2021/05/03 16:40

こんにちは。連休でお時間のある時に読んで頂けましたら、嬉しいです。
金襴と言う織物についてお話しさせてください。


【金襴とはなんぞや?】

昭和40年代以前の生まれの方なら、覚えているでしょうか?

童謡「花嫁人形」の歌の冒頭を。
「きんらんどんすの帯しめながら花嫁御料はなぜ泣くのだろ~」と言う歌詞です。(*脚注に参考アリ)
この「きんらんどんす」が、正に西陣織金襴生地=八卦チーフに使用する生地です。
弊社は、京都の加地金襴さんにお願いして、特別に弊社で使用するわずかな用尺を織って頂きます。


加地金襴さんとは、かれこれ4年ほどのお付き合いになります。

「僧侶の袈裟を織っている鈴木社長をご紹介しますよ」と、ある方から言って頂いたのが始まりです。
とは言え、弊社はスーツ屋。最初は、とても相手にして頂けないのではないか? と、恐る恐るお近づきになって頂きました。


会社をお伺いして生地を見せて頂くやいなや、私はたちまち金襴生地の虜になりました。
そして、何とかこの生地をスーツ屋として使用させては頂けないだろうか?と、考えました。

しかしデリケートな生地なので、スーツにそのまま使うことはやめよう(そもそも高額過ぎる)~じゃあ、どうすれば…???  

そんな中、様々な素材で手作りのスーツアクセサリーを制作しているファクトリーKURAの太田綾乃さんと出会いました。

そして、結びつきました!


かなり固い生地なのですが、金襴と言う生地で、ポケットチーフとラペルピンを作って頂けませんか?


唐突なお願いでしたが、綾乃さんは心よく引き受けてくださいました。


でも…生地がしっかりしていて固いので、加工するのは至難のワザなのだそうです。恐らく、指も痛めながら作ってくださっていることと思います。





金襴は、絹・金糸・金箔で織った生地です。

天皇や貴族、高位の僧侶のみが愛用していた生地でした。
1千年の宮廷文化に育まれた「特別感」もさることながら、織り上がるまでの道のりに私は感銘を受けています。
その道のりは、多岐にわたっています;


①<意匠図作成>「図案屋」がデザインし

②<織物データ作成>「紋図屋」が設計図を描き

③<配色>配色職人が色を決め

④<仕入れ>配色に従って

「生糸屋」が生糸を仕入れ

「金糸屋」が金糸を仕入れ

「金箔屋」が金箔を仕入れます

⑤<糸染め>配色に必要な糸染めを「染色屋」が行います

⑥<糸繰り>染め上がった糸をほぐし、糸枠に巻き取ります

⑦<整経>「整経屋」が3千本~8千本の縦糸を一旦大きなドラムに巻き取り、更に織り機用の筒に巻き取ります

⑧<たて継ぎ>縦糸を一本一本丁寧につなぎ合わせ、織り機にセットします

⑨<緯巻き(ぬきまき)>ミシンで言うボビン(菅)にヨコ糸を巻きつけケース(杼)にセットします

⑩<整織>②と③の設計図と配色指示に基づき、ヨコ糸に金糸・金箔を使用して織り上げます

⑪<検品>織りあがった生地を専門の職人が検品します。検品を通らなかった生地は手直し、それでも基準を満たさない生地は一から織り直します
必要に応じて生地裏の処理をを行い、用途に応じて糊張りの加工を施します

織り上がり

織り上がるまでには、全11の工程と7つもの専門業者とそれに携わる専門の職人が存在します。

この技術と技量の結集が金襴なのです。


金襴生地を目の当たりにすると、重低音がハラに響いてくるようなパワーを感じます。

まさに、身につける「パワースポット」。
いにしえの貴族たちも、このパワーを得るために金襴を纏っていたのではないでしょうか?

これら全てを包含して「文化」として育まれ受け継がれてきたロマンをお伝えしたい、と心から思っています。

千年の文化・技術・技量の「賜物」の持つエネルギーを身につけることによって、現代に生きる私たちもチカラの源にしていきたいですね。


*童謡「花嫁人形」賠償千恵子さんが歌っている動画がありましたので、ご参考まで^^
https://www.youtube.com/watch?v=4jxTOlzcOPY