2021/04/23 06:08

肩部の砲架に装備したガンランチャーが2発、爆音を上げて砲弾を発射した。

初弾は対象の急所を外れたが、それを分析して発射された次弾は、全長2メートルほどの機械の獣の動力核を撃ち抜く。


金属装甲で覆われた機械の獣「機獣」を数発の射撃で屠るこれほどの火力の持つ兵装を、身長160cm弱の私と同程度のサイズの人間が扱うことは到底不可能だろう。

だが私は人間ではない。

HeavyArmedGirl、略してHAG。

人の形を模して作られた機械だ。

私はクラリテと呼ばれ、そう呼ぶマスターと共に、長年放棄されたこの玩具工場に忍び込んでいる。


ここは先日まで超大型の機獣が付近に陣取っており、長年誰一人として近寄ることができなかった場所の一つ。

誰もがその存在を忘れていた頃、ついに「ヌシ」が移動を始め、ようやく入れるようになったというわけだ。

そして、とある協力者から得たこの情報をもとに、私たちはここへ赴いた。


工場の内部はヌシが産み落とし使役する小型機獣が食い荒らし、ほとんど使えそうなものは残っていない。

討伐した機獣を脇にどけ、私たちはさらに奥へと進んだ。


探索と戦闘を繰り返し、辿り着いた地下区画は嘘のように手付かずで、多くのパッケージングされた玩具と共に「炉」が鎮座していた。


3メートル四方ほどの複雑な構造をした機械の箱は「記憶融合炉」と呼ばれ、現状この世界の技術では誰も作ることができない、所謂オーパーツの類のものだ。

「炉」は、あらゆる記録媒体からその情報を分析し、素材を与えることで望む物質(大方は武器や兵器やその素材)を生産するのに用いられる。

種類やサイズは複数確認されているが、いずれもこの大地で戦いの中に生きることを選んだ「フォルダ」と呼ばれる集団が、その戦力の拡充と維持のために血眼になって探し、奪い合っている。


そして、私たちは遂に、その「力」を手にした。


この世界で生きる人間には大きく二つに分かれる。

世界規模の大戦による文明崩壊後、残された人々が生き延びるための共同体「連合秩序」の庇護のもと、人類の存続のために活動を行うもの

そして私たちのように、文明を主食とする機獣を狩り、連合秩序を外敵から守ることを生業とするもの。


弱い存在はどこでも食い物にされる。

巨大な機獣の闊歩するこの世界で、人類はただ銃を持つだけでは生き延びることはできない。

現状、最も強大で信頼のおける剣「HAG」を持ち、戦力を拡大し、自身の力を示すこと。

それが食われないための、最も有効で効率の良い手段なのだ。


そして目の前にあるこの箱は、その手段の中でもとりわけ重要で、重大な因子なのである。


「マスター、これにて任務完了、ですね。」


炉は人を集める。


それがどんな理由であれ、稼働している炉の熱は、あらゆる人や物を集めるという逸話だ。

これから私たちは、さらに多くの仲間や敵や、それ以外と関わりを持つことだろう。


マスターと、私の思考を司るニューロモーフはそれを、今は素直に喜んだ。




続く

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