街なかの生物多様性ドキュメンタリー
「三沢川いきものがたり」のものがたり Vol.02
ヘビを見たことがこの作品づくりにつながった。
“生物多様性”を考えるときには生態系が絡んできます。例の三角形で示される食物連鎖の図をあてはめると、三沢川ではどんな生き物がその頂点に君臨しているのでしょうか。
いわゆる里山ではキツネなどの小動物やオオタカ、チョウゲンボウといった猛禽類がトップに位置していますが、里地より身近な市街地を流れる三沢川では猛禽類は見かけません。猛禽類の下はヘビやカラスなどですが、三沢川にヘビなどいるのだろうか。
ところが見たのです、ある日ヘビを。ヘビが生息できるということは、それより下位の生物が豊富に存在するということ。「これは作品にできる」。そう思ったのでした。
ある年など、夏の日の取材で1日に4匹もの個体を撮影したことがありました。そのうちにヘビが出歩く日が読めるようになりました。お天気の日のお昼前後。春から真夏にかけて「今日は出るぞ」と予想していくと、何回かはその通りになりました。
けれども、編集の段階で壁に突き当たりました。
ヘビが苦手な人の存在です。周囲の女性何人かに伺ってみると、言下に「ヘビは嫌い」「ヘビが出るなら見たくない」というご意見。生態系上ヘビの存在はとても重要なのですが、そのために作品を観てもらえなかったらどうしよう、と数か月も編集を進められずに悩んだのでした。
救われたのは「ヘビが主役じゃないんでしょ」とのお声。これは、ヘビが出てもいいが、やたらに出てほしくない、ということと解釈させて頂きました。
そこでいいことを思いつきました。結果としてヘビが登場するシーンをすべてカットした「ライトバージョン」と、ヘビが登場するノーカットの「ヘヴィバージョン(ヘビだから)」の両方を編集しました。映写会の目的や観客層によって使い分けられるように。
けれどもその心配は杞憂に終わりました。試写会後の反応では、ほとんどの人が、「ヘビは重要ですね」「とても面白いです」「ヘビの出ない三沢川ドキュメンタリーなんて、…」と大変好意的に言って頂けたのでした。
ということで、試写会を含めて何回か上映会を催しましたが、「ライトバージョン」で上映したことはこれまで1度もありません。






