2018/10/05 09:16

「八王子食堂ネットワーク」では、基本年に1回、研修会「食品衛生と保険の話」を開いています。

子ども・地域食堂が中心ですが、食品に関わる活動をしているフードバンクも、時には食品提供も行っている無料塾等も参加しています。
昨日は10団体24名の参加で行いました。

 食品衛生について

始めに「食品衛生」について、八王子市保健所の稲葉さんから食中毒のお話を中心に講習を受けました。
食中毒をおこす主な原因
 細菌…黄色ブドウ球菌・カンピロバクター・腸管出血性大腸菌(O157)など
 ウィルス…ノロウィルスなど
発生件数が多いのはその年によって特徴があるそうですが、平成29年の都内の発生率は、
 1位 アニサキス・カンピロバクター(同率1位)
 3位 ノロウィルス
だそうです。
カンピロバクター…牛・豚・鶏などの腸内にいる細菌、生食、加熱不十分で食することで
         発症
         吐き気、腹痛、下えり、発熱、頭痛、倦怠感 ギラン・バレー症候群
サルモネラ属菌 …牛・豚・鶏の腸管内に生息、少量でも発症、レバ刺し、卵料理など
         卵は新鮮なものを購入、冷蔵保存、生食は期限内に、加熱は中心部
         まで、鶏肉、卵を扱った器具、手指はその都度必ず洗う
ノロウィルス  …500円玉の重さの菌で地球全人口を感染させられる!?
         少量のウィルスでも起きる、
         冬季を中心に通年、吐き気嘔吐下痢腹痛などの症状、
         それを介して2次感染も、体内に1ヵ月以上菌が残ることもある、
         健康保菌者(症状がでない保菌者)の存在
         85~90℃90秒間以上の加熱、手洗いの励行、塩素系漂白剤が有効
溶血性連鎖球菌 …子どもに多い疾患、咳やくしゃみで近くの人に感染、症状がない、
         食品に付着して感染、食品に菌をつけない、増やさない、
         発症中は調理しない、症状がなくなっても菌を保有している
アニサキス   …魚介類につく寄生虫、年々増えている、生食による感染
         加熱(60℃1分以上)、冷凍(-20℃24時間以上)、取り除く

食中毒予防の3原則
原則1:つけない   手洗いを十分に、包丁・まな板・布巾などの殺菌、
          調理手順の工夫、調理場内の整理整頓
原則2:ふやさない  速やかに調理して早めに食べる、冷却する
原則3:やっつける  食品の中心部までしっかり加熱、
          食器や調理器具、シンク、冷蔵庫などは熱湯や塩素系漂白剤で消毒

手洗い
 2度洗い、30秒間洗う
 シンクで洗うのは2次汚染の元

質疑応答で生野菜の管理などについて質問が出ました。
稲葉さんから食品の取り扱いについて下記のサイトを参考にしてくださいとアドバイスをいただきましたので、ご紹介します。
大量調理施設衛生管理マニュアル(厚生労働省)

保険について

2つ目は八王子市社会福祉協議会ボランティアセンターの武藤さんから保険のお話をしていただきました。
社会福祉協議会が扱っているのは東京都社会福祉協議会の保険。
ボランティア保険…スタッフが入る保険
         個人で入る、その年度内の事故に対応
行事保険…行事に対して主催者が責任賠償として入る
青…従来の行事保険
  対象者が特定される行事保険
  1週間前に名簿(名前、住所、電話番号)の用意が必要、提出の義務はない
  5名以上で対応
  会場までの往復にも対応
  前日までの振込
緑…当日参加型の行事保険
  子ども食堂・サロンなど、参加者の確定が当日じゃなきゃできない活動への対応
  として後からできた
  当日名前だけを書いてもらってもOK
  運用が楽
  5名以上で対応
  会場までの往復は対象外
  前日までの振込

青と緑は補償内容、金額等ほとんど変わらない
名簿を事前に用意できるか、できないかで判断

人数の確定はこれまでの経験値で見込み数で行うのが良い
払い込みは手数料もかかるので、数回分まとめて振り込んでもOK

東京都社会福祉協議会の保険をご紹介しているが、活動パターンによってはそぐわない場合もあるので、他の保険もご紹介することもできるので、ご相談ください。 

トレーサビリティについて

最後に私から「トレーサビリティ」についてちょっとだけお話をさせていただきました。

トレーサビリティとは日本語にすると「追跡可能性」、「物品の流通経路を生産段階から最終消費段階あるいは廃棄段階まで追跡が可能な状態」(Wikipediaより)です。
食品の場合は、「食品の移動を把握できること」(農林水産省)
ロット管理という言葉はよく聞かれると思うのですが、その原材料がどこから入って、どこで加工されて、どこへ出荷されたか一連の流れが明確になっていることです。
そうすることで、何か事故があった場合、遡ってどこでその原因があったのかを容易に探ることができます。
フードバンクの場合、このトレーサビリティが企業との関係で大きな問題となるのです。
企業とすれば、フードバンクなんて訳の分からない団体に食品を渡すことで、その行く先がわからなくなってしまうという不安があり、裏を返せば、フードバンクは食品の管理を入るところから、受け渡しまでを適正な管理をする必要があり、そうでなければ信頼されず、企業との関係は難しいということです。

子ども・地域食堂の場合、そこまで厳しいことを言われることはありませんが、活動が拡がることで、いろいろなところから食糧の支援を受けるようになってきています。
食品の管理については、各団体の事情に合わせてマニュアル化しておく必要があります。
例えば
①食品を受取時…品質の確認、消費期限、賞味期限、包装状態など
②保管、配送時の留意…冷凍・冷蔵品の取り扱い、保管場所の留意
③余った食材の管理方法…転売の禁止
④責任の所在の確認
⑤事故発生時の対応マニュアルの作成

⑥記録の保管…最低でも1ヵ月はメニューと使った食材の記録を残しておく
のようなことをスタッフで話し合い、共通の認識を持っていることが大切です。

参考文書
厚生労働省 平成 30 年 6 月 28 日付通知
「子ども食堂の活動に関する連携・協力の推進及び 子ども食堂の運営上留意すべき事項の周知について」
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/0000213463.pdf
農林水産省
「子供食堂と地域が連携して進める 食育活動事例集」
http://www.maff.go.jp/j/syokuiku/set00zentai.pdf