【シマネジェットフェス・クラウドファンディングキックオフの日】
2020年7月14日夜8時20分
なんと配信まで後10分!!
「やばい!早く着替えなければ!」
オレは部屋を飛び出しベランダを駆け、リビングのタンスから革ジャン革パンをつかみだす。ケンケンしながら足を突っ込み、袖を半分通して、とりあえずトイレに駆け込んだ。出しなに鏡で鼻毛をチェックして部屋に戻ろうとするが、オットットと冷蔵庫にUターンしてクーラーボックスにビールを肘でなだれ込ませると、再びベランダを走って部屋に戻った。
家は9階建てのマンションの9階にあり、でっかい幹線道路に面している建物のルールがあるのか、最上階は、道路側ではない方に住居スペースと同じくらいの広さのベランダがある。オレはそこにプレハブを建てて部屋として使っている。フフフフフ、ちょっとした傷だらけの天使の気分なんだ。
もどると8時28分、横には今日の配信の為に特別お願いしたエンジニアのジュンちゃんが座っている。直前まで二人で配信のテストをやっていた。今日はオレ一人じゃなく、ゲストがたくさん出てくれるのだ。
「何とかギリチョン間に合ったゼ!」
ビールをグラスに注ぎこみ画面の前で構えると、ちょっと待てよ、何か景気のいい音楽をかけなければとミッチーライダーを捜すがない、似たような背中のCDを取り出すとブルーチアだったので、どうしようかと思ったが、まあ一曲目はサマータイムブルースだから大丈夫だろうと、それをかけた。ジュンちゃんがオレに聞く「いいですか、スタートさせますよ」「よしOK、ヨロシク!」
夜8時30分
「イエーイみんな、ロッキンロール!」
「乾杯~!」
あの夜はこうして始まった。
「みんな!いよいよシマネジェットフェス・クラウドファンディングが始まったゼー!」
イエーとか何とか、オレは勢いよく喋りだした。
だがまて、何だかあせってないかオレ。
乾杯っと一気したはいいが、さっき急いで着た革ジャンは、なんか肩がはまってない気がするゾ。ねずみ男みたいになってないか?エリはしっかり立っているのか?
「まちゃまちゃヨロシク!」とかどんドン進めているが、
オレが着ている黄いろいTシャツに気がついている奴はいるだろうか?
オレのこのさりげないセンスに誰か気がついているか?
60年代に人気があったNYのラジオのTシャツなんだ。
ミックジャガーだったか、マイケルだか忘れたがみんな着てたんだ。
ああ、いかんいかん、こんな自分の容姿にばかり気にする奴なんて最低だ。
しかし画面のオレの顔、まだビールもあんまり入ってないのに何でこんな赤いんだ!
ちくしょう、これじゃあ、世界に何億というオレの女性ファンに嫌われてしまう。
でも、海外の白人は赤い顔の奴も多いから、少なくとも金髪の美女達は、気にならないかもしれない。
でもあいつらにレッドフェイスとか言ったら怒るしなあ。
ああ、いかんいかん、そんな事は、どうでもいいのだ。
最高のスタートダッシュに乗り遅れてはいけないのだ!
さあ、どんどん進めよう!
だいぶ落ち着いてきたゾ。
「イエ―、宇宙で唯一の古墳ソウルシンガー、まりこふん登場!」
「大阪の最高のソウルのゴッドたこ!たこさんヨロシク!」
「ニートビーツ真鍋君!ニートビーツの為に、オレ曲を作ったんだゼ!」
「なんとここでタッチの南ちゃん!日髙のり子さん!ヤッター、万歳!」
よし、そろそろオレが歌おう、予定にはなかったが、歌はねば、ねばねばネバーエンディングストーリーみたいになって収拾がつかなくなってしまう。
「行くぜ、聞いてくれ!」ジャカジャ~ン!
なんだ、どうした、これでいいのか!?
無我夢中で、気がつけば後1分で終いじゃないか。
みんなこれでよかったのか!?
わからん。
だが、どんなツールになろうと、オレには激しく自分の気持ちをぶつけることしかできないのだ。
世の中がコロナでいろいろ変わっても、人間のこころなんてそう簡単には変りはしないゼ。
オレの気持ちを受けてめてくれ。
ロッカーにしかできない戦いを見ていてくれ!
今年もみんなとつるむ季節がやってきた!嬉しいゼ、ありがとう4649!
(*実際の配信の様子はこのURLでご視聴ください)