作品への想いを、トップ画面に追加しました
これまでに数回、プロジェクトの内容をお話させていただく機会がありました。その会話の中でご質問いただいたことを、作品への想いとして、まとめました。ご一読いただけると幸いです
*** 作品への想い ***
1.本で問う「多様性の価値」
日本の学校や会社・社会は今「競う」ことが多いように感じます。もちろん競うことは、緊張感や発展をもたらしてくれますが、同時に「本人がそこへ向かう意思」がない場合、マイナスに働きます。マイナスになると、次第に辛い気持ちの方が増えていくのではないでしょうか。
どんな人もそこで自信や生きがいをなくしては、もったいないと思います。人はそれぞれ指紋が異なります。それを考えると、一つの物事に対しての向き不向きがあるのではないでしょうか。一つの所で不向きでも、必ず他の道があるはずです。中退や挫折を負けと考えず、新しい可能性へのスタートとして捉える。それが社会を多様に、豊かにしていくのではないでしょうか。
自然は、多様性の価値を教えてくれています。マングローブもその一つです。陸上の植物は「塩害」という言葉が存在するほど、塩分には弱いです。しかし、マングローブは塩水の混ざる河口域に生息しています。陸上の植物たちの生存競争に負けた結果だという説もありますが、専門家に伺うと「河口域に適応できる特性を備えていたと言える」と話していました。その特性をいかし、環境変化の激しい河口域に踏み出し、塩分排出の機能(※黄色い葉)をもつことで、カニや渡り鳥が来るような豊富な環境を作り出しています。
成績が悪くても、挫折しても、不自由でも、年を重ねても、別の視点でみると価値を生みだせる。それをこの物語で表現したいです。
2.人魚伝説のその後を描く
人魚伝説は東洋、西洋に存在し、ほとんどが悲劇となっています。アンデルセンの「人魚姫」も最後は泡となって終わっています。その悲劇と呼ばれるストーリーを、人魚本人がどう感じていたかを描きたい。ここは、「多様性の価値」・「価値観の違い」につながります。
自分の声と引き換えに足を得て陸にあがったけれど、王子と結ばれなかった。このままでは人魚の命がなくなることを家族が心配し、代わりに王子の命を奪う提案をしたけれど、結局人魚は約束通り自分の命をなげ、泡となりました。家族は悲しんだけれど、王子が幸せを手に入れたことは、人魚にとって「これでよかった」と思えることではないかと感じています。
相手の幸せを大切な価値として捉え、意思を貫き通した人魚が泡となった後、自然に存在するいくつもの多様性(生き方や考え)を認めている、そんな設定にしたいと考えています。