左義長(どんど焼き)についてある地域でとことん調べたことを本にします!
▲左義長の残り火で餅を焼く様子
● 滋賀県栗東市の全域で今も続く左義長のことを本にする。
滋賀県に栗東市という人口7万人弱の都市があります。滋賀県ですが琵琶湖には面しておらず中央競馬の馬が所属する「JRAトレセン」がある馬のまちとして有名です。栗東市には昔から東海道が通り、現在も国道1号線・8号線や名神インターがある交通の要衝です。歴史ある街道のまちでもありながら、人口は増え続けています。15歳未満の人口割合は全国1,700以上ある自治体の中で15番目に高い18.4%でした(2015年国勢調査)。
歴史あるこのまちでは、多くの地区でお正月の半ばに左義長を実施しています。左義長は正月飾りや書き初めを燃やす行事で「どんど」などいろいろな呼び方があります。滋賀県で左義長といえば近江八幡市で3月に行われる「左義長まつり」が特に有名です。栗東市の左義長は、それとは違い、観光客が来たり、大きな山車が用意されたりすることはない小規模なものです。
今回、プロジェクトの実施責任者(笠井賢紀・龍谷大学准教授)は栗東市役所と協力し、市域全体で左義長についての調査を行いました。その成果を一冊の本にまとめ、全国各地で左義長に携わっている皆さんにご自身の地域との共通点や違いを見つけて参考にしながら楽しく読んでいただきたいと思っています。
● 【どこでもやっている+ずっとやっている】。でも記録が少ない左義長を一冊の本に。
左義長は古くは徒然草にも登場します。日本の民俗学を始めた柳田国男も左義長について数多く言及しています。しかし、残念なことにその正確な起源や正統性のある方法は確定できません。古くから続く左義長は今でも全国各地で見られる民俗ですが、これに関して一冊のまとまった本が出ることはこれまでありませんでした。また、左義長について紹介される場合にも、全国規模で有名ないくつかの地域のものに限られていることがほとんどです。
▲雪が降りしきる中で左義長を行う様子
多くの場合、左義長は長い竹を組んで正月飾りなどを入れて焚きあげる大規模なものです。実施責任者のそもそもの疑問は「なぜこのようにたいへんな行事が今も続いているのだろうか」ということでした。全国各地で古くから行われながらも、まとまった記録がない左義長について、「正しい左義長」や「左義長の由来・起源」ではなく、現代の左義長をしっかり調べたいと考えました。
左義長を行えるような広い土地が減っていたり、こうした民俗行事への理解が失われていったり、あるいは皆が集まれる日がなくなったり…。実は、左義長は急激な変化にさらされ、地域によっては失われ始めています。こうした現状に危機感を覚え、地域社会論を専門とする研究者が実施責任者となり、一つの市域全体での民俗調査を行うことにしました。
このプロジェクトは書籍『栗東市の左義長』(仮)に調査と考察の成果をまとめ、地元・滋賀の出版社(サンライズ出版)からシリーズ「別冊 淡海文庫」の一冊として刊行しようというものです。
● 調査は栗東市と龍谷大学との連携事業。出版に向けて30年前の調査との連携も!
書籍『栗東市の左義長』(仮)の基になった調査は3種類あります。
(1) 栗東町(当時)が町史編纂のために行った民俗調査(昭和末期)
(2) 左義長にまつわる思い出を聞いた人生史調査(2017年度)
(3) 市域の全123自治会を対象に行ったアンケート調査(2018年度)
このうち、(2)と(3)については地域社会論と社会調査を専門とする実施責任者自らが行いました。それぞれの調査が日本生活学会という学会の「生活学プロジェクト」として採択され実施されました。各種の学会や研究会で調査が進むたびに報告し、研究者からのご助言・ご批判を受けながらまとめる作業を続けてきました。
▲ご自宅にうかがい人生史調査を行っている様子
メインの調査である(3)のアンケート調査は、栗東市と龍谷大学とが締結している包括連携協定に基づき、公式な連携事業として取り組みました。栗東市は栗東歴史民俗博物館、龍谷大学および全体の統括は実施責任者が担当しています。このアンケートを作成するために(1)、(2)の調査を最大限活用しました。
それぞれの調査についてもう少し詳しく書いておきましょう。
(1)の昭和末期の民俗調査は、栗東町史を作るために行われたものです。今回のプロジェクトでは完成品の町史ではなく、基になった調査原票を全地区分閲覧しました。そして、左義長に関するあらゆる記述を抽出し整理しています。
(2)の生活史調査は、一人ひとりの人生と地域・社会の歴史との関係をみていくものです。今回のプロジェクトでは60歳以上の男性10組にお話をうかがいました。栗東市の左義長は子どもたちの行事でしたから、1960年代ころの左義長の様子が克明にわかりました。また、子どもたちにとって左義長とはどういう行事だったのかということが、思い出とともによみがえってきます。
(3)のアンケート調査は、栗東市の協力を得て市内の全123自治会にお願いしました。結果、こうした調査としては異例の6割近くから回答をいただきました(左義長の実施有無にかんしてのみのお答えは9割近い自治会からいただいています)。一つの民俗について市域全体に詳細な質問を行うアンケート調査はめずらしいもので、さらに高い回答率によって市域全体の民俗に関する共通点や相違点が浮き彫りになります。
● 支援金の使いみち
書籍『栗東市の左義長』(仮)は一般向けの書籍として刊行する予定です。そのため、できるだけわかりやすい書き方に努め、専門用語には注釈をつけています。左義長や民俗は同じ名前であっても地域差が大きいので、本書を手に取った皆さんは「自分の地域でも調べてみたい」と思うはずです。そうしたニーズに応えられるよう、調査の方法や結果も余すところなく掲載しています。
▲左義長に必要な藤蔓の地下茎を掘り起こす様子
刊行する書籍は次のようなものになる予定です(いずれの項目も変更の可能性があります)。
・書籍の名称:『栗東市の左義長』(仮) もう少し、皆さんの目にとまるような魅力的なタイトルを検討中です。
・編著者:笠井賢紀(龍谷大学准教授、「語りから未来を紡ぐ」代表)(本文のすべてを担当)
・著者:栗東歴史民俗博物館(解説を担当)、龍谷大学社会学部コミュニティマネジメント実習(コラムを担当)
・出版時期:2019年2月中旬から3月上旬
・出版社:サンライズ出版
・シリーズ:別冊 淡海文庫
・ページ数:B6判200ページ前後
・頒価:1,800円(税別)
一般書とはいえ、テーマが地味で対象地域も限られているため、現実的に考えて「飛ぶように売れる本」にはならないと思います。そこで、FAAVOしがを通じてこのプロジェクトを支援いただけると、出版社に安心感をもっていただけるだけではなく、支援者の皆さんと繋がりができるのではないかと思い、クラウドファンディングに挑戦することにしました。
皆さんからご支援いただいたお金は、次のように活用いたします。
(1) 調査協力者(栗東市内の全123自治会)への書籍献本費用
(2) リターンに掛かる費用(書籍の購入・送付、ポストカードの制作、講演・ワークショップ・共同調査の準備)
(3) 出版直前の左義長取材(写真撮影)に掛かる費用
(4) (残金がある場合のみ)【語りから未来を紡ぐ】の法人化および初年度事業の準備
実施責任者は「一人ひとりの人生の語りに基づくコミュニティづくり」を目指す団体【語りから未来を紡ぐ】の代表を務め、現在、法人化に向けて鋭意準備を進めています。この法人にかかわる(4)は残金がある場合のみとし、【語りから未来を紡ぐ】の事業のうち、滋賀県栗東市での活動に関わることにのみ利用することとします。具体的には本プロジェクトの続きとして「栗東市の伊勢講」を検討中です。いずれにせよ、このプロジェクトでご支援いただいたお金はすべて、関連事業に用いることをお約束します。
● 実行スケジュール
既に出版社とは企画が進んでおり、年度内(2019年3月まで)の出版見込みが立っています。具体的には、次のような予定で進めています(それぞれの予定が1カ月ほど後ろにずれる可能性もあります)。
2019年1月 校正
2019年2月 出版
2019年3月 書籍リターンの発送
2019年4月 出版記念シンポジウム@栗東市
2019年5月 報告書リターンの発送
講演、ワークショップ、共同調査を含むリターンを選択された場合は、2019年4月1日~2020年3月31日に実施できるよう支援者と調整させていただきます。
▲書籍の冒頭(サンプル)
● 書籍の内容(予定)
刊行予定の書籍について、もう少し詳しく内容をご紹介します。章構成は次の通りです。
・はじめに――本書の特徴と全国の読者へ向けて
・第1章 左義長ことはじめ
・第2章 昭和末期の民俗調査から
・第3章 2016年度の生活史調査から
・第4章 2017年度の質問紙調査から
・第5章 左義長と地域社会の変化
・おわりに
第5章の「左義長と地域社会の変化」では、この数十年の間に起きた社会や生活様式の変化に伴って、栗東市の左義長がどのように変化したかを説明します。その中で、おそらく全国各地で同じように抱えている「左義長などの民俗を今後も続けていけるのだろうか」という疑問に対して考察していきます。
● お問い合わせ先
実施責任者:笠井賢紀
◆実施責任者について
大学教員で地域社会論を専門にする研究者です。本プロジェクトのもとになった調査について、次のインタビュー記事でも取り上げられています。
日本生活学会の100人
最新の活動報告
もっと見る出版と返礼のご報告
2019/03/22 06:29しばらくレポートを書くまでの期間があいてしまいました。 さて、この間、下記の通り書籍が刊行されましたのでご報告します。 書名:栗東市の左義長からみる地域社会 著者:笠井賢紀 協力:栗東歴史民俗博物館、龍谷大学コミュニティマネジメント実習 出版社:サンライズ出版 出版日:2019年3月5日 価格:1,800円+税 初版部数:1,000部 また、既にレポートでご報告しているように、このプロジェクトは当初目標を達成してクラウドファンディングが成立しており、ご協力いただいた皆さまには住所不明者1名を除き、返礼品の送付を終えました。 (万一、ご支援者で適切な返礼品が未着の場合にはお手数でもご連絡ください) 返礼に掛かった費用も含め、本クラウドファンディングの決算を下にまとめて示します。 ※住所不明者1名分の支出も計上。 ※CF全体の「支出」のうち⑧の手数料はFAAVOに支払う、ファンド金額の2割(30,100円)と、プロジェクト応募者による代理振込の際の手数料(216円×2件)を計上。 3月13日には滋賀県庁にてプレス発表を行い、3月17日に中日新聞(滋賀県版)で紹介されました。 もっと見る
目標達成!
2019/02/18 00:55本プロジェクトの募集期間はさきほど2/17 23:59:59に終了しました。この間、多くの方にご協力いただき、無事に100.3%の金額で当初目標を達成することができました。支援して下さった皆さま、支援の輪を広げて下さった皆さまに心より感謝申し上げます。ありがとうございます。 画像に整理しましたが、今回、現金で直接いただいたものを代理振込した分も入っているので、少し複雑ですが、実質的な内訳は次の通りです。 コース 単価(円) 件数(件) 合計(円) A. 報告書データ 1,000 2 2,000 B. カードx1 1,000 1 1,000 C. 書籍、報告書、カード x1 2,500 43 107,500 D. 書籍、報告書、カード x2 5,000 4 20,000 Z. 上乗せ金額合計 31,000 合計 150,500 クラウドファンディングの中には(代理振込ではなく)募集者本人が支援をすることもあるようですが、今回はそのようなことはせずに、ちょうど目標額を達成することができました。 支援へのリターンの合計数は次の通りになる予定です。 件数 簡易報告書PDFデータ 2 左義長のポストカード5枚セット 52 書籍『栗東の左義長からみる地域社会』 51 少しでも早く支援者のお手元にリターンが届くよう、鋭意作業に努めます。 もっと見る
ポストカードのサンプルと進捗状況
2019/02/13 16:55リターンの多くに含まれている「ポストカード5種類」のうち1種類についてサンプルで作ってみました。写真は一枚をフチなしで配置し、宛名面には書名とシンプルな題名をつけています。実際にポストカードに使っていただくほか、机の上に飾っていただいてもきれいなものにしようと考えています。 さて、書籍の進捗状況ですが「三校」という段階まできました。三校の段階で新たに加わったのは各章のトビラにちょっとした炎のアイコンと、一枚ずつ左義長にかんする写真が入ることになりました。文字のタイトルだけよりずっとよくなりました。 三校で終わりになる予定ですので、その後はすぐに印刷に入り、出版社と直接取引のある書店には3月4日か5日には並びそうです。取次を通すところ、Amazonなどは3月8日ころからご購入いただける見込みです。 また「クラウドファンディングはうまくできないけど…」という皆さんから直接の寄付もいただいています。現在までに6件21,500円をちょうだいしました。そのうち、5件20,500円はすでに私が代理振込済みです。残る金額は最終日の段階であらためて代理振込させてもらいます。 もっと見る