2016年9月には、剥がれる問題と並行して重要な出来事があった。
構造も素材もデザインも揃ったと思い込み、浮かれ調子のイカレポンチだった私は、最終目標である店舗での販売について、未だ何の手も持ち合わせていない現実に気づいた。
例えば、個人が経営しているオシャレな雑貨屋であれば、真っ直ぐ行って、相談すれば良い。
だが可能なら、障がい児である息子らが「特別でない、普段の買い物をする場所」として理解している何でもない店舗にお願いしたい。
例えば、ホームセンターや、ショッピングセンターや、デパートなどと呼ばれるまるで普通の店舗。
もっと言えば、これを始めてから、何度もその前に立ったあの場所。
東急ハンズ名古屋ANNEX店のペーパー加湿器売り場。
ペーパー加湿器が並ぶあの場所に、もしも、息子が組み立てたモノが並べば、ひょっとしたらと思う。
店で売っているモノは、誰かが作り、欲しがられたモノで、自分が作ったモノもその一つだと。
ひょっとしたら、もしかしたら、思いがけず、期せずして、ぼんやりとでも、ごく一部でも、それが彼に伝わるかもと思うのだ。
だが、このハゲときたら、ここまできて知識もツテも策もない。
検索の仕方もわからぬアイデアを探す先と言えば、私にはバーしかない。
toride
TORIDEに行くと、瞬殺で東急ハンズ名古屋ANNEX店にツテのある人にツテのある人をご紹介いただいた。バーで人捜しとか、ドラマの探偵みたいですねと書いてて思った。
早速、教わったその方(知っている人だった!)に、相談し、ツテのある人をご紹介いただくことが出来た。
そこで、例によって私は、作ったモノをお見せし、目的をお話しし、東急ハンズ名古屋ANNEX店のご担当者をどうかご紹介して欲しいと、お願いした。
非常にやんわりとではあるが、最終的に断られた。
正直を言えば、当時は「紹介してくれるだけでよいのに」とがっかりした。
だが、今となっては、判る。
あの時私が作った、できたできたと有頂天になっていたモノは、仕事としてきちんと商品を取り扱う店舗に紹介すれば、紹介した人自身の大事な信用を貶めるほどにレベルが低いモノだったのだ。
もし、あの時、その辺のことを気にせずご紹介いただいていたならば、購入者をがっかりさせるレベルのモノであることにも気づかず、いたずらに時間と資金と信用を無くし続けるだけだった。
その時は、そうだと気づいたわけではなかったが、私は、作ったモノについて頭を冷やして考え直す機会を手に入れた。
実際に考え直すべきだったのだと気付いたのは、恥ずかしながら、それから4か月も後の翌年1月のことになる。