2021/07/28 15:33

皆様のおかげで、目標金額である35万円を超えるご支援をいただきました。

本当にありがとうございました。

さて、今回も参加するデザイナーへのインタビューを掲載いたします。

第3回はイヒョンソク。韓国出身の彼がなぜ来日し、服作りを勉強しているのか。話を伺いました。

(聞き手 平野大凱、鈴木遼平)


___まずは通っているコースから。ヒョンくんが通ってるアパレル技術科はどんなコース?


イヒョンソク(以下ヒョ) アパレル技術科はパターンを描くことを学ぶコース。例えば建築家は、建築するにあたってデザインだけじゃなくて設計図もつくる。服も同じで、つまり服にとっての設計図がパターン。それを専門的に学んでるよ。


___なるほど!次に、ヒョンくんの出身は韓国のどこ?


ヒョ 僕の出身は韓国のイルサンというところだよ。


___日本人には馴染みのない地名だね(笑)。どんなところなの?


ヒョ そうだよね。イルサンはソウルの近く!日本で言ったら埼玉?みたいな感じかな。

イルサンは地域事業として、積極的に芸能人を目指す人を支援している。BTSのメンバーの1人もイルサン出身なんだよ!


___そういった地域で育ったんだね。日本に来た経緯は?


ヒョ まず僕が服が好きになったのは小学校の時。当時好きだった子を遊びに誘ったら 「ヒョンくんはダサいからごめん」って断られた(笑)。そこから服に気を使うようになったんだ。


___ショックだね。


ヒョ すごくショックだったよ、その日はショックで泣いたよ(笑)

けれど、服に気を使うようになってから服の楽しさに気づけた。

中学生のとき、Alexander McQUEENのショーをテレビで見たんだ。

彼の作品を見て、とてもワクワクして、、


そのショーを見て着るだけじゃなくて作りたいなと思うようになった。

僕はこの時、ファッションデザイナーになりたいと思った!


そして、最初は彼がかつて通っていたセントラル・セントマーチンズに留学したいと思うようになったんだ。


だけど兵役で軍隊に入り、同じ隊だった服好きな先輩がセントマーチンズに行かなくても日本の文化服装学院で本格的な服作りを学べるって教えてくれた。


その時その先輩が、

「セントマ(セントラル・セントマーチンズ)の学生がデザインした服を、文化服装学院の学生がパターンに起こしていた事がある」と教えてくれた。

そこから文化服装学院に興味を持ち始め、いつしか行きたいなと思うようになってた。


___なるほど!でも海外へ行く決断は勇気がいるよね。ヒョンくんはどうだった?


ヒョ 兵役が終わったら、なんでもできるような気がして勇気がみなぎったんだ!2年間自分の生活が兵役で制限されてたから、解放された時は自分の挑戦をしようと思った。

兵役が終わってホッとして何もしていなかったら、もしかしたら海外挑戦はしなかったかもね。


___兵役の経験がヒョンくんに勇気をくれたんだね。国内の学校へ行こうとは思わなかったの?


ヒョ 国内にも服飾の専門学校はあるけど、韓国で活躍するデザイナーの多くは海外で勉強をしていた。

海外で勉強をした方が視野が広がるし、日本はアジアではファッショナブルな国だと思っていたから、良い経験ができると思った。

しかも文化服装学院は、世界の他の学校に比べて学べる知識の範囲が広いんだよね。

自分の知識や技術が広ければ、例えばデザイナーとして売れなくても、パタンナーとして食べていこうと切り替えができるよね。


___確かにそうだね!ヒョンくんは韓国と日本のファッションの違いはなんだと思う?


ヒョ 日本の若い人達はいろんな系統のファッションを楽しんでいる人がいてとても面白い。韓国の方が服に気を使う人自体の人数は多いけど、あんまり個性はなくて、みんな同じような服装をしているよ。日本の方が個性に富んでるね。


___そんな違いが!面白い。

韓国では日本のブランドは人気ある?


ヒョ もちろん!ヨウジヤマモト、コムデギャルソン、イッセイミヤケは着ている人も多い。イッセイミヤケは自分も着るし韓国ではすごい人気だよ。

もう少し服が好きな人の中ではdoubletなんかもファンがいる。


___post archive faction、kimhekimなど韓国のブランドでも世界的に注目を浴びつつあるブランドがあるよね!


ヒョ そうなんだよ!韓国人と自国のブランドの話をすることはあったけど、日本人とその話をしたことがなかったから話せる人が日本にもいて嬉しいよ(笑)。


___さて、今回のコレクションはどんな服を販売するの?


ヒョ 僕が今回のコレクションのテーマ「文化」から連想して表現するものは、インディアン。

だけど市場にあるインディアンがデザインソースの服は、どれも似たように見えるんだ。

僕は「インディアンの服装」じゃなくて「インディアンの生活や環境、考え」を僕なりに再解釈して、表現したい。


___なるほど、面白い発想だね!どんな方法で表現したい?


ヒョ 実際にインディアンの生活が見られるのは、白黒写真よね。現代の服はその写真から得た物に色をつけて表現しているけど、それはフェイクだと思うんだ。だってその色は実際には分かんないよね。

だから僕も他の人たちと同じインディアンの白黒写真から表現するけど、色は白黒のままにするよ。

あと、昔の壁画からインスピレーションを受けたんだ。壁画からは、人間の生き方だけじゃなくて現代の生活と共通するものがあることとかも分かるんだ。


___さて、過去に作ったこのスカートとジャケットについて聞かせてください。



ヒョ この作品は、なんとなく代々木公園の中を歩いてて気に入った木を見つけた瞬間の気持ちを表現して制作したスカートとジャケット。


撮影場所も代々木公園で、背景にあるのがインスピレーションを受けた木だよ。


ジャケットの全体的なシルエットはアシンメトリーで、パーツごとについてる紐を三つ編みで合わせることで左右非対称であっても自然なシルエットを出せるようにした。


スカートはジャケットとセットになっててジャケットのデザイン要素を目立たせるカーキのセミタイトスカートを組み合わせてみたんだ。


___木からインスピレーション、、、凄すぎる。ヒョンくんのデザインの始め方はどんな風なの?


ヒョ 紙から考え始めることがあるよ。


___紙?


ヒョ そう、紙をぐちゃぐちゃにして、そこから見える形をデザイン画に落とし込んでみると、今まで考えたことがなかった斬新なアイデアが出来上がる。


今回のコレクションでも、そんな僕のオリジナルの方法を取り入れて服を作りたい。


___人と違って面白いね。すごく斬新!


ヒョ 去年デザインが思い浮かばなくてイライラしてた時があって、紙をぐちゃぐちゃにしたら、「あれ?この形いいかも」となったところから始まったんだ(笑)。


この方法だとその時にしか生まれない形を作ることができるから、とても創造的な方法だと思っているよ。


___最後に、ヒョンくんの将来の夢を教えてください。


ヒョ ぼくは舞台衣装に興味があるので、劇団四季の衣装に携わりたいと思っているよ。

文化の校外研修で、オペラ座の怪人を見た時にその衣装に惚れたんだ。

尊敬するデザイナーはもちろんアレクサンダーマックイーンなんだけど彼も最初は舞台衣装を手がけていたんだ!だから自分も舞台衣装に関わる経験をしてみたいと思ってる!