「菊池 愛理」凛
「本多 拓也」三枝聖
「中山 優子」時藤邑光
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1拓也の家・朝
ベッドに並んで寝ている愛理と拓也。二人とも裸(拓也=上裸、愛理=ベージュのチューブトップか下着を肩ひもを落とした状態で着用)愛理が目を覚まして起き上がる
愛理「・・・頭痛い」
布団の中を確認する。そして隣を見る。
愛理「誰だっけ?」
拓也が目を覚ます。
拓也「起きてたの?」
愛理「・・・あ、はい。あの・・・」
拓也がキスをする。びっくりして離れる。
愛理「ちょっと」
拓也「ごめん、嫌だった?」
愛理「嫌っていうか、いきなりでびっくりしたから」
拓也「昨日の事覚えてる?」
愛理「・・・あんまり覚えてないです」
拓也「・・・そっか」
愛理「あの・・・もしかして・・・」
拓也「お腹すいてない?」
愛理「え?ああ、すいてます」
拓也「敬語じゃなくていいよ。コンビニ行こ」
愛理「・・・うん」
2路上・朝
二人並んで歩いている。拓也はポケットに手を入れている。
※二人を後ろから映すカメラ、タイトルのテロップ。
少し暗転してコンビニの袋を持ってる拓也と並んで歩く愛理。拓也が急に立ち止まる。
拓也「ここ」
愛理「え?」
拓也「ここで潰れてたんだよ」
愛理「ここで?」
3路上・夜
~昨日~
潰れて座ってる愛理。そこに拓也が近寄って来る。
拓也「ねえ、こんな所で寝てたら襲われちゃうよ」
愛理「・・・・」
拓也「タクシー止める?」
愛理「・・・お金もうない」
拓也「少しも?」
愛理「・・・少しもない」
拓也「・・・」
拓也、財布から7千円を出して。愛理の手に握らせる。
拓也「今これしか手持ち無いから、これで帰れる所まで帰りな。止めてくるから待ってて」
愛理、拓也の手を掴んで、お金を返す。
愛理「・・・うちに、帰りたくない」
拓也「なんで?」
愛理「・・・なんでも」
拓也「実家?」
愛理「彼氏と二人暮らし」
拓也「・・・そっか、じゃあ彼氏に連絡して迎えに来てもらいな」
拓也がその場を去る。
愛理「・・・・」
しばらくして拓也戻って来る。
4拓也の家玄関・夜
二人入ってくる。
拓也「適当に座って」
愛理「トイレ借りてもいい?」
拓也「そっち」
愛理「ありがとう」
愛理トイレに入って咳をする(吐く)。拓也がクラシックを流す。
5拓也の家ベランダ・夜
拓也がベランダでタバコを吸ってる。
6拓也の家・夜
愛理が部屋に入ってくる。
拓也「すっきりした?」
愛理「・・・うん。ちゃんと汚さないように吐いたので」
拓也「いいよ、別に気にしなくて」
愛理「・・・じゃあ、帰ります」
拓也「飲み直さない?」
愛理「え?」
拓也「帰りたくないんでしょ?」
7拓也の家・夜
~時間経過~
二人飲んでる。
愛理「お風呂場に茶髪の長い髪の毛があったの(キャストによって台詞変更)、それって浮気してるって事だよね?」
拓也「・・・」
愛理「でも・・・何も言えないの私・・・」
拓也「・・・怖いの?」
愛理「・・・怖いか・・・そうなのかもしれない」
拓也「捨てられるのが怖いの?」
愛理「・・・そりゃ怖いよ」
拓也「そっか~。まあ、怖いよね」
愛理「彼女いる?」
拓也「・・・いるよ」
愛理「私の事家に入れて怒られない?」
拓也「出張で海外にいるから」
愛理「海外・・・寂しくないの?」
拓也「・・・最初だけ、もう慣れた」
愛理「ほんとに?」
拓也「・・・・」
愛理(声)「体が勝手に動いた」
愛理が拓也を抱きしめる。
拓也「・・・浮気になるよ」
愛理「抱きしめただけじゃ浮気じゃない」
拓也「そうかな?」
愛理「・・・うん」
拓也「じゃあ」
拓也がキスをする。
拓也「これは?」
愛理「・・・浮気」
拓也「・・・そっか、何が違うのか」
今度は愛理の方からキスをする。
愛理「一回しちゃったら、何回しても一緒」
拓也「意外と悪い子なんだね」
愛理「大丈夫、彼氏の前ではいい子だから」
拓也が押し倒す。キスを数回する。拓也が服を脱ぐ。
愛理「ねえ、電気消して」
拓也「電気?・・ああ、ごめん」
拓也電気を常夜灯にする。
拓也「これぐらいで良い?」
愛理「うん」
再び、キスをする。愛理の服を脱がす(素振りのみ)。首筋にキスをする。
8路上・朝
拓也「思い出した?」
愛理「ちょっと、思い出したくなかった」
拓也「そっか」
二人、歩き出す。
9拓也の家・朝
二人でご飯を食べる。拓也がテーブルの上に原稿用紙を広げて、書きながら食べる。
愛理「何書いてるの?」
拓也「小説、一応これでも小説家だから」
愛理「へー。パソコンは使わないの?」
拓也「こっちの方が筆が進む」
愛理「もったいないねパソコン」
拓也「他で使ってはいるから」
拓也は書いて、愛理は食べる。
拓也「ねえ、まだ名前聞いてなかった」
愛理「そういえばそうだね」
拓也「言いたくなかったら言わなくていいよ」
愛理「別にいいよ。菊池愛理」
拓也「・・・あいあいだね」
愛理「あいあい?」
拓也「呼び方」
愛理「あー、名前は?」
拓也「拓也、本多拓也」
愛理「じゃあ、だーたくだね」
拓也笑う
拓也「初めてそんな風に呼ばれた」
愛理「え?こうやってあだ名付けたりしない?」
拓也「わかんない」
二人で笑う。
拓也「あいあいは何の仕事してるの?」
愛理「居酒屋のアルバイト」
拓也「だけじゃないでしょ?」
愛理「・・・だーたくって鋭いよね」
拓也「人間観察が趣味だから」
愛理「・・・女優」
拓也「へー」
愛理「へーって、それだけ?」
拓也「いや、意外じゃなかったから」
愛理「・・・」
拓也「褒めてるんだけど」
愛理「わかりにくい・・・だーたくは小説家だけ?」
拓也「・・・うん」
愛理「凄いじゃん!」
拓也「・・・って言っても、ここの家賃と光熱費は彼女が払ってんだけどね」
愛理「そうなの?」
拓也「仕事部屋が必要って話したら、私が払うって、条件付きだけど」
愛理「条件?」
拓也「彼女が出張から帰ってきたら婚姻届けを出すしかない」
愛理「・・・嫌そうに言うんだね」
拓也「縛られてる感じがするから」
愛理「・・・彼女の事好き?」
拓也「大好きだよ」
愛理「・・・そっか」
拓也「あいあいは?彼氏の事好き?」
愛理「・・・好きかな」
拓也「じゃあ、お互い二番目だね」
愛理「・・・」
拓也「この関係がって事だからね」
愛理「わかってるよ」
拓也が書いてる。愛理が食べてる。
拓也「来たい時に来たら良いよ。だいたい家にいるから、たまにここで打ち合わせしてる時はあれだけど」
愛理「・・・ほんとに良いの?」
拓也「逃げる場所は必要だから」
愛理「・・・ありがとう」
拓也「お互いがフリーになったら、この関係はおしまい。そういうルールで良い?」
愛理「・・・わかった」
10拓也の家
二人の生活のダイジェスト{執筆してる様子、朝の準備をしてる愛理、二人でコンビニに行く様子。行為中の描写(お互いの顔・布団からはみ出ている足・繋いでいる手・終わった後に二人で話している様子)※それを繰り返す}
愛理(声)「私が拓也の家にいる時間が少しずつ増えていった。呼び方もいつの間にかだーくんに変わってた。会ったら毎回同じ事を繰り返す。ただそれだけの単純な時間・・・それが、幸せだった」
二人で並んで歩いていて、愛理が手を握ろうとするけど、止める。
11拓也の家・夕方
そういう行為をしている拓也と優子(演技リハで調整)。終わった後
優子「ねえ、拓也って彼女いるの?」
拓也「いるよ」
優子「なんでこんな事してるの?」
拓也「詮索しない決まりでしょ?・・・トイレ」
拓也が服を着てトイレに行く。
優子「・・・」
拓也が戻って来ると、優子がベッドに座って服を着ている。
優子「今日も最高だったよ」
優子がお金を渡す。
拓也「どうも」
優子「またよろしくね」
優子がキスをして去っていく。
拓也「こちらこそ」
優子が出て行く。
拓也「風呂入ろ」
拓也が鍵を閉めて風呂場に行く。
12拓也の家・夜
拓也が執筆。愛理がドライヤーで髪を乾かしてる。枕の上に髪の毛を見つける。それをゆっくり取る。
13拓也の家・昼
LINEの音。
愛理(LINE)「いまからあいたい」
拓也「・・・今からか・・・」
優子がお金を渡す。
拓也「どうも」
優子「またね、拓也」
優子がキスをして出て行く。
拓也「・・・風呂入ってから返そ」
ドアが開いて愛理が入ってくる。少しの沈黙。
拓也「おかえり」
愛理「だーくん・・・さっきの人誰?」
拓也「・・・担当の人」
愛理「・・・そう」
沈黙
拓也「・・・ごめん・・・嘘、さっきの人はお客さん」
愛理「お客さん?」
拓也「俺はここで女の人にそういう事をして、お金を貰ってる」
愛理「・・・」
拓也「・・・」
拓也が無言で窓を開ける。
愛理「彼女はこの事知ってるの?」
拓也「・・・先風呂入っていい?」
拓也が風呂に向かうのを止める。
愛理「ねえ、彼女はこの事知ってるの?」
拓也「一緒に入る?」
愛理「ふざけてないで、ちゃんと答えてよ!」
拓也「・・・あいあいには関係ないでしょ?二番目なんだから」
愛理「・・・・」
拓也「・・・ごめん。言い過ぎた」
愛理「私、彼氏と別れたの・・・捨てられた・・・だからもう二番目じゃない」
拓也「・・・そっか、じゃあもうこの関係はおしまい」
愛理「なんで?」
拓也「ルール違反だから」
愛理「・・・だーくんも別れたの?彼女と」
拓也「別れたって言うか・・・俺そもそも彼女いないんだ」
愛理「・・・え・・・どういう事」
拓也「そのまんま、彼女いないの」
愛理「出張は?」
拓也「・・・嘘」
愛理「ここの家賃は?」
拓也「自分で払ってる」
愛理「小説家の給料・・・じゃないよね?」
拓也「・・・まあね」
愛理「・・・小説のネタ探しとか?」
拓也「・・・いや、普通に仕事としてやってる」
愛理「・・・ありえない・・・今まで騙してたの?」
拓也「・・・嘘をついてた事は謝る。でも、別に俺に彼女がいてもいなくてもあいあいには関係ないよね?」
愛理「・・・関係あるよ」
拓也「どんな風に?俺に彼女がいなかったらうちに来てなかった?そんな事ないでしょ?」
愛理「・・・・」
愛理の頭をなでる。
拓也「俺ね、小説家としてデビューして、最初の頃は調子良かったんだけど、すぐにスランプになって食えなくなったんだ。小説書くのは好きだから辞めようとは思わなかったけど、とにかく食えなかった。家賃も限界まで滞納して、水道も止まった時にこの仕事を紹介してもらったんだ。そういう事するのも嫌いじゃないし、在宅だし、思ってたよりも若い人が多いから苦じゃないし、リピーター多いから毎日働けるし・・・でも、彼女だったら嫌でしょ?彼氏がこういう仕事してるの。俺が彼氏だったら、彼女がこういう仕事してるの嫌だもん。だから彼女は作らないんだ一生。結婚もしない」
愛理「私とも仕事だったの?」
拓也「違うよ・・・お金貰ってないじゃん?」
愛理「それが基準なの?」
拓也「それに、俺、結構あいあいの事好きだから」
愛理「なにそれ?・・・なにそれ?・・・私が支えるから、そういう仕事辞めてって言ったら?」
拓也「そういうの嫌いなんだ・・・縛られてるみたいで」
愛理「・・・・」
拓也「ごめんね・・・今はあいあいの方が辛いのに、でもここで俺が優しくしたらあいあいはもっと傷つく事になると思う・・・だからもうこの関係はおしまい」
愛理「・・・いくら?」
拓也「ダメ」
愛理が財布からお金を取り出す。
愛理「手持ち全部、これで何分?」
拓也「あいあい、ダメだよ」
愛理、お金を押し付けて拓也を押し倒してキスをする。
愛理「お金払ったんだからちゃんと仕事して」
拓也「一日一回って決めてるんだ」
愛理「知らない」
愛理止まらない自分の服も脱ぎだす。下にはキャミソールを着用している(カメラワーク打ち合わせ)それを脱ごうとした所で台詞。
拓也「あいあい、お腹すかない?」
愛理の動きが止まる。
拓也「コンビニ行こ」
沈黙
愛理「・・・うん」
14路上・夜
二人が並んで歩いている。拓也はポケットに手を入れている。
拓也「・・・夜なのに暑いね~」
愛理「ねえ、だーくん。最後に一つだけお願い聞いてくれる?」
拓也「ん?何?」
愛理「手を繋いで欲しい。ダメかな?」
拓也「全然いいよ」
拓也ポケットから手を出し、手を握る。
愛理「・・・・」
二人で歩いていく。
fin