2020/10/21 18:00

前回の活動報告では映画の映像技術についてお伝えしましたので、今度は音響についてのこだわりを監督に聞いてみました。

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映画『宮城野』の完成時(2008年)の音声は、2ch(単なるステレオ)でした。
実はこれ、時間的な制約もあって、不完全燃焼だったんです……

音声のミックスを担当した長谷川有里は、大学時代から“ここぞ!”というときには必ず一緒にやってきた同級生ということもあり、お互いにずっと悔しさを抱えてきました。

だいぶ時は流れ、2015年末、Blu-ray&DVD化にあたって5.1chでリミックスしようという話になり、ようやく積年の思いを果たせました。

では、その時に何が変わったのか?
2ch→5.1chになったので、効果音が立体的になり臨場感は出たと思います。
あとは、足音を1歩2歩足したり引いたり、前後にずらしたり。音楽が入るきっかけをズラしたり。エンディングテーマの音色のバランスを変えたり……

でも、僕らにとってこれらは全然重要じゃないんです。

一番の心残りは、「鉄瓶の煮えたぎってるお湯みたいにチンチンチンチン鳴ってる鳴ってる」という台詞。最初、これを「お湯が煮えたぎってる鉄瓶がチンチン鳴ってる」擬音語だと捉えて、やかんの蓋がチンチン鳴ってる音を付けていました。

しかしこれは、私の完全な誤解でした。

チンチンは擬音語ではなく、お湯が煮えたぎってる状態を指した擬態語なんですね……。(名古屋のおばあちゃんはよく使っているのに)
あくまで宮城野の心の中だけで響いてる透き通った音です。だから、ここチンチン鳴ってる音を付けるなんてことは無粋以外のナニモノでもなかったんです。

「God is in the details.(神は細部に宿る)」とはよく言いますが、まさにそんな作業です。

ちなみに、今、配信でご覧いただいている音声は5.1chリミックス版を元にしていますので、その点はどうかご安心ください(笑)


最後に……
本作の音響効果を担当してくれた小川広美さんは、昨年6月に亡くなりました。スーパー戦隊シリーズを始め幅広いジャンルで活躍された大先輩でした。お話好きで、謙虚で、監督の執拗なこだわりにも煙草を吹かしながら飄々と作業を進めてくれました。小川さんの素晴らしいお仕事は必ず世界に届けます。

映画『宮城野』監督 山﨑達璽

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意外というかやっぱりというか、とことん妥協しない監督により、最良で最新の音声にアップグレードされて世界へ届ける準備ができていました。

本プロジェクト、残り8日といよいよカウントダウンです。
引き続きご支援のほど、よろしくお願いいたします。