「平戸の大仏」特別公開で解説を行う山下裕樹
(株)文化財マネージメントの宮本です。
3回に分けて掲載している、熊谷市立江南文化財センター・学芸員の山下祐樹さんにご執筆いただいたコラム、最後の第3回です。
源宗寺本堂保存修理事業の歩みと仏像保護に向けた試み
熊谷市立江南文化財センター 山下祐樹
源宗寺本堂改修事業の要点
源宗寺本堂保存修理委員会(会長:木島一也)を改修工事の主体者として事業運営を進めている。
建造物の新築費用約4000万円(税込)+周辺整備等工事費400万円の事業計画の中で、約千人からの寄付金、熊谷市からの補助金500万円、檀家組織の負担金などを含め、費用工面の完了と以降の保存維持に向けて寄附募集を続けている。
施工業者は株式会社大島工務店(深谷市柏合)であり、令和2年8月に実施したプロポーザル(事業内容提案型)入札によって決定した。
解体前には、使用可能な部材を再利用する計画であったが、想像以上に劣化が激しいことが分かり、一部の彫刻や鬼瓦などの再利用に留めることになった。
改修内容は概ね新築となり、建築確認などの法的手続きが生じたことから、細川末廣(一級建築士)、内島章雄(一級建築施工管理技士)、山下祐樹(学芸員・埼玉建築士会歴史的建造物保全活用専門家)を中心とする建築委員会を発足し、事業の監理を担っている。
設計を細川、事業指導を内島、建築の意匠デザインを含む保存改修事業全体の監修を山下祐樹が担当している。
改修のコンセプトとしては、明治時代以降、奈良の東大寺の大仏殿に模して改修が行われてきた経緯があることから、屋根に「鴟尾(しび)」や「二の鬼」などの古代寺院建築の意匠を加えることで、新たな時代への継承という念願を込めた。
保存修理事業では、令和2年12月末に源宗寺の旧本堂を解体し、大仏坐像2体(観世音菩薩・薬師如来)の仮設小屋への人力での移動を実施した。
令和3年4月から基礎工事を始点に新調復元工事を開始。
6月以降は木工事業を開始。7月上旬には瓦の設置工事が開始。7月下旬、屋根の大棟両端に「鴟尾」が設置された。
今後は12月の本堂竣工及び以降の仏像修理の完工に向けて、適宜、地域住民や寄附者に工事現場の一般公開を行うなど、情報発信と啓発を行う予定である。
そして本尊の二体の仏像の保護に向けて新たな知見等を活用しながら次世代に継承する下地作りを進めていきたいと考えている。