「帰宅難民」、「ネットカフェ難民」など、難民という用語は、他の用語とともにカジュアルに使われ、日常においてもよく耳にすることもある用語ですが、皆さん、本当の意味はご存知でしょうか?
本来的な意味での「難民」の定義は多義的で、「政治的な迫害のほか、武力紛争や人権侵害などを逃れるために国境を越えて他国に庇護を求めた人々」と広く解する見解もある一方、法的には狭く解されており、やや複雑ですが、難民の地位に関する1951年条約(いわゆる難民条約)に規定されている以下の四つの要件を充足する人をいいます。
日本の国内法である入管法でも、下記の難民条約の定義が引用をされています
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①人種、宗教、国籍若しくは特定の社会的集団の構成員であること又は政治的意見を理由に
②迫害を受けるおそれがあるという十分な理由のある恐怖を有するために
③国籍国の外にいる者であって
④その国籍国の保護を受けることができないもの又はそのような恐怖を有するために国籍国の保護を受けることを望まないもの及びこれらの事件の結果として常居所を有していた国の外にいる無国籍者であって、当該常居所を有していた国に帰ることができないもの又はそのような恐怖を有するために当該常居所を有してた国に帰ることを望まないもの
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上記の難民の要件でよく問題となるのが、「迫害」の意味です。
迫害という用語は、国語辞典を引くと、「弱い立場の者などを追い詰めて、苦しめること」などの意味が出てきます。
しかし、日本の入管実務・裁判例上、上記の難民条約の文脈では、「通常人において受任し得ない苦痛をもたらす攻撃ないしは圧迫であって、生命又は身体の自由の侵害又は抑圧を意味する」とされており、「生命又は身体の自由の侵害又は抑圧」が要求されている点で、一般的な日本語の語感よりも、かなり狭く解されています。
また「迫害を受けるおそれがあるという十分な理由のある恐怖を有する」という点も、日本の入管実務・裁判例上、主観的に恐怖を抱いているだけではなく、「通常人が当該人の立場に置かれた場合にも迫害の恐怖を抱く」という客観的な事情が必要とされています。
具体的には、出身国の政府がその人を迫害の対象としていることが明らかになる個別的で具体的な客観的事情があることを要するとされています。
他方で、本国で旅券を取得していたり、合法的に出国できた場合や、日本の上陸した後で、難民認定をするまでに長期間が経過していたりすると、そのような事情がないとして、難民該当性が否定されてしまうこともあります。
上記の厳しい要件に加えて、日本の裁判例上、難民であることの要件は、難民認定をしようとする者が立証しなければならず、その程度は、合理的に疑いを容れない程度の証明をしなければならないとされており、難民認定がされることのハードルは非常に高いと言わざるを得ない状況にあります。
(出典:http://www.immi-moj.go.jp/tetuduki/nanmin/nanmin_flow.html)
日本において難民認定を受けるための手続ですが、まずは地方入国管理局等に対して陳述書やその他個別事情を記載した書面を提出することによって行われ、難民調査官による事情聴取を経て、法務大臣が処分を決定します。
ここで難民認定されると難民認定証明書が交付されます。
他方で難民認定されない場合で、異議がある場合には、法務大臣に対する審査請求を行うことができ、難民審査参与員の法務大臣への意見の提出を経て、法務大臣が決定を行います。
ここでも難民認定されると難民認定証明書が交付されます。
以上のような手続を経て、最終的に日本で難民として認められる人の数が非常に少ないことについては、次回にお話をしたいと思います。