サード・プレイス創りへの挑戦を応援します
音楽家 黒田京子
サード・プレイス“第三の場”というものが、今の子どもたちには必要だ、と関谷さんから聞きました。なぜ?私はまずそう思いました。そして、次に、第三の場を、第三者が創らなければならない、教育現場、家庭環境を含めた、子どもたちが置かれている現実を知りたいと思い、関谷さんに直接尋ねました。今の中高生の現状認識から出発しないと話しは始まらないだろうと思ったからです。正直に告白すれば、自分の中でまだうまくイメージできていない部分もあります。実際に子どもたちの声を聴きたいとも思いました。
私はかつて横浜市港南区及び横浜市文化振興財団が主催したプロジェクト『子ども“ゆめ”ミュージカル 「ドリーム」~未来へのおくりもの~』に携わったことがあります。これは一般公募による子どもたち45名による創作ミュージカルで、当時私がかかわっていた劇団が脚本、演出、演技指導を行い、私は作曲・編曲及び音楽の指導、全体の音楽監督を務め、本番でも演奏しました。およそ半年間、毎週末に稽古を行い、最終的にはひまわりの郷ホール(横浜・上大岡/2004年3月)で公演を行いました。
いやあ、ぶっちゃけ、稽古、指導はとてもたいへんでした。子どもたちは小学校高学年から高校生まで、その年齢層は幅広く、その個性や適性も様々でした。役や楽器や歌の割り振りも不公平にならないように気を配りました。
でも、この仕事を引き受けてよかったと思ったのは、そして、私がもっとも感動し、かつ、学んだことは、いつしか、下の子は上級生を慕い、いろいろな質問を投げかけたり教えを乞うたり、上の子は下の子の面倒をみる、ということが、子どもたちの中から自然に生まれていたことでした。子どもたち自らが積極的に他者とかかわっていく姿でした。これは、それぞれの小学校、中学校、高校と家の往復だけでは、けっして得ることができない関係であり、そこには涙あり、笑顔あり、喧嘩もあり、悔しさあり、励ましがあり、とても豊かな時間が生まれていました。
関谷さんがめざすサード・プレイスが、地域の人々の協力も得ながら、中学生、高校生、そして大学生の間に、こうした血の通った関係性を保った学びの場となることを、私は願っています。子どもたちの現状を知っている関谷さんが、このプロジェクトを立ち上げたのは、よほどの思いがあってのことだと思います。これから、実際の運営、経済的な問題など、多くの課題や問題は起きると思いますが、ひとつひとつ乗り越えて、子どもたちのための良きサード・プレイスになることを、私は応援する者の一人です。
黒田京子
東京都府中市生まれ。'80年代後半、自ら主宰した「オルト」では、池田篤(as)、村田陽一(tb)、大友良英(g,etc)等、ジャズだけでなく、演劇やエレクトロニクスの音楽家たちと脱ジャンル的な場作りを行う。'90年以降、坂田明(as)などのバンドメンバーや、演劇や朗読、無声映画の音楽などを長期に渡って務める。'04年から6年間余り、太田惠資(vn)と翠川敬基(vc)のピアノ・トリオで活動。'10年から喜多直毅(vn)と言葉と音楽の実験劇場「軋む音」を不定期に展開、デュオ活動を続けている。近年は即興演奏を主体とした演奏活動を行うほか、'06年にはオルト・ミュージックを立ち上げ、コンサートの企画も手掛ける。2019年春からは生まれ育った府中でのコンサートの企画制作を始める。次回予定は2020年1月18日(土)『耳のごちそう vol.4』鬼怒無月&鈴木大介によるアコースティック・ギターのデュオ。
公式web http://www.ortopera.com/
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