佐々木こけし工房の新型こけしの魅力を紹介したいと思います。 伝統こけしに固定したファンができるのに対して、新型こけしは少ないのが実情のようです。「にゃんこけし」さんや「石巻こけし」さんのように新型こけしにも固定したファンはいます。いずれも制作者の顔が分り、自分ひとりで制作して自分の型を決めているからのように感じられます。でもこれって伝統こけしと変わらないようにも思えます。 では、佐々木こけし工房が制作している新型こけしとは何が違っているのでしょうか。一目見ただけでは気付かないところにも匠ならではのこだわりがあります。これを発見できたときの喜びはこけしマニアであらずともご理解していただけるものと思います。作品を一つひとつ見ながら、その魅力を再発見していきたいと思います。 まずは、梅娘たちから。 一番右のこけしは京都や松島などのみやげ店に置かれている佐々木こけし工房の代表的なこけしのひとつで、長くお問い合わせいただいているものだそうです。赤いのが赤梅で、青いのが白梅(青いのは前回のクラウドファンディングでのリターン品にしました)模様を時代に合わせて少しずつ変えながら作り続けてきたそうです。 地元の伝統こけしである弥治郎こけしは「ろくろ線」が華麗なことで知られています。 あたまにもろくろ模様を描くことからベレー帽を被っているように見えるとも言われています。 一定の間隔で同じ幅に揃えて描くことは容易ではありません。 こけし村で工人に教わりながら絵付け体験をしたことがある方ならわかると思います。 新型こけしの梅娘たちのその魅力は、それを進化させ重ねたろくろ線にあります。伝統的な描き方を魅力あるデザインにさらに仕上げてきたように思えるのです。黒、赤、黒、赤と並べずに、赤と黒を重ねる模様は色を二度塗りする必要があります。このためにひと手間かかってしまうので大量生産には向いていないやり方です。でも、敢えてこれを施すことで独特の風合いを生み出しているのです。 このろくろ模様は胴体に彫り込む梅の花を綺麗に見せるための演出でもあります。耳飾りに彫られた梅の花はピンクに染めてあることから比較してみることができます。さらに言えば、この彫り込む技も優れものでして、丸く彫り込んでいるのがお分かりになるでしょうか。一見して梅の花と分かるようにするための形が丸なのだそうです。丸い胴体に丸く彫る。簡単に彫られているように見えますが技量がもたらす形です。 そして、そして、なんと左側あるすこしサイズの大きい「梅こけし」のろくろ線はさらに凝っています。この拡大写真をみていただきたい。赤のろくろ線の上下に金色が描かれているのです。頭には手柄の模様を描くことで、サイズにあった風格となるろくろ線が要る。こんなところにも工人の工夫が詰まっています。 違うものを作り続ける。その工夫の有り方を少しだけですがお分かりいただけましたでしょうか。また、語りたいと思っています。今回はこの辺にして、皆さまからコメントを戴けると嬉しいです。