2021/01/26 12:00

みなさん、こんにちは。茨城県潮来市にあるお寺、潮音寺の住職・村上定運です。

3月11日に行われる「花あかり」では、夕方から境内に1万個以上のろうそくをカップに入れて並べ、火を灯して祈りを捧げます。これは、潮音寺が創建当初から行っている「万燈会(まんとうえ)」という伝統行事です。

例年、夏(8月中旬)と大みそかに開催していますが、今年は震災から10年の節目ということで「花あかり」というイベントを企画し、そのなかでも実施することとなりました。

2020年度は新型コロナウイルス感染拡大の影響で、潮音寺だけでなく潮来市内のほとんどの行事やイベントが中止を余儀なくされました。そんななか、夏の万燈会は境内の感染対策を万全に行ったうえで、Youtube配信を併用するなど工夫を凝らして実施。

そこには、「祈りの場所を奪ってはいけない」という地域に根差したお寺ならではの葛藤と決意がありました。

◆お寺が閉院するなか、祈る場所を求める人々

8月の万燈会を実施するかどうか、その決断を迫られていたのは5月のころです。1回目の緊急事態宣言下で、潮音寺は人員を最低限にしてお寺を開け続けていましたが、私自身は薬師寺の東京別院に隔離状態となっていました。

東京の別院は閉院しており、お経をあげて、掃除をしながら事務処理を繰り返す日々。お寺を訪れた方に対しても、事情を説明してお帰りいただくという歯がゆい状況が続きました。

なかには「お寺を開けてほしい、お祈りさせてほしい」と電話をくださる方や、私を訪ねて東京まで足を運び、「ひと目でもいいから住職に会わせてほしい」とおっしゃる方も。その姿に心を痛めながらも、なにもできないまま時間が過ぎていきました。

どうにか祈る場所を提供できないかと、入り口のドアにご本尊のポスターを貼り、役病除けのお札を設置したところ、そこで1時間近く手を合わせている方もいたのです。そうした状況で、私は万燈会を実施する意味について改めて考え直しました。

万燈会で灯すろうそくには、祈りと希望が込められています。コロナ禍で日本全体が困難に見舞われているなかで、「祈りを捧げて希望を抱くための場所を奪ってはいけない。なんとしても万燈会を開催したい」と強く思いました。

そして私は、開催に向けて県や市、本山である薬師寺などに嘆願し、あらゆる手を尽くして実施へとこぎつけたのです。

◆万燈会の実施で生まれたたくさんの出会い

逆風も少なくないなか多くの人の協力で実施した8月の万燈会は、現地の感染対策を念入りに行い、Youtubeでの配信なども駆使しながらおかげさまで多くの人にお届けできました。

また、配信をしたことで新たな繋がりも生まれました。地元の青年会議所に声をかけていただき地域のための活動に参加したり、配信を見た先生から学校で中学生にお話しをする機会をいただいたりと、活動の場が広がっています。

この「花あかり」プロジェクトチームも同様です。夏の万燈会はこうしたたくさんの出会いをもたらしてくれました。

◆クラウドファンディングを通してより多くの人へ!

今回はクラウドファンディングという、お寺としては初めてとなる手段を活用して計画を進めています。引き続き自粛が要求される情勢ではありますが、Youtube配信やリターン品を通して直接現地に来られないみなさんとも繋がれたらと考えています。

近々、お花に関する新しいリターン品も追加される予定です。詳細は後日お伝えしますので、気になる方はぜひチェックしてみてください。

さて次回は、着々と準備が始まっている「花あかり」について、当日のスケジュールや詳しい内容をお届けします!