多胎ネット代表理事の水野かおりです。クラウドファンディングも残り13日。ご支援いただいた金額は80万円を超え、目標金額の約53%となっています。お孫さんが双子の方、子育て中で児童館やママ向けのイベントで多胎の親をあまり見かけたことがないという方、虐待死の悲しいニュースに心痛めていますという方。
様々な立場の方に現状を知っていただき、応援いただいていることに本当に感激しています。昨日はメディアの方に私たちが実現したいこと、とくにピアサポート事業について取材していただきました。記事が出ましたらまたご報告いたします。
関東多胎ネットのメンバーは、多胎に限らずみんなが育児しやすい社会になるよう願っています。本日はそれって具体的にどういうこと?という、私なりの考えを書かせてください。
生後7ヶ月から海外生活
私は夫の仕事の都合で双子が生後7ヶ月の頃から半年フランスで、さらに半年イギリスで生活していました。その話題になると決まって
「双子ちゃんで海外生活なんで、ものすごく大変だったでしょ!!」
と言われるのですが、、実は私はこの海外での一年間、とても楽しかったのです。もちろんもともと外国生活が好きということもあるのですが、それ以上にこの二つの国で「子育てしやすい社会ってこういうことか!」と実感したのです。
「子育ては社会全体でするもの」 「こどもは国の宝」
例えばフランスでは母親と同じく、出産時の父親休暇(育休ではなく産休!)制度があります。現在サラリーマンの父親の約70%が産休を取得。2021年7月からは義務化され100%となる見込みです。
私の住む街では母親は育休が短く、生後2-3ヶ月で母乳もやめて社会復帰する方が多くいました。その是非はおいておいて、だからこそ「女性が一人で子育てする」という状況がかなり少なく、産後ケア、ベビーシッター、家政婦、保育所が利用しやすく、液体ミルクや市販の離乳食を使うのも当たり前でした。パウチにそのままスプーンがついていたり、とにかく利便性が高い。手作り神話はありません!
手軽に買える値段の液体ミルク。乳首を上につけて常温のまま使える。
近所のドラッグストア。新生児期から月齢ごと、体調にあわせたもの(便秘/下痢)、オーガニックなど、粉ミルクや液体ミルクの種類が豊富。
ある日私が一人抱っこ紐、一人ベビーカーでバスに乗ると、すぐにおばあさんが席を立って「あなた座らないとだめ!!子供は社会の宝よ。私がベビーカーを支えているから!」と、降りるまでずっと助けてくださいました。嬉しくて座った席からこそっと写真を撮りました。
「必要な人に手を差し伸べるのはあたりまえ」
地下鉄に乗る時も、エレベーターどころかエスカレーターもない駅が多かったのですが、ベビーカーを持って階段を運んでくれる人、狭い改札の上をひょいっと持ち上げて通してくれる人が絶対にいました。しかもお礼を言う暇もないぐらい(私はめちゃくちゃ嬉しくてメルシー!を連発してましたが)颯爽と去っていきます。息を吸うように当たり前にベビーカーを運んでくれる方々が、かっこよくて素敵でした。
イギリスはもう少し日本に近く、母親が育休を長くとるスタイルが多いかなと感じましたが、子供向けの設備が素晴らしく、外に飛び出さないよう柵のある公園、怪我をしにくい柔らかな地面、温かみのある木の施設、様々な方が遊べるインクルーシブな遊具などがありました。ここでも満員のバスからわざわざ人が降りて、双子ベビーカーの場所を作ってくれたり、「子育ては大変な仕事よ。あなた素晴らしい仕事をしているわ。ありがとう」と声をかけてもらったりしました。
バスの車椅子スペースは椅子を跳ね上げなくても使えました
「社会の認識が変わるだけで子育てしやすくなる」
もちろん日本でもヨーロッパでもどこでも、様々な価値観の人がいて、国や地域だけでひとくくりに話すことはできません。
ハード面では日本はダントツに便利です。エレベーターはたくさんあります。でも帰国した私は人の無関心さに傷つき、子育てする親の孤独感をより強く感じ、「子育てしやすい」とは思えませんでした。
私がこの二つの国で体感した「母親の息苦しさ孤立感が少ない環境」、「手が必要な時にすぐに助けてくれる人がいる安心感」、「男性も女性も同じ親であり社会が子供を育てる」ということ。これが日本にもっと広まってくれることを強く願っています。
老若男女問わずお互いに関心を持ち、違いを認め合い、必要な時にできる人が手を貸し、そして社会があたたかく見守る。そうすればふたごもみつごも、年子も多子も、様々なバックグラウンドを持った家庭が、安心して子育てできる。
子育て家庭だけではなく、様々な立場の人が生きやすくなる。
私はそう信じています。
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