2021/06/02 20:00

      「日本の国債が破綻しない訳」             

 二〇二二年四月二〇日(月)午前一〇時。

 この日は新年度を迎えた財務省の総額一〇兆円の国債入札日(一

〇年債)。年度始めは入札を求める総額が多い。霞が関に建つ財務

省ビルの五階の会場は何時のも準備を終え静かだった。毎回の入札

では定刻の一〇分前に各金融の担当者が首からアイデンティティカ

ードを下げ姿を見せる。それを木槌を前にした財務省の進行役と担

当者が待つ。会場の壁時計が九時五〇分を示した。

 今日は出足が遅いようだ。まだ誰も会場に入って来ない。

 一〇時になった。入場者は一人も居ない。財務省の職員がざわつ

いた。進行役は開始の合図を打つ木槌を前に手持ち無沙汰。定刻に

なっても入札者が一人も現れない事態は過去に一度もなかった。

 一〇分が過ぎた。結局一人も来場しなかった。

 一〇時二〇分。来場者無し。

 進行役が「本日の入札は不調。これにて閉会」と木槌を叩いた。                                  

 今日の事態は不調ではない。不調には入札者が存在している。国

債入札の不調とは入札と財務省の応札希望額に開きがあり落札でき

ないを意味する。前代未聞の不開催なのだ。

 一〇時三〇分。激震が走った。マグニュチュード九をも超える激

震が日本を襲った。しかしこの激震では死者行方不明者は発生しな

い。それでもかつてない未曽有なる激震。                        

 一〇時四〇分。テレビ各局はスーパーを流した。

「本日予定されていた一〇兆円(一〇年物)の国債入札会場に入札

者が一人も現れず不調に終わりました」。NHKは番組を臨時ニュ

ースに切り替え、財務省ビル前から実況中継。

 日経平均株価が急落。下げるスピードが速い。売り一色。十一時

には一〇〇〇円も下げた。その勢いは止まらないどころか増してい

た。先が見えないパニック相場。

 東京市場のドル円は一気に三円も、円が売られ、ドルが買われて

いた。株価と同様の円売りの勢い。上田ハーローのボードは百十七

円を知らせている。一〇年物国債金利も急騰。一%を超えた。かつ

てのギリシャの再現を思わせる急騰。サーキットブレーカーが発動

される寸前。国債金利が上昇するとは当該国債の価値の下落。

 十二時。現物株取引の前場が終わった。二五〇〇円ほどの下げ。

日経先物と為替取り引きには昼休みがない。十二時三〇分には三〇

〇〇円を突破。ドル円は一一八円を超えた。何処かで上げげ止まる。

何処かでドル円も上げ渋る。しかしその何処かが今は見えない。

「一九八七年のブラックマンデーや二〇〇八年のリーマンショック

どころの騒ぎではない」と株式市場関係者が叫んでいた。それをテ

レビカメラが捕らえていた。

「日本が壊れてゆく」とNHK特番のコメンティター。

 この日の東京市場の日経平均株価終値は一七七三四円。前日比五

三九一円の下げ。ドル円は一二〇円に達した。一〇年物国債は午後

一時二〇分に取引停止。その時点で一.三%に跳ね上がった。史上

空前の買いが買いを呼び、売りが売りを呼んだ市場の大混乱。

 世界の金融市場はウェリントンが幕開け。間もなくして東京。

 一六時三〇分からLondon。二十一時三〇分からはNYがオ

ープンする。NYは翌朝の五時三〇分まで続く。東京の為替市場は

七時スタート。その間にウェリントンとシドニーが四時から始まる。

要するに眠らないのが金融市場の特性。

 東京発の大激震はLondon NYを津波となって襲う。それ

らがどうなるのか。二七時で引けるNYでの日経平均先物と二九時

三〇分のドル円の終値は…。翌朝の東京はどうなるのか。テレビ各

局の特番は一八時から始まった。その共通テーマはLondonと

NYの動向。そして翌朝以降の東京。

 事態を説明できても誰もこれからを語らない。

「国債を国内で消化できないとなれば他の方法を早急に準備する必

要がある。国債を買ってもらわなければ国家予算が空手形になる。

これを避けなければ日本が成り立たない」


…こいつは馬鹿。当たり前だろ。テレビってこんな程度なんだ…


「今のいち時を凌がなければ。日銀に一〇兆円を引き取ってもらう

か、政府の特別会計の中から一〇兆円を拠出してもらい安定させな

ければ金融市場の動揺は治まらない。外国に買ってもらうのは急場

の対処に間に合わない。悠長なやり方ではダメだ」 

                                                

…こいつはアホ。何も分かっていない。特別会計とは目的以外に資

金を拠出できない。だから特別会計。それと日銀は直接国債を購入

できない。金融から買い取るほか術がない。定めを知らないアホ…                     


「突然何の前ぶれもなしに金融が一斉に手を引くはずがない。財務

省は何故手を打たなかったのか。何かしらの予兆が在ったはずだ」


…この発言者はまあまあだ。けっこう分かっている…


 確かに謀反の予兆は在った。財務省は三つのメガバンクの担当者

から国債に向き合う現況を伝えられていた。。

「現行の〇.二八%では国債の買い入れは難しくなる一方。買い入

れを続けると収益を悪化させる。おまけに日銀当座預金の金利は〇

.〇五%。逆ザヤに成りかねない。これも収益を圧迫している」

「総預金量の一五%は決済資金として保有したいと常々資金運営管

理者から申し入れられている。その気持ちは切実だ。我々は『拓銀

』の破綻情況を知っている。日々の決済資金は五%ほどだが季節需

要によっては一〇%に接近する。少しは余裕が欲しい」

「景気が良くなれば税収が増え、預金量も増えると首相は言う。そ

の理屈は分かる。しかしながら景気が良くなっている実感は我々に

は無い。その証左として税収は横這い。物価上昇も二%には未だ遠

い。国債発行残額は着実に増えている。預金量は微増。この微増は

景気の良し悪しとは無関係。データが証明している。我々は首相の

「賃上げ」の求めに応じて四〇〇〇円以上もベースアップした。全

行員換算では年間二億円強の人件費増。これを営業利益で埋めなけ

ればならぬが見通しは立っていない。それにも増してトランプの関

税引き上げが日本を不安定、不透明に陥れている。国債を買う意欲

と気持ちのゆとりを削ぎ落している。今年度の償還分を再購入する

のは可能。だがトップの判断になる」

 これらに対して財務省の担当者は「皆さまの切なる実情を上司に

報告します」。担当者は上司に「切なる実情」を報告した。

 上司は金融の愚痴と看做した。

 こうして二〇二二年四月二〇日(月)の午前一〇時を迎えた。         


 国債にまつわる不安を煽り過ぎたかも知れない。

「日本の政府借金は一〇六二兆五七四五億円に達しました。国民一

人当りは約八三七万円を背負っていることになります」

 NHKのニュースでは日本政府の国債発行額増を報じる時には必

ず国民一人当りに換算した額が付け加えられる。中学一年から私の                                                 

記憶に残っている。この報に接する度に、日本人は莫大な借金を背

負っている。子供の私も八三七万円なのだ。                                  

 この稿に向き合った時、NHKの「一人当り八三七万円を背負う

」とのコメントはまったく意味が無いと知った。国民は政府の借金

に連帯保証していない。「日本の台所は大変なんだ」と獏とした不

安を煽るだけの告知。このコメントの原稿を書きアナンサーに読ま

せた人はマクロ経済を知らずしてミクロ経済の延長で日本政府の財

務状況を書いている。よく経済学者から「やめろ」と言われなかっ

たものだ。実は経済学者も分かっていないのでは…。

 家庭と政府の借金を同次元で捉えられない。

 政府は市井の金融からの借金も可能。借金の他に債券を発行でき

る。それが国債。家庭は債券を発行できない。ここが大きな違い。

他にも在る。紙幣を発行できる日銀が政府を護っている。家庭は誰

からも何処からも護られていない。NHKはここを無視してる。

 国債は金融が入札方式で買い取る。今ではその発行総量の半分近

くの四四八兆円を日銀が金融から買い取り保有している。金融は入

札に参加して国家保証の財務省発行債券を安心して買う。財務省の

返済は税収から。税収で返済できぬ時は新規に国債を発行して返済

に充てる。よって政府の資金調達は順調。当事者は借金にまったく

喘いでいない。それ故に借金が年々膨らんでいても資金調達に苦し

まず脂汗も流していない。しかしながら政府の新規発行債券とで無

限ではない。それは誰もが知っている。その限界が分からないだけ。

 政府も財務省も日銀も黒田総裁も限界を分かっていない。分かっ

ていないから未だ大丈夫だろうと国債を発行する。これからも日本

の国債発行残高は増え続ける。新規の国債発行によって日本の経済

は支えられている。一方日本の人口は右肩下がりで減り続ける。一

人当たりが背負う借金総額は益々増える。

 時折、ほんとうに大丈夫なのかと思う。

 政府借金は国債だけでは無い。金融機関からの借入金。他には各

省が発行する短期証券(政府債と政府機関債)。これらは各省庁の

運転資金。配分された予算の執行と事業遂行による資金決済のタイ

ムラグを調整と説明されているがおかしさも在る。現在の借入金は

五五兆円。短期証券が八六兆円。年々、額が増え、固定化している。

運転資金ならば変動するのが当たり前。増額固定化は隠れた借金の

存在。運転資金とは性質の違う借金が含まれているのでは…。これ

への説明がない。それと直ちに返済の義務は発生しないが一七九七

の各自治体発行地方債の連帯保証は政府。                                 

 ここでは国債だけに絞る。

 政府予算は一〇〇兆円弱。これは毎年少しずつ増えている。

 税収は毎年五五兆円を上回る程度。税収に増減があっても驚くほ                                             

どの数値では無い。税収で賄えない予算の不足分は国債で補う他に

方法が無い。予算には過去発行分の国債の償還も含まれている。二

〇一六年度は二十三兆円ほど。予算における国債依存度は何と四〇

.五%。それでも政府は自国内での国債消化に自信を持っている。

これが日本国債の信用度に繋がっている。いわゆる安全資産として

の価値が高い。これは世界の金融市場の見方。                               

                                                             

 政府が国債に頼るようになったのはバブル崩壊の一九九二年度予

算から。前年度の国債依存度は七.六%。前々年度の一九九〇年度

は八.四%。一九九二年度は景気低迷を打開しようと公共投資に予

算を積み増し一〇.一%に。それ以降、依存度は右肩上がり。                          

 一九九九年度予算案を閣議決定した後の小渕首相は「大罪を犯し

たような心境」と語った。依存度が前年度の二〇.〇%から三七.

九%に急上昇した。この時には金融危機が深刻に。                                    

 二〇一三年四月。黒田日銀総裁が誕生。当初は「大胆な金融緩和

」。次いで「異次元の金融緩和」を政策の柱に据えた。

 日本はデフレに喘いでいた。ドル円は一時八〇円を割り込んだ。

日経平均株価も低迷を続け八〇〇〇円を行ったり来たり。出口の見

えないどんよりとした毎日が続いていた。『喪われた二〇年』は終

わっていなかった。それを終わらそうとする黒田日銀総裁の試み。

 黒田総裁は各金融が抱えている国債を買い取った。どんどん買い

取った。買い取ると各金融に資金が溜まる。それを市井に流す。流

すとは各企業への貸し付け。そうなれば金融危機以降に各企業が逼

迫した資金確保に明るさが増し投資活動が活発になる。

 同時に公定歩合を切り下げた。これによって国債金利が下がる。

政府の金利負担が減り、銀行が日銀から借り入れる際の金利も下が

る。そうすることで各企業への資金需要に応え易くなる。こうした

政策は現在も続く。追加も在る。金融機関が義務付けられている日

銀当座預金の金利がマイナス。金融機関は預けれほどに金利を日銀

に支払う。預けるより貸し出した方が得。通貨供給量を増やすなら

経済規模が拡大しインフレに寄与する。先ずは物価の上昇。上昇す

れば賃金を上げなければならぬ。それは景気の好循環に繋がる。

「デフレからの脱出。インフレ率年二%達成」

 これが黒田総裁の到達目標。

 日経平均株価は瞬く間に一万円を超え右肩上がりの上昇。現在は

二万円を超えている。ドル円も円が売られドルが買われ続けた。一

〇〇円の大台を突破して落ち着いた。現在は一〇五円から一二〇円

の間で上がったり下がったり。しかし「大胆な金融緩和」と「異次

元の金融緩和」でもインフレ率が年二%に届かない。それでも新任

の黒田総裁の手腕によって日本経済は一時期の最悪を脱出した。                                                                                  

 二〇一七年の日本のGDPは五四六兆四八八六億円。

 二〇一一年と一二年に五〇〇兆円を下回ったが一三年から五〇〇

兆円を回復し以降、着実に伸びている。一八年は五五五兆円と予測

されている。GDPは年間の国家経済規模の動向を表わしている。

日本経済のマキシムを数値で表している。

 一三年からのGDPの増加は異次元の金融緩和の成果と云えなく

もないが、それほど税収が増えていない。このギャップは国民が消

費活動を控えている一語に尽きる。物価が上昇しないと消費が活発

にならない。インフレ率年二%実現の道程は遠い。

 GDPの倍近くまで膨らんだ日本の借金。公言しないが政府は借

金の返済を諦めているように思える。プライマリーバランスは政府

予算の健全性を表わす指標であって借金を返すために用いられる指

標では無い。もう二〇年も国債に依存した予算を組み、プライマリ

ーバランスの「▲」を続け、借金を増やし続けてきた政府。

 諦めたと指摘されても政府は反論できない。

 私はグゥの音が出ないほどの反論に出会いたいと願っている。

 二〇一六年の日銀の国債保有額が四一六兆円に達した。今は四四

八兆円。日銀保有額は二〇一二年一〇月二三日に初めて一〇〇兆円

を突破。一〇四兆九二五〇億円。四年の間で如何に買い取ったのか

が分かる。ここで政府借金の内訳に触れてみる。


■二〇十六年(借金総額一〇六二兆円)

 国債    …九二三兆円(四一七兆円が日銀保有分。四五%)

 政府短期証券… 八五兆円(内訳比率に特段の変動なし)

 借入金   … 五四兆円(     〃      )


 現在の国債金利の平均は年〇.〇二八%。本当に安い。金利が高

いと市場参加者には魅力的に写るがリスクを取る判断と覚悟が要る。

取るのか、取るらないのかが悩むところ。一〇年も保有するとその

間に何が起きても不思議はない。これが日本を取り巻く世界情勢。

ギリシャは市場から締め出され取引停止に。こうなると国債は紙切

れ同然。破綻した企業の株券と同じ憂き目。

 日本の国債は日銀に買い取ってもらえる。

 これが金融の安心感。だから国債の入札に応じる。                                                                                                                                 

 一兆円を一年間保有した時の利息は二八億円。それが満期の一〇

年になると複利計算された元利合計は…?…。

 計算をお願いします。

 それを政府は赤字国債を発行して国債購入者に支払っている。                                  

 (九二三兆円)—(四一六兆円)=(五〇七兆円)                        

 この五〇七兆円(二〇一六年度)が主に日本の金融の保有分。

 ずいぶん減った。

 これが日本国債の国内消費の内実。

 日銀が保有する国債の限度は誰も分からない。

 繰り返すが誰も分からないから政府は国債に依存した予算を組む。

 黒田総裁の国債買い取りは危うい実験なのである。

「イギリスの中央銀行の買い取り率は五〇%を超える。ナポレオン

戦争時には六〇%に達していた。それでもイギリス国債は破綻しな

かった」。ここが黒田総裁の拠り処なのは間違いない。

 黒田総裁は「保有分の増加が年間八〇兆円が上限の目安」と言う。

だから現行の増加程度では大丈夫と言いたいのだと…。けれども年

間八〇兆円の増加でも大丈夫との根拠は示されていない。おまけに

日銀の国債保有額の上限の根拠も示されていない。


 次に日本の金融資産を調べる。

 日本の過去から現在に繋がる経済活動の集積が金融機関の総資産。

一八〇九兆円。この総資産の内、預貯金は五一.五%の九三一兆円。

 預貯金は最も流動性の高い資産。国債を買おうとすれば何時でも

直ぐに買える。冒頭でも触れたが金融機関の日々の決済資金の上限

は総資産の一〇%。余裕を持たせるならば一五%。一〇%で約一八

一兆円。一五%では約二七一兆円。これらが金融が使えない資金。

ここでは一〇%で考えてみる。すると金融機関が自由に使える資金

は七五〇兆円となる。これをすべて国債購入に充ててしまうと企業

への融資が不能となり経済活動が止まる。では後どれだけ金融機関

が国債を購入できるのかは不明。不明ではあるが、現在の融資・国

債・保有株式・社債・金融商品先物取引・為替への投下資金の配分

割合を損なえない。配分割合の突然の変更でも金融市場は大混乱。                               

 発行国債が自国の預貯金で消化出来なくなったからと云って政府

の国債による資金調達が不能になる訳ではない。直ちに国債破綻し

ない。国債購入の手立ては他にも在る。

 金融市場で外国に買ってもらう。しかし外国人投資家たちは低金

利の日本の国債に魅力を持っていない。国内企業が溜め込んで投資

の道筋が決まらない内部留保資金で買ってもらう。けれども日本の

企業は外国人投資家と同様に国債金利に魅力を感じていない。

 国債の国内消費を続けてきた日本。それゆえ世界の金融市場から

安全資産と看做され信用を築いてきた。敗戦から立ち直ると伴に築

いてきたこの信用はとても大切。私はこれからも国内消費を続ける

のが日本の進む路と考えている。                                 

 日本人の美点は勤勉と貯蓄。貯蓄額総量の伸びが借金の増加率を

上回っている間は安泰と財務省は考えている。                          


 日銀の選任権限は通貨供給量の増減と公定歩合決定。現行の国債

買取りを繰り返し、続けた時には、何時か必ず、限界に到達する。

限界とは入札不調が示現して国債が売れ残る。冒頭がそれで在る。 

                      

 私たち国民は無防備のまま異常事態に直面してはいけない。常に

注意が必要。備えあれば憂いなしの格言が活きる。注意とは監視。


①ドル円の動向(一日で二円以上の上下動は注意。三円は警戒。四

        円となると異常)

②日経平均株価(一〇〇〇円以上の下落は注意。二〇〇〇円以上は

        警戒。三〇〇〇円以上になると異常事態発生)

③NYダウ  (一〇〇〇$以上の上下動は注意。二〇〇〇$以上 

        は警戒。三〇〇〇$以上は異常事態発生。テロに

        遭遇・戦争勃発・内乱による現体制崩壊等々)

④一〇年債金利(年〇.〇二八%の金利が一気に〇.一%に上昇し

        た時は異常事態)

 

 この四つを監視するだけで注意は充分。

 お薦めはネット証券に口座を開設する。未成年でも親の承諾があ

れば開設可能。私はネット証券での取引を薦めているのではない。

此処にはリアルタイムの情報が盛り沢山。投資情報をクリックする

と世界の政治情勢と経済指標によって上下する金融商品の動向が瞬

時に把握できる。中でも各国の一〇年債の金利が一目瞭然。この金

利は各国の公定歩合と連動している。他にも金融市場に参入してい

る人たちの関心事が瞬時に分かる。

 私たち国民は如何に備えれば良いのだろうか…。

 毎年の予算編成と金融の総預金量(生保の資産勘定を含む)を注

視するのが備えのひとつ。これは監視とも云えるが新規の国債発行

が日本の預貯金で賄えるのか、否か。この分析なくして危機到来が

見えてこない。繰り返しになるが日銀が国債保有を増やしたとして

新規発行国債の国内消費を続けるには金融の預貯金量が目安になる。

 新規の国債購入に充当できる割合は総預金量の三割程度。ならば

これから国債に振り分けられる資金は二五〇兆円程度。これを超え

た時には赤信号が点滅する。

 いま私が恐れているのは何らかの理由により日銀が通貨供給量の

縮小を狙い金融に保有国債を買い取らせる方針を打ち出した時。日

銀が二〇一二年の一〇〇兆円程度まで保有国債を減らすならば金融

の預貯金量は三一七兆円も減る。とうに国債保有の上限を超えてい

る。▲六七兆円。これは国債の国内消費が、遂に、限界を超えた…

を表わしている。私にも日銀の国債保有額の上限が見えない。                          

 現状の日本経済は国債によって支えられていると述べた。その内

実を紐解くと「日銀の国債保有によって支えられている」に到達。

 備えとは、国債は政府の借金であって『国民の借金では無い』と

の心構えと、腹の括り方が、私たちの未来を決める。                    

 新規国債発行分が国内消費できない事態を迎えた時には、日銀は

金融の国債保有分から新規国債発行分以上を買い取り、その資金を

新規に振り向けろと手を打つ。それでも激震が走る。それがつまび

らかになると「いよいよ日本も国内消費ができなくなった」。これ

は破綻ではない。一歩手前。それでも金融市場の動揺は治まらない。

日本が危ない。それが冒頭の金融商品が急激に上下する動き。信号

が黄色から赤に変わる寸前。                                


 日本国債が破綻した時にはハイパーインフレが発生する。                                                            

 ギリシャの破綻は教訓にならない。日本はギリシャの二十五倍の

経済規模。IMFはその存在意義故に世界銀行と共に救済に乗り出

すだろうが、IMFのキャパシティを遥かに超えている。単独では

無理。日本の再建には全世界が救済の手を差し伸べなくてはならな

い。アメリカは勿論ドイツも中国も。三ケ国の足並みが鍵。特に中

国が欠けては再建に向けての資金量が不足する。

 この足並みが揃わず、不調に終わった時の日本の持札は令和の徳

政令しか残されていない。通貨を現行から一〇〇倍に引き上げる。

すると日本の借金は一〇〇分の一に縮小される。勿論、国内外は大

混乱に陥る。けれども日本は大混乱を既に経験している。

 馬鹿げた空想と思われるかも知れないが、この手法で日本は敗戦

後の絶望から立ち直った。令和の徳政令は大混乱の下でしか威力を

発揮しない。平常時においては禁じ手。これを財務省他が研究して

いないと言うなら嘘。

 これが政府の究極の備え。

 私たちは赤信号が点滅する直前には備えを終えていなければなら

ない。点滅してからでは遅い。黄色信号は四秒間。その後に赤に変

わる。この四秒間で世界が変わる。赤に変わると判断した時には迅

速が命。グズグズできない。判断の速さと行動の迅速が要。

 手持ちの金融商品の全てを現金化。預貯金を解約。できる限りの

現金を集めての$建て預金。$は世界の基軸通貨なのだ。おまけに

円の価値が失墜した時には$の価値が反比例で高まる。

 手持ちの現金は僅かで良いハイパーインフレによって直に役に立

たなくなる。クレジットカードも在る。電子マネーも在る。当面は

手持ちの現金が無くとも凌げる。仮想通貨には手を出さない。異常

事態発生時に際して先行きが全く見えないから。

 食料と日用品を買い置く。地震の時の備えと同じ。違いは水と電                          

池と携帯ラジオと懐中電灯。これらは必要ない。一ケ月もあればか

なり落ち着く。そうなれば次の一手を打てる。

 私は「政府に騙された。財務省を信用していたのに裏切られた」

と言いたくない。そして「これから日本はどうなるのか」と嘆きた                          

くない。それでこの稿を書いた。ちなみに一兆円の国債を一〇年間

保有した時の元利合計は一兆二八三億五五四四万円。

 お騒がせしました。

                                      

        ・・・・・・・・・・・・・・                    

 

 冒頭と終わりの美子は遊んでいる。書くのを楽しんでいる。余裕

をぶっかましている。それもこれも『恒久制裁措置』に辿り着いた

余裕。『破綻しない理由』の冒頭は「説明調の論文もどきになって

しまわない工夫」と美子は平然と言うに決まっている。その工夫が

冒頭。余裕でも平然でも構わないけれど上手い。

 氷空ゆめは何時か仲美子の余裕をパクルと決めた

 七人の侍人は「書くだけなら誰でもできる」と言う。わたしたち

は書くのに精一杯だ。精一杯の下で書くと「書くだけなら誰でもで

きる」と思えなくなる。書き上げると「やった」と叫んでしまう。

喜んでしまう。しかし七人の侍人は喜ばない。今度尋ねてみよう。

「どのようにしてその境地に達したのか」。

 この応えは楽しみ。                                    

 国債は政府の借金。他の借金も政府の借金。国民の借金では無い。

こう言い切ったのは美子しか居ないと思う。その美子でさえも政府

の借金の限界を数値で掴めていない。致し方ないのだ。黒田総裁も

分かっていないのだから…。近づこうと、あれやこれやと、試みて

いるけれど、無理やり限界を掴み取ろうと仮説を建てていないのが

良い。身の丈に合っている。代わりに監視と備えを盛り込んでいる。

$建て貯金とは考えてもみなかった。

 徳政令とは江戸時代の遺物と氷空ゆめは思っていた。令和の徳政

令とは通貨切り上げだった。敗戦直後の混乱の時でなければ、お先

真っ暗の時でなければ、大混乱を引き起こす通貨切り上げは実施で

きない。美子は四ケ月の間、苦闘していたのだ。

…早速アップしてもらおう。これで一〇の課題が半分になった。ゆ

っくり感は遥の歩みに似ている。良く言えば着実。我田引水かな…