本日応援メッセージをいただいたのは、金澤ますみさんです。
ますみさんは、「スクールソーシャルワーク」という言葉が、まだほとんど知られていなかったころからその実践をされ、現在はスクールソーシャルワーカーのSVや養成にたずさわっておられます。
そんなますみさんが世話人を務める学校学研究会。学校における「いじめ」「不登校」「学級崩壊」等の問題を、社会福祉学、教育学、心理学、法学、医学、経済学等の個別のアプローチを超えて、学際的に議論し、それを解決していくための方法を探求しようとする研究会です。学校にかかわる専門職や研究者にとどまらず、当事者である子ども本人や保護者、NPOや自治会の人なども含めた地域住民と共有するデザインを検討するという点がユニークです。長瀬も、その共同研究者のひとりです。
本プロジェクトの寄贈先に、そして旧版の寄付先に「夕刻を支える場」があります。学校や放課後児童クラブが終わってから夜にかけての時間や学校が休みの期間に、子どもたちが安心・安全に過ごせるような取組をおこなっている場所の総称です。こうした場の必要性を、私はますみさんを通じて知りました。今の社会に少ししか存在していない、しかし絶対に必要でつくっていく必要のある場所だと考えています。(長瀬)
子どもの権利条約を子ども自身にどう届けるか
桃山学院大学
学校学研究会世話人
金澤 ますみ
私は、スクールソーシャルワーワーカーとして学校に勤務するなかで、日本の学校構造の課題に悩んできました。それは、子どもたちが「困ったな、どうしようかな」という出来事があったときに、そのことを自ら相談する場所が学校の中に存在しないということです。
私たち大人は子どもたちに、「困ったことがあれば、いつでも相談してね」という言葉をついついかけてしまいます。けれども、子どもの立場にたつと、「どこに行けば、誰に、いつ、どのくらいの時間、どのような内容の話を聞いてもらえるのか」ということがわかりません。また、学校に限らず「相談することそのものに価値がある」という教育が少ないため、相談することを恥ずかしいと思っている子どもたちが多いようにも感じていました。
このような課題を共有した学校の先生たちの協力を得て、私は数年前から、子どもの権利条約を子ども自身に届ける方法の一つとして、スクールソーシャルワーカーが教職員と取り組むワークショップ「相談する力を育む授業」「尋ねあう関係を築く授業」をはじめました。
授業では、絵本や音楽
(「子どもの聴かれる権利」がテーマの『タズネウタ』https://youtu.be/zNMYQjSrRZY
「智の物語」後編挿入歌『虹への誓い』https://youtu.be/4470bhl87qM)
などを通じて、「尋ねること」「相談すること」の価値を伝え、子どもたちに相談できる人や方法を伝えることと、相談しやすい学校環境づくりを目的としています。ワークショップ後には、子どもたちが疑問に思っていることや困っていることをストレートに伝えてくれることが増えました。
ちょうどそのころに、長瀬正子さんが旧版『子どもの権利と新型コロナ』を制作されるということを聞いて心待ちにしていました。そして絵本が手元に届いたときは、「子どもの権利」という言葉をはっきりと用いて、子どもにも大人にも大切なことをストレートに伝えてくれる構成に、私自身がとても勇気をもらいました。
そしてさっそく、学校学研究会のソーシャルデザイン検討会の企画『子どもたちに音楽の届け物を(演奏&子ども支援の現場からの報告:2020/11/8オンライン開催)』でも紹介してもらいました。写真はそのときの1枚です。
その絵本がこのたび、新版絵本『きかせてあなたのきもち 子どもの権利ってしってる?』という新しい絵本として誕生するとのこと。私が取り組んでいる出前授業でも、子どもたちと一緒に読むことができるのではないかなと、今からわくわくしています。