脳梗塞をやって、まだ顔の左半分に少しマヒが残ってる頃にリハビリがてらに録音したもの。声帯のど真ん中の感覚が今もないのですが、この頃はまだ声を張ることができなかった時でした。でも悲観的にはなってなくて、出ないんだったら出る曲を歌えばいいやって思ってJOHNNY CASHの往年の名曲を力を抜いて練習してました。

BEE 芦原 ・・・ SMALL TOWN / JOHN MELLENCAMP

リハビリ・レコーディング4作目。大好きなジョン・メレンキャンプの名曲です。だいぶ大きな声で歌えるようになってます。幸い両手ともに麻痺はないので唯一得意な楽器、マンドリンは自分でも「ええ感じやん」って思える出来です。

芦原紀子 ・・・ RIGHT TO BE WRONG / JOSH STONE


うちの奥さんの初レコーディング。ジョシュ・ストーンのかっこいい曲です。この曲はカラオケは市販のやつですけどバック・コーラスはノリさんの多重録音です。なかなか上手くてびっくりでした。

こんな感じで誰もが気楽にレコーディングができる環境を作りました。どうしてもバンドマンに演奏してもらって、スタジオ押さえて、オペレーターさん付けてみたいなのって大そうになるしお金もかかるしね。

音楽はプロだけのものではない!それが僕の大切にしてるスタンスです。これからも「なんちゃってミュージシャン」の味方です!