車両の取得、一部解体
東京は墨田区の駐車場に、その後キャラバンカーになる車両が停まっていました。
隅田expoなどでオーガナイズをこなす 後藤大輝 氏が所有するキャンピングカーで、独特のDIY感のある車両は、一目でキャラバンカーに変化するイメージを湧かせました。
キャンピングカーを譲り受けてすぐ尼崎へ移動し、知り合いのツテで不動産屋が所有する土地をしばらく使わせてもらい、後部の解体をスタートしました。勧進仏像を積むために、少なくとも1立米のスペースが必要だったため、もともとあった後部の壁を取り壊しました。
その段階で最後尾の扉を開けると、運転席付近まで見渡せる大空間が広がりました。
内部の改造
その後、作業場を鳥取に移動し、本格的に設置作業を始めました。
最初は、広がった空間に再度新たな壁を作っていきました。
後部扉からおよそ1メートルのところにキャンピングカーに入るためのドアが設置してあるので、そのドアに干渉しないギリギリの位置で壁を設営しました。壁の立て付けは、一般の住宅や店舗のリフォームと同じく木材で囲いを作り、板を張っていく様な作業で進めていきました。
壁を建て終え、後部スペースの下地作業を終えると、「勧進仏像」が鎮座する空間がどのくらいの広さなのかはっきりと分かります。その空間を見た上で、どのような意匠を施せば良いのかを具体的にイメージします。
キャラバンカーの後部意匠は、何となく正方形の格子で全面を覆う様なものにしようと考えていましたが、大事なのはその正方形の1マスの大きさです。
大きすぎても、小さすぎてもバランスが悪くなります。何より、格子と下地の間に何らかの平面作品を挟み込もうと考えていたので、その作品が見えすぎず、隠しすぎないバランスがどの程度のマス目なのかをしばらく考えました。
(見えすぎず、というのは、あくまで仏像がメインの空間なので壁が主張し過ぎないようにするという意味です)
なんやかんやと考えて、結論は90ミリの正方形と決めました。
仏像を迎えるデザイン
意匠のサイズ感が決まると、実際に格子の刻みに入ります。材料を購入し、木材に線を描き、線に沿って手鋸で必要な深さまで切り込みを入れます。
その作業をひたすらこなします。同じ作業を延々繰り返すのはとんでもなく苦痛ですが、あと10箇所で休憩とか、あと20箇所で昼メシとか、とりあえず手前に目標を定めて何とか乗り切りました。夏の盛りにポカリスエットをしこたま消費しながらノコギリを引く作業を、僕は生涯の思い出トップ100にランクインさせるほど苦痛と達成感を味わいました。
ノコギリで刻んだ部分にノミを充て、金槌でコツンと弾くと、綺麗にコの字型が現れます。このノミ作業も単純作業ですが、弾く爽快感と目に見える進んだ感が得られるので苦痛ではありません。
そうやって、何百個かの刻みをどうにか完成させました。
完成した格子に枠をはめ、車両の方にも枠をはめ込む下地を作ります。
車両の下地が完成すると、枠中に水引の作品を貼り付けていきます。右、左、奥、天井に貼り終えるといよいよ格子をはめ込みます。
たった一人の儀式でしたが、おごそかに、はめ込みをこなし作業を終えました。
仏像を迎える準備がようやく整った瞬間です。
前田真治