クラウドファンディングですが、現在までに目標金額の80%を超えるご支援をいただきました。期間もいよいよ残り2週間。引き続きご協力のほど、何卒よろしくお願いします。
私達はこれまでにも古民家や空き家を改修した店舗の立ち上げを行ってきましたが、今回は施工やデザインを得意とする自社スタッフが中心となって店舗施工を進めてきました。内装を担当したスタッフ鷹見より、今回の施工のコンセプトや思いについて書いてもらいました。
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栗と葛飾北斎の町、小布施。
長野の北にあるその街の外れにある元土産屋さんをカフェにする話を受けたのが、去年の9月のことでした。
物件を見たのはお昼過ぎだったかと思います。屋内に差し込む陽射しの美しさに触れて、この物件は既に7割完成している、と直感で思いました。
「あとは自分が思う風景をここに落とし込むだけだな、これはイケそうだな」
そんな思いを胸に、施工を担当する決断ができました。
自分には本格的なリノベーションはできません。躯体を解体してまったく異なる空間を創出するのではなく、日程や人工、物件の状態、与えられた条件の中で、自分が描いた風景や挑戦を空間の中に落とし込むことを楽しむ。それだけです。
なので今回の物件も、まずは軽い解体作業を中心に進めました。
まずは床に貼られているトーンの暗い茶色のフロアタイルを剥がし、コンクリートの床を作っていきました。
次にカウンターの腰壁部分や窓際の腰壁部分。こちらもフロアタイル同様にトーンが暗い茶色だったので、コンクリートの床に近いグレーに塗装。
さらに既存にある柱も同様の色をしていたので、長押(日本家屋に見られる横に走る木材)より下の柱部分を削り明るい色味の木目を作っていきました。
こうして建物のベースとなる部分は明るい色味に変わり、重暗い雰囲気の空間は一気に明るく風を可視化したような印象になっていきました。
次に取り掛かったのが、以前の蕎麦屋さんにも併設されていたというお土産スペース。
今回のプロジェクトで軸のひとつとして掲げているのが”ローコスト”昨今の商業施設や住宅でも、ローコストなインテリアは一種のムーブメントのようになっています。個人的に注目している方々にSchemata Architectsさん、DDAA.Incさん、Yusuke Seki Studioさんなどがいます。単に低予算ということだけではなく、普段何気なく目にしている素材に、視点を変えて新たな機能を持たせるその手法。
対象が近い存在だからこそ、姿を変えて現れたときの驚きや感動は既存の空間よりも印象深いものになります。
普段は床材の仕上げ材として使わないであろうベニヤ板も、今回は床や壁の仕上げにして物販スペースを構成していきました。
新築ではないからこそ、経年劣化で水平垂直がままならない状況なのでこちらの造作にはとても苦労しました。
普段なら床に木造の枠組みを作って床を貼るところを、そのままボンドで貼り付けるという力技なのも、スタッフで作り上げるDIYならではとしておきます。
そして肝心のカフェスペース。物販スペースがベニヤの面で構成されたシンプルな印象の空間に対して、こちらは様々な表情を持つ空間になっていきました。
設計図が書けない自分は、その場に立った印象、空間の雰囲気を元にその瞬間で作っていきます。今日決めた色も、明日には違った色になってるかもしれない。
ワガママな進め方かもしれないけど、明日の自分に少し期待して、今よりもさらに面白いヒントを探して、具現化する一歩手前のその瞬間まで考えて作り出したい。
そんな刹那的な空間作りを進めていきます。
と、かっこいいことを言っていますが、その作り方でしか空間創作に携わったことがないので、他のやり方を知らないのが正直なところです。
今回も施工中に読んだ雑誌に着想を得てカウンターの側面を作ったり、手伝いに来てくれた大工仲間にテーブルを自由に作ってもらったりと、実験的ながらも”いい空間を作りたい”の軸を元にみんなで作っていきました。
そのおかげで5つの個性豊かなテーブル達、温もりのあるカウンター、居心地の良い縁側席と、とても思い入れのある風景がたくさんでき上がりました。
たくさんの想いが詰まった空間も45%まで完成しています。
5%は4月初旬の追加工事を終えて。そして残りの50%は、お客様である皆様に使っていただいて、KUTEN。の内装は完成します。
空間は人がいて完成します。
どうか皆様、楽しみにお待ちください。
鷹見