こんにちは、実行委員の鈴木です。私は、東日本大震災以前から防災・減災に関するワークショップや研究などを行っています。現在は、一般社団法人減災ラボを立ち上げ、その仲間である山本さんから益城町の広安西小学校の方々とご縁をいただきました。前回のリレーレポートでは、広安西小学校の井手校長先生やPTAの満田さん、万江さんたちとの出会いを紹介させていただきました。
今回はちょっと悲しいお話になってしまうかもしれませんがお許しください。私は東日本大震災で東北のある都市に深いご縁ができました。最初は、ボランティアや仕事などの理由で尋ねていましたが、訪問と年月を重ねるうちに友達が増え、ちょっと寄っただけでも一緒に飲んでくれる仲間ができました。そのメンバーの一人Aさんの話を少しだけさせてください。
Aさんは、仲間から慕われる人望の厚い方でした。同じ被害を繰り返してはいけないと被災体験を語り継ぎ、私にも大事なことをたくさん教えてくれました。震災から5年たった年の3月、突然Aさんはいなくなってしまいました。あんなに明るかった人でみんなの相談に乗っていた人が、突然いなくなるはずがないと多くの人が途方にくれました。私も他の人に聞けないことでもAさんになら聞きやすくよく相談していました。
Aさんが突然いなくなったことに、私はとてもショックでした。「心のケア」が必要です、といっていた私のそばの友人に、自分がその人の何かの悩みに気がつけなかったこと、大事な仲間を失ったこと・・・。もちろん、私ができることなんて微々たることでしかないのもわかっています。
その時、思いました。見た目が気丈な人ほど、みんなから頼られる人ほど、弱みやぼやきを口にだせないんじゃないかと。そして、もしそういったことがあったとしたら、時がたつほど周りも気がつくことが難しいのではないか。私はAさんに甘えていたなと思いました。
実は井手校長先生にお会いした時、Aさんのことを思い出しました。震災1ヶ月後のとても忙しい時期にお尋ねしたにもかかわらず、地震直後からその時までのことをとても明るく、本音とユーモアを交えて教えてくださいました。PTAや多くの方からの人望が厚いこともよくわかりました。
私は思わず「井手校長先生は大丈夫ですか?」と聞いてしまいました。怪訝な顔をする井手先生に、私は今まで人に話したことのなかったAさんのことをお話しました。
そして、話を聞き終わって井手校長先生は「もしかしたら、益城町のお父さんたちも同じ気持ちかもしれませんね。家や仕事を失ったり、お酒も自粛モード。女性たちは避難所の運営の炊き出しなどで共通で作業する時のおしゃべりがあるかもしれないが、お父さんたちも気持ちを晴らしたいかもしれませんね。」と。
そこで、夏か秋かビアガーデンでもやりましょう!というアイデアが出たのですが、私が知っているのはそこまでで、実はその数ヶ月後にPTAのみなさんと協力しあって本当にビアガーデンを実現し、多くの方が楽しまれたそうです。その時の記事を紹介します。
https://this.kiji.is/117073949806919687
©株式会社熊本日日新聞社 2016.6.19
震災から過ぎた時間だけの問題ではなく、お互いに思いやりを持てるか、そのちょっとした想像力を持って「どうしてる?」「大丈夫?」という言葉が掛け合えたら、私とおなじ気持ちになる人を減らせるのではないかな、と思いました。
Aさんに最後にあったのは忘年会の時でした。ふと私の隣で「こうやって、酒のんで、バカなこといっていることって平和だよなぁ」と誰にいうでもなくぼそっと呟いたのが忘れられません。
楽しみながら災害に備える、というのが私のモットーでありますが、その根底にはAさんとのことがあります。だから、益城町であったことを本にして伝えたいのです。
目標期限まであと11日、多大なるご支援をいただきましたが、あともう少しご支援をいただけないでしょうか。
悲しい思いをする人をできるだけ減らし、未来に繋ぐ本にします!
鈴木光(一般社団法人減災ラボ)