2022/03/08 22:20

2021年秋に上野の「ゴッホ展」を観に行きました。私はある絵の前に立った時、不覚にも涙が出てきました。ゴッホの哀しみ、憤り、痛み・・・、いろんな感情が絵をとおして語りかけてきたのです。


ゴッホ自身、精神疾患で苦しみながら絵を描いていました。ゴッホの絵は以前から何度か観ていましたが私自身が精神疾患になりゴッホの気持ちが少しだけ理解できた気がしました。


ゴッホに限らず古今東西、多くの芸術家が心の病から救われるために、自分の魂の叫びを表現をしています。古くはソクラテスの「ダイモンの声」は統合失調症の幻聴の可能性が高いといわれています。


明治の文豪・夏目漱石は神経衰弱による被害妄想や幻聴体験をもとにしたメモから『吾輩は猫である』を書きました。太宰治も死と生の境目が溶ける文学を書くことで救われようとして、ギリギリの精神状態で書き続けたことと思います。


海外文学でも、たとえば『ライ麦畑でつかまえて』J・D・サリンジャーは、第二次大戦従軍体験時のPTSDから救われるために小説を書かずにはいられなかった、といいます。

『スローターハウス5』の著書ヴォネガットもドレスデン空爆でのトラウマ、過去への囚われを小説を書くことで癒やされようとしたそうです。直面するには辛すぎる現実から逃げてファンタジーの世界に生きることによって、かろうじてフラッシュバックから解放されようとしたのでしょうか。


私が大病をしてから立ち上がるきっかけが、本作品(100歳現役医師のドキュメンタリー)です。今でも私はPTSDによるフラッシュバックに苦しんでいます。自分の葛藤、痛み、哀しみ、孤独・・・、私の魂が傷んでいます。


かろうじて駿河敬次郎先生のドキュメンタリーを作っている時には正気を保っている感じがあります。私にとって、自分自身が救われるためにも本作品は作らざるを得ないものなのです。


もちろん私にとって本映像作品は一作目なので「芸術」という領域に達するには技術的にもあまりに未熟な者です。今後、経験を積んでいかなくてはいけないでしょう。


新人としての私の最初の映像作品におつきあいくださる皆様には感謝しかありません。心より御礼申し上げます。


「大丈夫。治ります」と私を救った100歳現役医師のドキュメンタリーを作りたい!プロジェクトオーナー 関智征