2021/11/19 19:00

 皆さんこんにちは。担当の安斎です。今回は今年で28回目を迎えるオーケストラフェスタの成り立ちについてご紹介します。

 1990年代当時、高校オーケストラ活動は全国各地で行われていたものの、その実態や全体像はほとんど把握されていない状況でした。そこで日本青年館が、オーケストラに親しむ高校生の全国的な交流の場ができないか、そして指導者のネットワークが形成できないかを検討するため音楽関係者を集めて議論を重ねました。

 そして1994年に「オーケストラフェスタ実行委員会」が発足。日本全国のオーケストラを指導する音楽教師と、全国のオーケストラ部が交流するイベントとして「オーケストラフェスタの開催に向けて準備が進んでいきました。

 実行委員会のメンバーには指揮者の河地良智先生(洗足学園音楽大学名誉教授)、大川内弘先生(元日本フィルハ-モニ-交響楽団コンサートマスター )、菅原英洋先生(元武蔵野音楽大学助教授)、作曲家の花村光浩氏(国立音楽大学名誉教授)などのプロの音楽家も加わり、日本青年館、全国の音楽教師、音楽家の三者がオケフェスの基盤となりました。

 1995年1月7~8日に「第1回全国高等学校選抜オーケストラフェスタ」が開催、全国10校から約700名の生徒が日本青年館ホールに集まりお互いの演奏を鑑賞し合いました。第1回オケフェスのプログラムには、次のような趣旨が書かれています。 

-----

 現在、我が国には全国規模の高等学校オーケストラ活動の実態及びその存在を知る何ものも明らかになっていない。したがって、全国規模でオーケストラを愛する高校生の交流の機会は皆無の状態である。このような状況下で、指導者は、もっぱら、個人の人脈と努力、さらには保護者の理解と協力によってのみ、オーケストラを維持・発展させてきたと言っても過言ではない。

 わたしたちは、このような窮状と、全国規模で高校生を交流させたいと願う現場指導者の強い要望をもとに、全国の熱心なオーケストラと管弦楽及び弦楽合奏グループが一堂に会し、互いの成果を披露し合いながら、友情と連帯を深めるネットワークづくりを目指し、全国高等学校オーケストラの活動がますます発展することの一石となることを願い、広く社会の理解を促進するために、この事業を実施する。

第1回オケフェスのプログラム

-----

 第1回オケフェスの開会式には、文化庁の林田英樹次長(当時)から来賓祝辞を頂いたほか、指揮者の山本直純氏、外山雄三氏、小林研一郎氏、大友直人氏、作曲家の池辺晋一郎氏といった著名な音楽家達からも激励のメッセージが届けられ、読売新聞社や音楽之友社等の各メディアにも大きく取り上げられました。

 また、オープニングでは140名の選抜メンバーによるオーケストラが合同演奏としてラデッキー行進曲を演奏しました。全国各地の高校オーケストラ部の生徒同士が出会い、初めて同じ舞台で共演した記念すべき瞬間です。この試みは現在の選抜オーケストラへと続いていくことになります。

第1回オケフェスの合同演奏

 その後、1998年春に「全日本高等学校オーケストラ連盟」結成の準備に本格的に着手し、10月31日、オケフェスに参加した高校を中心に52の高校が参加し、全日本高等学校オーケストラ連盟が結成されました。以降、日本青年館とオーケストラ連盟との二人三脚で、オーケストラ事業がさらに発展していく契機となっていきました。

 第1回オケフェスから26年間、二代目日本青年館の建て替えに伴う文京シビックホール開催などを経て、現在の三代目日本青年館に移って2年目の2018年に行われた第25回の節目のオケフェスには全国81校より4,310名の生徒が参加し、過去最大の開催規模となりました。

 そして、「まさにこれから」という時に襲ってきたのが新型コロナウイルス感染拡大でした。様々な制約の中でリアルとオンラインを組み合わせたハイブリットな形を模索しながら現在を向かえています。

 というわけで、今回はオケフェスの成り立ちについてまとめてみましたがいかがでしたでしょうか。歴史について調べていて改めて感じたのは、普段それぞれの地域でオーケストラ活動に取り組み、地域社会と共に発展してきた高校オーケストラが一同に介し、音楽を愛する全国の若者達の交流によって生み出された「人の繋がり」や「思い出」こそがオケフェスが育んできた最大の財産だということです。

 そして高校オーケストラで音楽に楽器に夢中になってきた生徒たちは、「聴衆」「アマチュア演奏家」「音楽家」「舞台関係者」など様々な形で日本のオーケストラ界を支えてきたという側面にも改めて気付かされました。

 依然として厳しい状況は続いておりますが、オケフェスを未来につなげ全国のオーケストラを愛する子どもたちが出会い、成長できる場所をこれからも提供し続けられるよう引き続き尽力してまいります。 

 引き続き、オケフェスのクラウドファンディングの情報拡散とご支援を何卒よろしくお願いいたします。最後までお読みいただきありがとうございました!