2022/02/03 20:13

皆様はじめまして。『しーちゃんのごちそう』の掲載誌『思い出食堂』の編集をしております、少年画報社の村松と申します。活動報告の場をお借りしまして、ご挨拶申し上げます。

『しーちゃんのごちそう』が『思い出食堂』に初めて登場したのが2012年ですから、たかなし先生にはもう足掛け10年しーちゃんを描いていただいていることになります。実は、それ以前にもたかなし先生は小さい頃のご自身と家族をモデルとしたシリーズを発表されていましたが([昭和お茶の間劇場]『May』掲載・[ちこちゃん、あーそぼ]『ねこぱんち』掲載)、食べ物がテーマの『思い出食堂』に執筆をお願いするにあたり、しーちゃんと家族の食卓を中心に昭和の30年代当時の懐かしい暮らしを描いていただく事になりました。

ちょうどその時、たかなし先生は体調を崩されたあとで、体力面を踏まえ、初掲載は3ページの小編でした。お中元のそうめんをしーちゃんが元気に食べるお話です。その次はクリスマスケーキのお話で4ページの作品。短いページでのスタートでしたが、1コマ1コマ丁寧に描かれたしーちゃんの世界は、陽だまりのように誌面を照らしていたのを今でも覚えています。

1年、2年と経過し、8ページ、10ページと徐々にページ数が増えていくのと同時に、アンケートハガキでいただく読者からの反響が大きくなっていきます。当初、多くは当時の暮らしや食べ物を懐かしむ声でしたが、徐々にしーちゃんと家族への意見が多く寄せられるようになります。時に甘やかしすぎるぐらいにしーちゃんを可愛がるお父ちゃんと、同じようにしーちゃんを愛し、優しく頼もしいお母ちゃん。そんな両親のもとで明るく暮らす、素直で元気なしーちゃん。そうした家族の様子に笑ったり、涙したりしている、という読者の意見が増えていったのです。その頃から私は『しーちゃん』は特別な作品なのではないだろうか、と考えるようになりました。

一般に、日本人はストレートな愛情表現が苦手と言われますが、お父ちゃんが全身でしーちゃんを愛する姿を見て考えさせられるのは、私たちはもっと家族や大切な人に対して、率直な愛情を示してもいいのではないか、という事です。また、もっと人に対して優しくなっていいのではないか、とも思います。他にも、もっと安心して暮らしていい。もっと素朴でいい。もっと普通でいい。など、しーちゃんの世界を見ていると様々な思いが生まれてきます。『しーちゃんのごちそう』は、令和に生きる私たちにとって大切な事を、昭和の時代から優しく語りかける物語なのだと思います。

今回のプロジェクトで最初にアニメ化をするのは「お子様ランチ」というお話で、タイトルの通り、お父ちゃん、お母ちゃんの惜しみない愛情と、しーちゃんの幸せが一皿にのった素敵なエピソードです。たかなし先生が1コマ1コマ心を込めて描いた作品を、ジャストコーズプロダクションの柴田さんを始め、制作スタッフの皆さんが同じくらい丁寧に、愛情を込めてCGアニメ化した映像は、驚くべき精緻さと目を見張る臨場感と共に、原作同様、陽だまりのような明るさと温かさで私たちの心を照らしてくれると確信しています。

最後に、これまでにご支援頂いた皆様に『思い出食堂』編集部を代表しまして、心よりの御礼を申し上げます。正直に申し上げて、家族の日常の物語に、現在までにこれほど多くの方々のご支援をいただけた事に、驚きと望外の喜びを感じております。また、鴨川市役所様、館山のパンの中村屋様はじめ、地域の皆様より多くのご声援とご支援とをいただきました事、誠に感謝の念に堪えません。本当にありがとうございました。引き続き、さらに少しでも多くの方にご支援をいただけますよう、『しーちゃんのごちそう』アニメ化プロジェクトを何卒よろしくお願い申し上げます。