2020/10/20 18:00

今回のプロジェクトで制作する「インターナショナル版」は、4Kデジタルリマスター映像を“蔵出し”する予定となっています。

4Kデジタルリマスターとは、35mmのネガフィルムを1コマずつスキャンした、フィルムの質感を最も忠実に再現したものです。

フィルムは1秒あたり24コマですから、本作『宮城野』では16万枚以上の超高画質データになります。総データ量は5TB以上になり、もはや天文学的数字ですね。

映画の上映形態が、フィルムからデジタルに切り替わった現在、この4Kデジタルリマスターが映画『宮城野』を忠実な形でご覧いただける唯一の手段だとも言えます。

ちなみに、現在、配信などでご覧いただいているものは、ポジフィルム(上映プリント)から作成したもので、どうしてもディテールや暗部の見え方に見劣りがあるのです。


監督曰く、「映画は永遠のものではあるけれど、それは人々の『記憶』であって、物理的には無常だ」とのこと。

現在の映画は撮影段階からデジタル化しており、劇場においてもフィルムでの上映形態が失われていく中で、過去のフィルム原版の保存もまた困難になっています。

35mmのネガフィルム:左が画ネガ、右が音ネガ

約2時間作品で段ボール2箱分にもなり、温度と湿度の慎重な管理も必要で、そこにはコストが掛かり続けるのです。

仮にそれをしても、フィルムは「形あるもの」ですから、やがては劣化し、いつかはなくなります。フィルム撮影時代のすべての日本映画にとって、実は大きな問題であり、デジタル化しなければ古いものから朽ちているのも現状なのです。

『宮城野』は2007年、デジタル化以前にフィルムで撮影された映画です。
前回IMAGICA Lab.の水戸さんが解説してくれたように、最先端の手法でありながら、作り手はこうした「無常観」を抱え、その保存を模索するのですね。

幸いにして、信頼できるイマジカさんの最高技術で4Kデジタルリマスター化作業を終えることができました。

2019年2月、IMAGICAでのカラーグレーディング作業時の1枚
左からカメラマンの瀬川龍さん、カラリストの阿部悦明さん、山﨑監督

4Kデジタルリマスターのデータは、LTOという磁気テープに収録されています。長期の保管や読み書きに対する安定感も高いメディアで、放送局や制作会社、病院、銀行などでも使われています。

4Kデジタルリマスター素材

監督特注の、桐箱に入れて保管されているとのことです。これで安心!