いよいよ残すところ3日となってきました!
今日は前回の続きの木炭のお話からしたいと思います。
木炭の歴史
そもそも木炭はいつからあるのでしょうか?少し歴史を遡ってみることにしましょう。
現在見つかっている日本最古の木炭は約30万年前の愛媛県鹿の川遺跡で見つかったものとされています(※1)。実に石器時代のことです。消し炭とは異なる木炭の痕跡があり、料理に使われていたと考えられています。また、お隣の中国では今年の3月に木炭に関する考古学的な発見のニュースがありました。それによると、近年実在が有力視されてきた中国最古の王朝、夏王朝末期の木炭窯が見つかったそうです(※2)。これが紀元前1600年ごろのことで、銅の製錬のために用いられていたと考えられています。人と木炭のお付き合いはかなり長いようです。
国内では奈良時代になると、利用状況が文献に良く残るようになります。奈良の大仏を作る際には大仏の鋳造に750tもの木炭が利用されたという記録があります。(余談ですが奈良の大仏建設の際、平井のケヤキの巨木が利用されたという話も残っています。)当時の利用されていた炭は記録から白炭であると考えられています。炭には白炭と黒炭があり、焼き終わったときに窯の外で灰をかけて急激に冷やす方法で作られる炭を白炭、焼きあがったら空気を遮断し窯の中で冷やす方法で作るのものを黒炭と呼びます。
この白炭を作る文化は世界でも日本の限られた地域(熊野、土佐、日向、日本海側一部)と中国にしか存在せず、中国から伝わった製炭技術が当時既に開けていたこれらの地域に伝わったのでは?と考えている人もいます。その一方で、島根や房総、鹿児島県のシラス台地では日本古来とされる系統の炭窯がしばしば発見されることもあるようです(※1)。作り方一つとっても面白そうな話があふれてきますね。
現在主流となっている黒炭が生産されるようになったのは鎌倉時代のことで、室町時代に入ってから本格化したとされています。そして、この黒炭の躍進には茶の湯の文化を広めた千利休が関わっていると言われています。当時、甲冑や刀剣の製造への用途が主流だった木炭を、お茶を沸かせる燃料として改良するのに利休が貢献したようです(※3)。
備長炭
さらに時は経ち、江戸の元禄の頃になると備長炭が姿を現します。発明したのはパンダで有名なアドベンチャーワールドのある白浜の隣、田辺市に住んでいた備中屋長左衛門さんです。勘の良い人は気づいたかもしれませんが、備中屋長左衛門の炭だから略して備長炭です。備長炭の特徴は圧倒的な赤外線と煙の少なさです。さらに長時間燃焼可能なうえ火力調節しやすく炭火料理に最適でした。かばやきや焼き鳥は備長炭あってこその料理かもしれません。(ただし、備長炭は着火が非常に難しいのでキャンプなどで使うときは注意が必要です。)
また備長炭は、質量に対する表面積が非常に大きく、1gでテニスコート一面分に匹敵する表面積を持つと言われています。これは備長炭に無数の穴が開いているためです。そしてこの穴が物質の吸着に役立ち、カルキ臭の除去や水の浄化にも利用されています。また、備長炭は他の炭と比べても非常に硬く、その性質を利用して風鈴にすることもあります。
紀伊田辺で発明された備長炭は全国各地へ伝わり、土佐備長炭や日向備長炭などご当地備長炭もできました。しかし今では、備長炭と名乗る商品が溢れかえって偽物が問題となっています。そこで偽物との差別化を図るため、和歌山と奈良にある特有の窯で古くからの方法に作られたものだけを紀州備長炭とし、和歌山県木炭協同組合が商標登録しています。こうして手間暇かけて作られた紀州備長炭は、なんと世界一高価な木炭らしいです(※4)。ちなみに、一般的に木炭は航空機への持ち込みが禁止されているのですが、この紀州備長炭は許可されているとのことです(※5)。
さて、また少し長くなってしまったので続きは次回にしたいと思います。残り3日!よろしくお願いします!
※1:岸本定吉(農林省林業試験場) 1962 木炭の生産と利用の現況と將来
ただし、木炭そのものの年代測定はされていないようで、木炭と洞窟の年代が一致するかどうかは不明とのこと
※2:AFP BBNews 2020年3月21日 夏・商時代の銅製錬遺跡で木炭窯と祭祀遺構を発見 中国・山西省 https://www.afpbb.com/articles/-/3273881 閲覧日2020年11月26日
※3:林野庁 木炭の種類 https://www.rinya.maff.go.jp/j/tokuyou/mokutan/syurui.html 閲覧日2020年11月27日
※4:紀州備長炭本舗 紀州備長炭とは http://www.bincho.jp/topics/01topics_03.html 閲覧日2020年11月27日
※5:JAL 2013 炭(木炭等)及び活性炭の取扱いについて https://www.jal.co.jp/jalcargo/inter/news/pdf/jcs-12054.pdf