2021/03/09 20:10

白鯉が大切にしていくコンセプトのなかに【用の美】があります。【用の美】とは、実用性の中に美しさを見出すことをいいます。美術品や鑑賞のための美ではなく、使われることを前提とした美です。
実用性のある道具や家具のなかにも、自分の好みに合った空間を演出する際に選ぶ基準となるものです。食器などがその代表であり、実用性と美とを兼ね備えた手仕事の賜物は、白鯉が一人ひとりに届けていきたい価値のひとつです。


インテリアを選ぶときも、実用性と美といった同様の基準が当てはまるように思います。インテリアとは、室内装飾品を指します。実用性のある家具や雑貨が内装イメージを重視して提案されるときにインテリアという言葉が使われます。

それではアート作品の位置づけはどうなるのでしょうか。一般的にはアートは美術品として扱われるため、鑑賞用であり実用的な使用目的はありません。それがアート作品を敷居が高く手を出しにくくしている所以なのだと、私は日頃から思っています。
自分の好みで選んだ作品で身の回りを囲んでいる私は、毎日を彩り演出するアート作品も、実用性といえるものがある、インテリアのように思っています。実際にインテリアとしてのアートが自分の部屋にあることを想像してみてください。毎日食事をして、お茶を楽しむときに、自分の選んだ美しい器がある、そして壁には思い入れのある、自分が選んだ世界にひとつだけの作品がかかっている、友人を招いた際にはそこから会話が生まれる、毎日が楽しくなるような気がしませんが。


この実経験に基づいて、アート作品をより身近なものに、世界にひとつしかないインテリアとして提案し、ご自宅に届けることを白鯉は狙いとします。自分の好きなもので衣食住を囲む贅沢です。お茶を味わっていただき、器を楽しんでいただき、その空間に絵画も添えたいと思えば、一緒にご自宅に迎え入れていただく、そんな機能が果たせればと考えています。


これとは別に、アート作品を分かりやすく【用の美】と結びつける方法として、実用性のあるモノにプリントする方法があります。これは手仕事から離れ、大量生産が可能な技術になるため賛否両論あるかと思います。白鯉が販売するエコバッグやファイルなどがそれにあたります。
私は地方で着物を販売されている方とお話しして気づいたことがあります。印刷技術を取り入れた着物を販売し、はじめは本物の染、絞り、刺繍といった技術を用いたものが売れなくなるのではという懸念があった。しかし結果としてプリントと手仕事のものの両方が売れたということです。
印刷の技術を用いたものも、アーティストの作品を身近に感じていただく手段としてあると思います。まずはアーティストのファンをつくり、いつか本物の手仕事のものに手を伸ばしていただく契機として、私は有効だと考えています。
印刷した作品を日用品に落とし込むことは、作品を【用の美】に落とし込むひとつの手段と考えます。これはアーティストにより賛否両論あると思いますので、白鯉登録作家さんと相談しながら、随時商品を開発していこうと思います。


白鯉のコンセプトを少しでもご理解いただけたなら幸いです。


TAL.TOKYO
森山直美