おいしいミニ炊き出しブック実行委員の上島です。
今回は、私が代表をさせていただいている(社)防災ジオラマ推進ネットワークの「段ボールジオラマ防災授業」の活動の中で感じている「防災力は地域力」ということを、少し書かせていただこうと思います。
いきなりですが、「防災」は人気がありません。
ひとたび災害が起きると皆さん防災の重要性を思うのですが、ふだんから災害のことを考えてもらうのは、想像以上にハードルの高いものです。
我々の活動が理想としたのは「楽しみながら、知らないうちに地域の防災力が高まっている」というもので、地域の日常の中にいかに防災を溶け込ませるか。その方策の一つが「みんなで段ボールでジオラマを作ること」だったわけです。その意味で、この本がめざすものも一緒だと僕は思っています。
「うちは飲食店なので炊き出しに使える食材のストックがたくさんあって、ガスはプロパンで大丈夫だったんですが、停電で冷凍庫が使えなくなってしまったんです。でも近くの〇〇さんの家は電気が大丈夫だったので、そこに冷凍庫を置かせてもらいながら炊き出しを続けることができて・・」。6月10日に益城町で行われた座談会では、会場に置かれたジオラマに当時の行動をプロットしながら、こんなことが話し合われていました。
大変な中にも幸運な状況があったわけですが、この偶然を必然の行動へとつなげていったのは、PTAなどを通じた普段からの深いつながりです。
防災は、どれだけ立派な設備や充実した情報があっても、それを共有できる地域の土壌がなかれば有効に機能しません。災害時、自分も被災者であっても、周りの人のために何かできればと思う人は少なくないはずです。自分が持っているもので、自分が知っていることで、少しでも誰かの役に立てないかと。けれども非常時、それを実行に移すのは容易ではありません。強いリーダーシップがあって、いろんな条件が整って、いろんな思いが噛み合って、ようやく何かが少し動き出す・・・。
つまるところ、防災の要は地域力だと僕は思っています。それは今回のような炊き出しであっても同じ。幸いにも、食は誰でもふだんから接するものです。お祭りの豚汁やカレー、芋煮会、収穫祭・・・。食を通じて地域の人々がふれあい、理解を深めることは昔からふつうに行われてきました。そこに「炊き出し」の要素を加えてみたら・・。大規模である必要はないと思います。ご近所、お友達のレベルからの、まさに「ミニ炊き出し」です。
この本には、おいしく、楽しくできるミニ炊き出しのレシピが載ります。それらをふだんの暮らしや地域の活動にどう取り入れていくか、そのヒントもお伝えします。本が完成したら、どうかご近所でストック食材などを持ち寄って、炊き出しイベントをやってみてください。周りに農家さんなどの生産者さんや食材の流通業者さんがいたら、声をかけてみてください。
災害が起きてからはもちろん、起きる前のふだんの暮らしの中で、この本が、地域をつなぐ楽しい仕掛けになってほしい。僕らはそう強く思っています。
防災とは、暮らし方そのものだと思います。災害時の学びをぜひ、ふだんの暮らしへ。
最終日まであと1週間あまりとなりました。どうかご支援のほどよろしくお願いします。