本クラウドファンディングのプロジェクトを立ち上げたネイバーズグッドと公演出演の山下洋輔さん、戸松美貴博さん、そして精神福祉団体ピアーズとの関係と、経緯についてここに記させていただきたいと思います。
ネイバーズグッドがやっていること
弊社、ネイバーズグッドは、「隣人を想う気持ちが世界を変える」をミッションに地域に根ざした街のデザイン制作屋さんをやっております。HP制作やデザインのほか、地域イベントの開催やフリーペーパーの発行、ローカルメディアの運営、多目的シェアスペースの運営を行い、街と人、人と人をつなげ、心地よいまちづくりを行なっております。
具体的には。
阿佐谷という地で26年間続く「阿佐谷ジャズストリート」というイベントにて、コロナ禍におけるチケット販売のオンライン化や動画配信、クラウドファンディングの実施など、高齢化する実行委員をサポートし、イベントの実施と存続に貢献させていただいたり。
多目的シェアスペースでは、餅つき大会や勉強会、食事会などを開催し、老若男女の世代も仕事も異なる人を集め、家族や職場とも違った、地域のコミュニティーづくりを行い、それぞれがそれぞれの困りごとを応え合える関係づくりを行なっています。
東京は杉並区阿佐谷にある多目的シェアスペースですが、駅から徒歩5分圏内の物件には珍しく広めの庭があり、そこを活用して畑として、発達支援団体や園庭のない近所の保育園に解放し、子どもたちが土や野菜、虫に触れられる機会をつくったりもしています。
山下洋輔さん、戸松美貴博さんとのつながり
山下洋輔さんは先述した阿佐谷のイベント「阿佐谷ジャズストリート」にて毎年、神明宮のステージにて大トリを飾られおります。また、戸松美貴博さんは阿佐谷在住のご縁から始まり、公演やイベント、アート、また福祉に対する考え方など互いに共感する点が多く意気投合し、共に地域イベントの開催も2021年の4月に行いました。
山下洋輔さん、戸松美貴博さんの即興表現の歴史と精神福祉団体ピアーズとの出会い
本クラウドファンディングの対象となっている6/15の杉田劇場の公演は、もともとは山下洋輔さんと戸松美貴博さんが過去10年以上重ねてきた即興表現シリーズの第10回目の公演に当たります。
戸松美貴博さんが、東京都主催の国際パフォーマンスコンペティション、Tokyo Experimental Festival 2010 特別賞を受賞(一柳慧氏を審査委員長として、山下洋輔氏、中川賢一氏、畠中実氏らが審査)したことを機に、山下洋輔さんとの関係が始まり、2012年に即興公演「肉態即興DUO」が始まります。
そして、2014年。文化人類学者の西江雅之さんが加わり、3者共同企画として「肉弾対戦」を開催します。しかしながら、翌年2015年に西江さんが亡くなられてしまい、リスペクトを込め、命日となる6月14日に「肉弾対戦」(のちにタイトルを変更し、現在は「肉弾対閃」)を続けます。
定期的に重ねてきた公演ですが、2021年。コロナ禍において、なかなか会場が決まらず10回目の開催が難航していました。
ありのままの自分を肯定するワークショップの開催と表現の真髄
表現家としての顔もさることながら、25年以上精神医療に関わりを持つ戸松美さん。
そんな側面から、精神福祉団体ピアーズとの出会いにつながります。精神福祉団体ピアーズは障害当事者が支援職となり、障害者を支援する特徴を持ちます。
また、就労移行支援事業の一環で磯子区民文化センター杉田劇場に当時勤めていた施設利用者が「肉弾対戦」の開催の可能性を見出しました。
彼の提案により晴れて会場が決定します。また、戸松美さんの直感により、ピアーズの面々もそのステージに上げ、表現を共にすることを決めます。
感じるがままに身体を動かし、その表現を肯定し、ありのままの自分を受け入れるワークショップを精神福祉団体ピアーズの施設で行った戸松美さん。そこで放たれる障害当事者の表現やエネルギーに感銘を受け、また、故・西江雅之さんの教えに通ずるものを感じます。
公演実現の難しさと村松氏の言葉
ワークショップを重ねるごとに、障害当事者たちの言葉にならない気持ちや表現の真髄をそこに感じるものの、「即興表現」と「福祉」という前例のない試みにおける公演は現実的な難しさを突きつけます。
内容面、収益面の懸念から実は一度、戸松美さんより白紙化の話を持ちかけています。
「即興表現」というなかなか簡単には伝わりにくい世界に加わり、このコロナ禍において公演の集客の難しさが一層しています。それは表現者の生活をも揺るがし、引退を余儀なくされてしまった方も少なくはありません。
ありのままに表現する障害当事者たちに可能性を感じつつも、その実現性と集客面の不安が拭えませんでした。
すでに出演を決めてくださっていた、山下洋輔さん。
そのマネージャーであり事務所JamRice代表の村松氏に白紙化の話を伝えます。
しかし…
「戸松美がせっかく出会って、何かの御縁が広がる可能性もある、だから金より表現者としてトライする価値や意味はあるのではないか!また色々大変だと思うが…やろう!」
と、申し訳なさと不甲斐なさを抱えた戸松美さんに返ってきたのはそんな予期もしない言葉でした。
本公演に関係するそれぞれの想いに焚き付けられ、リスクを覚悟して改めて公演することを決心し、今に至ります。
障害との関わり
山下さんと戸松美さんの話が続きましたが、ネイバーズグッド代表、柴田自身としても障害者との関わりがあり、想うことあって本公演の実現に関わらせていただいています。
運営する多目的シェアスペースにて、発達支援団体との関わりをかれこれ4年ほど持っています。その中でカリキュラムにも一緒に参加させてもらう中で障害そのもの然り、親御さんたちの気持ち、そしてどうしても受け入れられがたい社会との壁を感じてきています。
また、私の生まれて初めての友だちがたまたま自閉症の子でした。当時、私にはそれが障害という認識はまったくなく、普通に仲の良い友だちとして毎日のように接してきていましたが、彼と成長を共にする過程で障害と健常、障害と社会の間に隔たりがあることを知り、悲しい気持ちになったことを覚えています。
分断ではなく、補完し合える関係を。
本公演企画の際に、理念です。それは私が立ち上げた会社、ネイバーズグッドのミッションにも通ずるものがあります。