2018/12/28 17:45

 

プラモ尼崎城城主から、「もっと射出成型に特化した記事を書け」と命令が出ました(注:出したのはリクエストです/綱)。そういうわけで、さらにご婦人が遠ざかる投稿をします。それでは、以下山八化成工業所工場長日記5「射出成型機の型締力」と題してお送りします。

射出成型機のサイズを表すのに「型締圧 何トン」と表記します。自動車に例えると、排気量何㏄みたいなイメージで考えればいいです。当然、トン数が大きくなると、機械のサイズ、そして作れる成型品の重量も大きくなります。(成型業界では、成形品のサイズを重量で区分することが多いです)

そこで、各成型品のサイズに合った射出成型機の選択ですが、これも実際のところ、金型のサイズで決定しがちです。でも、きちんとした計算方法があるので、今日はそのあたりを説明していきます。

上の図をみてください。(手描きですみません)10センチ角の正方形の板状の成形品を作りたいとします(オレンジ枠内)。型締圧は、成形品の投影面積(x‐y表示)つまり、正面からみた平面形状で決定され、ここでz軸(厚み)は無視します。そして、その計算式は1平方センチメートル(1センチ角・ピンク色部分)あたりに、何キロで金型が開こうとするかを数値(@)で決定して計算します。

それでは、具体的に計算していきます。10センチ角(100平方センチメートル)には、1センチ角のマス目が100個あるので、100×@となります。数値(@)は使用樹脂によって変わってきます。ここで、通常プラモデルに使用されるPS(ポリスチレン)樹脂だと@=400キログラム。

ここで、おさらいをします。今日の説明で一番重要な部分です。PS樹脂を成型するとき、その成形品の投影面積の1センチ角に対して、400キログラムほどの力で金型が開こうとします。

なので、10センチ角の成形品は
100×400キログラム=40,000キログラム(40トン)

40トン以上の型締力のある射出成型機が必要となります。参考までに、もし同じ形状の成形品を他の樹脂で成型したら?PC(ポリカーボネート)だと@=600キログラムなので、

100×600=60,000キログラム(60トン)
同じ形状でも、使用樹脂が変わるとこれだけ型締圧が変わってきます。
余談ですが、最初の企画で設定した樹脂から、試作を行っていくうちに他の樹脂に変更することがあります。その時、型締圧が上限ぎりぎりの射出成型機を選択していた場合、@の数値がより大きい樹脂に変わると、成形品はあっけなく型開きしてバリだらけ(鯛焼き状)になり、ワンランク上の射出成型機に変更を余儀なくされるケースもあります。

その際、ほとんどの場合、発注先は最初の見積もりを見直ししようとはしません。末端の製造現場はこんなものです。日本中で、これに似たケースで実質値引きの仕事を泣き泣き請け負っているのが現実です。今更ながら、困ったものですね。
(宮本景根)