皆様のおかげで無事に個展を終えることが出来ました。本当に有難うございました。
お越し頂けなかった方々にも個展の雰囲気をお伝えできればと思います。
本当にたくさんの応援有難うございました。引き続き宜しくお願い致します。
【RIDRAWING REPORT】
自転車で絵を描く」とはどんなものだろう? どうやって描くのだろう? 湧き出るイメージを形にする作業はBMXライディングと似ているのではないか? 事前に告知映像等を観ていたものの、想像が膨らみ、展示会をとても楽しみにしていた。
JR中山駅から徒歩で10分程。大通りから少し奥に入って、またさらに小道の奥へ。表通りからは想像できない静かな住宅地の一角にある小さなギャラリーで、彼と作品たちが待っていた。
「タイヤを筆がわりに」
フラットランドプロライダー吉田尚生。世界中からその道のトップが集まる世界最高峰のサーカス「シルク・ドゥ・ソレイユ」に出演していることは、彼が正真正銘の世界のトッププロBMXライダーであることを証明している。
彼はBMXプロライダーであると共にグラフィックアーティストとしても活動しており、海外でも個展を開催するほど。今回の個展「RIDRAWING」はまさに吉田尚生だからこそ出来るものなのだ。
「BMXの動きを把握しているからこそ、筆では描けない線や動きを描きたい。筆として使うことで特有の線が生まれました。続けてやることでそこに規則性も見えてきたので、作品として作れると感じました(吉田尚生)」
大きな動きや円を描くとき、細かな動きなどで前輪、後輪を使い分ける。バースピン、コンパスといったフラットランド基礎トリックを使ったり、車輪を回して絵具を散布させたり。筆替わりのBMXバイクに大いなる可能性を見出して、独特の画風が生まれた。
絵には奥行きがあり、近くから遠くから、観る角度を変えてみたり、色々な角度から見てみると、見えてくるものが変わってくる。観る者の想像力を膨らませ、楽しませてくれる作品たちだった。
前日行われたライブペインティング時の作品も展示されており、面白いストーリーを聞かせてもらった。ライブペイント当日は多数の来場者があり、DJが音楽で盛り上げ大盛況。盛り上がってくるにつれ流れる曲のBPMもどんどん速くなっていき、描く側もリズムが速くなっていったのだとか。それはしっかり作品に反映されていて、ライブの熱量が伝わってきた。静かなアトリエで描かれたものに比べ、激しさを感じる。
作品にはライディングと通じるものがあるのではないかと想像していたが、イメージを形にする作業の中で「リズム」が大きく作用する点は通じるものがある。全体としても、指先まで綺麗なラインを描き、繊細さ、大胆さなど、ストーリー性のある彼のライディングスタイルから感じるものを、画からも感じることができた。
会場も素敵な場所だった。ギャラリーの母屋であるモダンな邸宅をイベントスペースとして貸し出していて、そこでは個展とタイミングを合わせ、尚生の地元BMX仲間のサイノさんがCAFÉをポップアップ開店。彼が淹れてくれるコーヒーとクラフトコーラはとても味わい深く、静かで落ち着いた雰囲気の中、穏やかで素敵な時間を過ごさせてもらった。CAFÉも合わせ、個展「RIDRAWING」は、とてもピースでクリエイティブな気持ちにさせてくれる、素晴らしいイベントだった。
吉田尚生の挑戦はまだまだ続く永い旅。
現在コロナウィルス問題で動きが制限されている中、確実に一歩一歩踏み出し、自分の出来る事で多くの人に希望、勇気を与えている彼。
シルクドソレイユが復活したら、ワールドツアーがまたはじまる。
世界中で多くの人が、彼の創り出す表現から何かを感じて欲しい。
そんな気持ちになりました。
TEXT 松永佳郎(BMX活動家/ライダー)
PHOTO YUTA YOSHIDA