ずっと聞けなかった。
私と彼が昔よく通った焼鳥やさんがあります。
この10年間、たまに行っていたけど
5年以上前に一度だけ、
彼が入院していることを伝えたきり
それ以降は普通に焼鳥を食べに行っていました。
今回、10年の節目を迎えるにあたり
どうしてもマスターとママには伝えたいなと思って
先日一人でお店に行きました。
美味しい焼鳥を食べて、もうすぐお会計という時、
「あの、実は彼が入院して今年で10年経つんですよ。」
一瞬、マスターの手が止まる。
「え?・・・」
マスターは、スゴく頑固おやじって感じで
(ゴメンナサイ!)取り乱すことなんて一度も見たことがないけど、しばらく下を向いて沈黙のあとに
「田島さん、あんたは本当にスゴイ人だよ。」
「スゴイよ。」
「そうか、まだ生きていたのか。」
「そうか・・・生きていたのか」
この言葉だけを聞くと、色んな解釈があるかもしれませんが、マスターのこの言葉の意味は、
まだ、生きて"くれて"いたのか
という意味が込められていました。
「ずっと聞きたかったけど、田島さんは一言もいわないから、こっちから聞いていいのかわからなかったんだよ。」
マスター、ご心配おかけしてごめんなさい。
でも、話したら自分が崩れてしまいそうだったから
言えなかったんです。
名もなき人のストーリーを記憶に
さらに、クラウドファンディングで
小さな冊子を作ることを伝えると
『その本は、うちの店の歴史として置いておきたいな。』
と、言ってくださいました。
名もなき一般人の、ちょっとしたストーリーが
与える影響は微々たるものですが、
その場所で過ごした日々は、
確実にそこにいる人たちの記憶に残っています。
クラウドファンディングは終わっても
こういう日々の伝える行動が
何か少しでも、
誰かの背中を押すきっかけになれたら。
それを忘れずにこれからも地道に行動します。
私にとっては、家族のような存在の
マスターとママ。
最後に
「話してくれてありがとう」
と深々頭を下げられ、私も恐縮しながら
また、来ますね。笑顔でお店を出ました。
素敵な思い出をありがとうございます。
また、美味しい焼鳥、食べに行きますね。