2019/07/22 18:43

今回は、紙漉きの道具のことについて書きたいと思います。

 

少し前に間なりましたが、「全国手すき用具製作技術保存会」の方が、松江市八雲町にいらして、紙漉きの道具の作り方のお話を聞いたり、その技術を使ったワークショップに参加させて頂きました。

 

手漉き和紙というのは、紙漉き漉き職人だけでなく、

 

・道具をつくる人(紙漉きの特殊な道具を作ったり、直せる人)

・材料が育ち、紙の漉ける環境があること (自然の山があること、きれいな水が豊富に流れていること)

・出来上がった紙を使う人(産業として成り立つためには、買う人、使う人が必要)

このチームプレーで成り立っています。

 

今回は、道具を作るという役割で手すき和紙を支えてくださってる方との交流だったのですが。

この道具を作るということも、チームプレーでした。

 

 

竹ひごから作られた、“簀(す)”を一枚作るにも

 

 

・竹を育て、切り出す人

生えてきてから、3,4年たったものを収穫するのだそう。

1本の竹から2,3節しか使えない。

一節が50センチといわれましたので、結構一節が長い。

 

・竹を乾燥させ、竹ひごにするひと。

 

 

紙漉き用に竹ひごを全国で作れる人は、全国に2名だけ。

思ったよりずっと細い竹ひごは、1・5センチの中に何本入るかが単位。

紙の厚さによって、ひごの太さが違い、16本とか24本とかという単位で、注文に応じて、その1枚だけのために材料を揃えます。

これを太さをそろえて、何千本と作る。

 

 

このような道具を使って、ある程度細くした竹ひごを穴に通し細くする。

この竹ひごが、何回か穴を通すとすべべになって、すごく肌触りが良いんです。

 

・簀を編む糸を作る人

絹糸だそうです。

 

・竹ひごを継ぐ。

1本の竹ひごの長さは約50センチ。でも紙の大きさはもっと長さが必要なので、この細い、細い竹ひごを削って、同じ太さになるように継いであるのです。

もう、気の遠くなるような作業です。

 

・簀(す)を編む人

簀の良し悪しは、紙の質にもつながるので、出来上がっても少しでも浮いていたりしたら、全部ほどくそうです。

同じ力で、真っ直ぐ編むのは熟練の技でした。

糸が絡まないよう、適度な量を糸が送れるよう、後の作業がしやすいよう、しっかり結べてさっとほどける糸の結び方は、本当にすごいなと思いました。

 

 

これは、ワークショップでしおりを作っているところ。

これと同じやり方で、実際には紙の大きさに合わせた大きなものを作られます。

 

 そして、枠の部分を作る人もおられて。

木製ですが、紙漉きは水の中に浸った状態で使う道具なので、そりが出ないようにたくさんの工夫がされていました。

そこ使う金具や釘がやはり特殊で、特注品だそうです。

その金具を作ってくださる金物屋さん?鍛冶屋さんも技術者が本当に少ないのです。

 

 

簀を編む技術を使った、しおりづくりに参加させていただきました。

 

これ、一番太い竹ひごだそうです。

1・5㎝に16本入る太さ。

思っているより、細いです。

 

たくさんお話を聞いて、結び方一つ、どの過程も意味があって、効率よく、こだわりを持って作られていました。

ただただ、すごいってしか言葉が出なかった。

 

紙漉きの道具一式ができるまでに、たくさんの職人さんの、それぞれの技術が重なり合っています。

どの部分が欠けても、完成しない。

 

そして、昔は紙漉き屋さんがたくさんあって、各地域ごとに道具の職人さんがおられたようですが、段々少なくなり、全国で2人とかそんな工程もあるのが現状です。

 

 どの日本の伝統工芸についてもいえることかもしれないけど、伝統工芸自体の技術はもちろん、材料、道具、環境など、危機に瀕しているものはたくさんあると思う。

 

少しでも残していけるように、つなげていけるように、チームで動く、連携していくことの大切さを感じました。

職人さんの持っている知識、技術はすごくても、それは伝えないと伝わらない。

それは、出雲民芸紙も同じこと。

伝える人が居ないと、伝わらない。

 

私は、紙は漉かないけれど、出雲民芸紙から花を創ることで、新しい使い方の一つとして、その伝える、広めるアンバサダーの役割で、支えていきたいと思います。

  

道具の職人さんのこだわり、紙漉き職人さんのこだわり、歴史的な背景など、わかるとより愛着が沸くし、大切にできるし、感謝できる。

 

松江に生まれ、ここで育ち、ここが好き。

ここで漉かれている出雲民藝紙がとっても好き。

好きなものは誰かに、これ良いって伝えたい。

良いものって思うから、大事。

大事だから次の世代につなげていきたい。

ただ、それだけ。

 

1000年もつといわれている和紙を未来に残せるよう、決意も新たにこれからも進んでいきます。